質問主意書

第191回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一三号

IoTやビッグデータ解析、人工知能等のイノベーション利活用による「日本版・第四次産業革命」を見据えた我が国電機産業の発展に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年八月三日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   IoTやビッグデータ解析、人工知能等のイノベーション利活用による「日本版・第四次産業革命」を見据えた我が国電機産業の発展に関する質問主意書

 欧米先進国の企業家や政策立案者の間でここ数年、「第四次産業革命」と呼ばれるテクノロジーの一大潮流が大きな注目を集めている。IoTやビッグデータ解析、人工知能等、未曾有の技術革新が、様々な製造現場や生活場面において革命的な生産性向上やスマート化をもたらすと期待されているのである。この新しく巨大な潮流は、十八世紀後半にイギリスで起きた水力や蒸気機関を利用した機械化の「産業革命」を起点とすると、四番目のパラダイムシフトに当たるとの認識から(「第二次」は十九世紀後半の電力活用による大量生産、「第三次」は二十世紀後半のコンピューターや電子化技術が可能にした部分的な生産自動化。)、「第四次産業革命」と呼ばれている。
 各国政府・各企業では、この流れを上手く取り込んで、自らの競争優位を確固たるものにするべく戦略的ポジショニングの再構築に死力を尽くしている。これまで技術立国・ものづくり大国を標榜してきた我が国も後塵を拝するわけにはいかない。特に、我が国電機産業はかつて自動車産業との二本柱で外貨の稼ぎ頭であったが、昨今、アジア諸国のキャッチアップ戦略や欧米企業主導の水平分業戦略を前に、業績後退、時に事業撤退を余儀なくされてきた。しかし、この来たる「第四次産業革命」においては、各国動向を冷徹に見極め、自らの強みを活かした政策横断的な戦略のもと、改革断行により、電機産業の再生、ひいては雇用の創出を実現することで、長期にわたり低迷している我が国経済の再興にダイレクトに結びつけられるのではないかと考える。そこで以下、質問する。

一 研究開発体制の充実について

 IoTやビッグデータ解析、人工知能等のイノベーション利活用により、かつてないスピード、規模で事業環境が変化しており、個々の企業単独の取組みだけでは、熾烈なグローバル競争の中で限界がある。各企業は、いわゆるオープン・イノベーションの手法を活用して、よりすばやく、効果的に研究開発を進めているが、国として、産(労使)・官・学連携の枠組みもより一層促進し、また、その取組み内容自体を全国展開することで、我が国の国際競争力を強化するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 ビッグデータ利活用ルールの整備について

1 ビッグデータが大きな経済価値を生み出すとの期待が世界中で高まる中、我が国では昨今、利活用の壁となっている、保護すべき個人情報の線引きの曖昧さ(いわゆるグレーゾーン)の解消や、本人の同意なしに外部へ提供できる匿名加工情報の導入を定める個人情報保護法制の改正が行われ、ビッグデータ利活用ルールの整備が大きく前進した。しかし携帯電話やクレジットカードの番号、スマートフォンの位置情報の取扱い等、具体的な細部のルールが未確定のまま残されている。さらに、どこまで匿名加工すれば十分かについての社会認識や、匿名加工情報から個人を再照合する技術も時代とともに進化することを考えると、個人の権利侵害が起こらないように、また、新しい社会的価値を生み出すビッグデータ解析に様々なプレーヤーが積極的に取り組めるように、国として、法制度の不断の見直しと同時に、その内容の適時適正な周知徹底が重要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 個人情報保護については、EU及びアメリカの政策との整合性を確保し、国際間のデータ移動がスムーズに行われるようにするべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

三 中堅・中小企業の生産性向上支援について

 中堅・中小企業の多くでは、ICT導入による生産性向上効果の判断の困難さや、費用負担の大きさ、利活用できる人材不足等により、ICTの導入・利活用が進んでいない実情がある。この現状を改善するために、ICT導入による生産性向上の事例紹介や指導・相談サービスを提供してくれる専門家の紹介といった支援を、国として積極的に促進するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

四 医療・介護等他産業の効率化促進について

1 製品開発に際し、各企業が顧客ニーズとより一層連携できる出会いの場づくりを促進するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 パワーアシストや動作ガイドをする、人の動きに係るマシン開発に関しては、安全基準やガイドラインの整備が逐次進められているが、先例が必ずしも十分ではない分野でもあり、開発実態を国としてフォローし、安全基準やガイドラインが適宜更新されるよう支援することが必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

五 自動運転システムの推進について

1 自動車メーカー、電機メーカー、大学・研究機関の連携を促進し、オールジャパンで自動運転に係るオペレーションシステム・制御ソフトウェア等の戦略的な開発を進めるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 自動運転システムが社会で実際に展開されるためには、現在、各国企業がしのぎを削る自動運転技術の完成だけでなく、その技術を利用する際の法制度の整備も必須と考える。例えば、運転手の存在を前提とする道路交通法の改正はそもそも必要であろうし、また、自動運転車が交通事故を起こした場合、誰の責任になるのか等も新たに法律で定める必要があると考える。また、自動運転車が各国間で輸出入されることを考慮すると、各国の法規制もできる限り共通化されていることが理想と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

六 就業構造の変化への対応について

1 IoTやビッグデータ解析、人工知能等の急速な発展が、産業構造や働き方にもたらす影響や課題について、産(労使)・官・学で検討する場を設置するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 新産業・新事業展開への対応を可能とする労働者のスキルチェンジやキャリア開発の支援のあり方等についても、産(労使)・官・学で検討する場を設置するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。