質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第一〇八号

内閣参質一九〇第一〇八号
  平成二十八年五月十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員川田龍平君提出動物実験基本指針の策定及び運用状況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出動物実験基本指針の策定及び運用状況に関する質問に対する答弁書

一について

 研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成十八年文部科学省告示第七十一号。以下「文部科学省基本指針」という。)については、その策定時に、文部科学省において、大学、大学共同利用機関法人、高等専門学校、文部科学省の施設等機関、文部科学省が所管する独立行政法人(独立行政法人国立高等専門学校機構を除く。)及び文部科学省が所管していた公益法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十八年法律第五十号)第三十八条による改正前の民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定に基づき設立された法人をいう。以下同じ。)であって、科学技術に関する試験、研究若しくは開発又は学術研究を実施するものに対して周知しているところである。
 また、厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針(平成十八年六月一日付け厚生労働省大臣官房厚生科学課長通知。以下「厚生労働省基本指針」という。)については、その策定時に、厚生労働省において、厚生労働省の施設等機関、厚生労働省が所管する独立行政法人、厚生労働省が所管していた公益法人及び厚生労働省が所管する事業を行う法人であって、動物実験等を実施するもの並びに都道府県、保健所設置市及び特別区に対して周知しているところである。
 さらに、農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成十八年六月一日付け農林水産省農林水産技術会議事務局長通知。以下「農林水産省基本指針」という。)については、その策定時に、農林水産省において、農林水産省の施設等機関、農林水産省が所管する独立行政法人及び農林水産省が所管していた公益法人であって、動物実験等を実施するもの並びに都道府県に対して周知しているところである。

二のアについて

 お尋ねの「実施機関」のうち、現在、「厚生労働省の施設等機関」に該当するものは、検疫所、国立医薬品食品衛生研究所、国立保健医療科学院、国立感染症研究所及び国立障害者リハビリテーションセンターであり、「独立行政法人(厚生労働省が所管するものに限る。)」に該当するものは、独立行政法人労働者健康安全機構、独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人国立循環器病研究センター、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国立研究開発法人国立成育医療研究センター及び国立研究開発法人国立長寿医療研究センターである。

二のイについて

 お尋ねの法律は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)である。

二のウについて

 厚生労働省基本指針は、厚生労働省が所管する事業を行う民間事業者も対象としている。

二のエについて

 「厚生労働省の施設等機関」及び「独立行政法人(厚生労働省が所管するものに限る。)」については、対象となるものを二のアについてで列記したとおり全て把握しており、これらに対して、厚生労働省基本指針の遵守状況について調査を実施しているところである。また、「その他の厚生労働省が所管する事業を行う法人」については、対象となる法人の全てを把握しておらず、厚生労働省基本指針の遵守状況についての調査は実施していない。

三のアについて

 特定保健用食品及び機能性表示食品に関して行われる動物実験については、お尋ねの「動物実験を行う民間企業が遵守すべき国の指針」は定められていないが、厚生労働省基本指針に定める内容を踏まえることが望ましいと考えている。

三のイについて

 特定保健用食品及び機能性表示食品に関して行われる動物実験については、消費者庁が調査を行うことが適当と考えている。

四について

 お尋ねの「実施機関」のうち、現在、「農林水産省の機関」に該当するものは動物医薬品検査所であり、「独立行政法人(農林水産省が所管するものに限る。)」に該当するものは、独立行政法人家畜改良センター、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、国立研究開発法人国際農林水産業研究センター、国立研究開発法人森林総合研究所及び国立研究開発法人水産研究・教育機構であるが、「民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人(農林水産省が所管するものに限る。)」に該当する法人は存在せず、民間企業は含まれていない。

五について

 お尋ねの「このような事業者が遵守すべき国の動物実験基本指針」は、定められていない。

六について

 お尋ねの「動物性医薬品の開発・承認申請等や農薬の開発・登録申請等に関連して動物実験を行う事業者が遵守すべき国の動物実験基本指針」は、定められていない。

七について

 独立行政法人国民生活センターは、自ら動物実験を行っておらず、消費者庁が所管する事業について、お尋ねの「動物実験を行う事業者が遵守すべき国の動物実験基本指針」は、定められていない。

八について

 経済産業省が所管する事業について、お尋ねの「動物実験を行う事業者や研究機関が遵守すべき国の動物実験基本指針」は、定められていない。

九について

 環境省が所管する事業について、お尋ねの「動物実験を実施する事業者が遵守すべき国の動物実験基本指針」は、定められていない。

十について

 お尋ねの「前記九までに挙げられていない省庁のうち、所管する事業において動物実験が行われていることを把握している省庁」について、①府省庁、②当該府省庁が所管する動物実験が行われる事業、③当該事業の実施に当たっての動物実験基本指針の有無をお示しすると、次のとおりである。
①内閣府 ②食品健康影響評価技術研究等 ③有
①警察庁 ②科学警察研究所が実施する科学捜査についての研究及び実験 ③有
①総務省 ②生体電磁環境研究 ③有
①財務省 ②独立行政法人酒類総合研究所及び日本たばこ産業株式会社が実施する研究及び実験 ③有
①国土交通省 ②建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)に基づく指定性能評価機関における不燃材料、準不燃材料及び難燃材料に係る性能評価 ③無
①防衛省 ②防衛医科大学校及び陸上自衛隊が実施する教育、試験研究又は生物学的製剤の製造その他科学上必要な動物実験 ③有

十一について

 お尋ねの「動物実験を行う民間法人全てが対象となる国の動物実験基本指針」は、定められていない。

十二及び十三について

 文部科学省基本指針、厚生労働省基本指針及び農林水産省基本指針においては、お尋ねの「ペナルティとして明文化されたもの」は存在しない。

十四について

 お尋ねの「動物を用いる試験・研究に研究費が支払われているもの」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、平成二十七年度競争的資金制度のうち、公募要領等において、動物を用いる試験及び研究に関する記載があるもの(平成二十七年度予算において、動物を用いる試験及び研究に研究費が支払われていないことが確認できた制度を除く。)は、食品健康影響評価技術研究、国家課題対応型研究開発推進事業、科学研究費助成事業、戦略的創造研究推進事業、研究成果展開事業、国際科学技術共同研究推進事業、厚生労働科学研究費補助金、医療研究開発推進事業費補助金及び農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業である。このうち、遵守すべき国の動物実験基本指針及び当該指針に違反した場合に応募資格停止等となることが明文化されているものは、国家課題対応型研究開発推進事業、科学研究費助成事業、戦略的創造研究推進事業、研究成果展開事業、国際科学技術共同研究推進事業、厚生労働科学研究費補助金及び医療研究開発推進事業費補助金である。

十五について

 国内で動物実験を実施している機関の総数の調査に膨大な時間を要することから、お尋ねについてお答えすることは困難である。

十六について

 御指摘の「国際獣疫事務局の「陸生動物衛生規約」」は、加盟国に対し義務を課すものではないが、環境省においては、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成十八年環境省告示第八十八号)により、実験動物及び施設を管理する者について、当該基準及び当該基準に即して当該者が策定した指針の遵守状況について定期的に点検を行い、その結果について適切な方法により外部に公表することを定めているほか、文部科学省、厚生労働省及び農林水産省においては、文部科学省基本指針、厚生労働省基本指針及び農林水産省基本指針により、それぞれの所管する研究機関等に対し、実験動物を用いた動物実験等が適正に行われているか否かについて、定期的に自ら点検及び評価を行うよう要請しているところである。

十七について

 動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号。以下「法」という。)第四十一条第二項においては、動物を科学上の利用に供する場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならないと規定されており、同項の方法については、同条第四項において、環境大臣は当該方法に関しよるべき基準を定めることができることとされている。これに対して、同条第一項においては、動物を科学上の利用に供する場合には、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用することに配慮するものと規定されているにとどまり、これらについては、当該基準と同様な基準を定めることとはされていない。
 このことを踏まえ、動物実験が行われる事業を所管する各府省庁をはじめ動物実験を行う者において、必要に応じて御指摘の「動物実験基本指針」を策定するなど、同条第一項に定める配慮を適切に行い、動物実験の適正化を図ってきているところであると認識しており、法の下に、一本化した基準を策定することとはしていないものである。