質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第五四号

内閣参質一九〇第五四号
  平成二十八年二月二十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員吉川沙織君提出軽減税率制度に関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉川沙織君提出軽減税率制度に関する第三回質問に対する答弁書

一について

 御指摘の政府が提出する「消費税率十%への引上げ時の増収見込額を十四兆円と示す資料」が何を指すかが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号。以下「税制抜本改革法」という。)等に基づき、消費税率を五パーセントから十パーセントへ引き上げた場合の増収見込額については、消費税率一パーセント当たりの税収を二・八兆円程度と仮定し、機械的に試算すれば、十四兆円程度となる。また、今国会に提出した所得税法等の一部を改正する法律案(以下「税制改正法案」という。)に基づき、消費税の軽減税率制度を導入した場合の減収見込額が、一兆四百億円程度となることは、これまでもお示ししてきたとおりである。

二について

 税制改正法案に基づく消費税の軽減税率制度の導入による消費税負担の収入に対する割合の軽減度合いについては、総務省統計局の家計調査において公表されている平成二十五年の二人以上世帯の消費支出金額等を用いて、一定の前提の下、機械的に試算すれば、例えば、年間収入千五百万円以上の世帯では〇・一パーセントポイント程度となる一方、年間収入二百万円未満の世帯では〇・五パーセントポイント程度となり、低所得世帯の方が大きくなることから、当該軽減税率制度の導入は、いわゆる消費税の逆進性の緩和につながるものである。
 また、簡素な給付措置については、市町村民税の均等割が非課税となる収入額は個人により異なるため、市町村民税の均等割が課税されていない個人(課税されている者の扶養親族等を除く。)を対象としている簡素な給付措置の給付対象者の収入額も個人により異なること等から、収入階級別にデータをお示しすることは困難である。

三について

 先の答弁書(平成二十八年二月十六日内閣参質一九〇第三八号)三及び四について及び五についてでお答えしたとおり、税制抜本改革法第七条第一号イ及びロにおいては、消費税率引上げを踏まえて、低所得者に配慮する観点から、総合合算制度、給付付き税額控除及び複数税率(消費税の軽減税率制度をいう。)の導入について検討することとされている。
 こうした中、消費税の軽減税率制度については、総合合算制度及び給付付き税額控除とは異なり、日々の生活において幅広い消費者が消費・利活用している商品の消費税負担を直接軽減することにより、消費者にとって、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるとともに、いわゆる消費税の逆進性を緩和できるといった点を特に重要と判断し、これを導入することとしたところである。
 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成二十九年四月一日とすることとしたのは、税制抜本改革法第七条第一号ロに基づく消費税率の引上げに伴う低所得者への配慮であることに鑑み、消費税率が十パーセントに引き上げられる平成二十九年四月一日と同じ時期としたものである。
 なお、消費税の軽減税率制度については、その適用対象も含め、税制改正法案において、明確な定義等を行っており、また、税制改正法案附則第百七十条において、消費税の軽減税率制度の導入に当たり、財政健全化目標を堅持するとともに、社会保障の安定財源の確保の在り方に係る基本的な考え方にのっとり、安定的な恒久財源を確保するために、平成二十八年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずることにより、安定的な恒久財源を確保すること等としているところである。