質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二六号

塩化ラジウム(ラジウム223)注射液(製品名ゾーフィゴ静注)に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十一月四日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   塩化ラジウム(ラジウム223)注射液(製品名ゾーフィゴ静注)に関する質問主意書

 二〇一六年三月二十八日、塩化ラジウム(ラジウム223)注射液(製品名ゾーフィゴ静注。以下「本注射液」という。)の製造販売が承認された。ラジウム223はアルファ線放出核種であり、本注射液は戦後初めて国内で使用が許可されたアルファ線放出医薬品となる。ラジウム223の親核種は吸入摂取時の危険性が核種中最も高いアクチニウム227(アルファ線放出核種)であり、アクチニウム227が本注射液に不純物として含まれることが避けられない。従って本注射液の取扱や廃棄には最大の注意を払わなければならないものと考える。以上の観点から以下質問する。

一 本注射液が医薬品として承認されるまでの経緯を示されたい。また本注射液を承認した審議会名とその議事録の所在を示されたい。

二 本注射液の製造方法について原料から製品が完成するまでを具体的に示されたい。原料となる核種と生成核種の各々について半減期と経口摂取並びに吸入摂取した場合の実効線量係数を示されたい。

三 本注射液に原料の親核種であるアクチニウム227が混入することが避けられないが、許容濃度は何%とされているのか。また、その検査方法は確立されているのか、使用先の医療機関で検査可能なのかそれぞれ示されたい。

四 ラジウム223が壊変し安定するまでに生成される娘核種の半減期と経口摂取並びに吸入摂取した場合の実効線量係数を示されたい。

五 本注射液のラジウム223の放射能濃度は幾らか。仮に体重六十キログラムの成人に上限回数まで使用した場合のラジウム223の注入量とこれによる内部被ばく量(ミリシーベルト)を示されたい。この場合において、親核種のアクチニウム227やトリウム227が本注射液に上限許容濃度まで含まれていた場合、内部被ばく量(ミリシーベルト)は幾らか示されたい。これらの内部被ばく量(ミリシーベルト)の合計は公衆被ばくの線量限度(年一ミリシーベルト)の何年分になるのか示されたい。

六 二〇〇五年六月一日に改正される前の放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令及び同法施行規則による「放射線を放出する同位元素の数量を定める件」によるとアルファ線放出核種は最も危険度が高い第一群に指定され、規制の基準となる数量は三・七キロベクレルとされていた。この時の規定によると本注射液を一回でも投与された人はこの基準を超えてしまうため、本注射液及びその汚染物は放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の対象物であったと思われるが、患者の排泄物の処理、患者の隔離や入院部屋の表示、患者家族などへの対応は、現在ではどの法律に基づきどのように行われているのか示されたい。

七 医療現場で本注射液の保管、使用、使用済み容器や注射針などの廃棄物の保管等による汚染が憂慮される。本注射液一滴(〇・〇五ミリリットル)に含まれるラジウム223の放射能量は幾らか示されたい。一滴でも漏らすと汚染が広がるのではないかと思われるが、医師・看護師などによる汚染時の管理や取扱対応はどのようになっているのか示されたい。

八 本注射液に関わる使用済み容器や注射針などの廃棄物はどこで、どのように処理、処分されるのか事業者名などを挙げ具体的に示されたい。

九 仮に本注射液を投与した患者の遺体や使用済み容器や注射針などの廃棄物が焼却されるようなことになれば、ラジウム223やその娘核種、不純物として含まれるアクチニウム227やトリウム227が環境に放出される。特にアクチニウム227は一ベクレルを吸入すると最大で〇・六三ミリシーベルトもの被ばくをするとされており(核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示)、二ベクレル吸入しただけで公衆被ばくの線量限度を超えてしまう。そのようなものを含む遺体や廃棄物を焼却することは危険であり、取扱には最大の注意を払わなければいけないと考えるが、政府の見解を示されたい。

十 このような危険なアルファ線放出医薬品の販売を国内で承認することは、医療現場を混乱させ、不用意な取扱や焼却処理、埋設処分により放射能汚染を広げることになると思われる。販売承認を見直す必要があるのではないか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。