質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九一号

内閣参質一八九第二九一号
  平成二十七年九月二十九日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員藤末健三君提出徴兵制度の採用が完全には否定できないことに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出徴兵制度の採用が完全には否定できないことに関する質問に対する答弁書

一及び四について

 御指摘の「徴兵制度」については、衆議院議員稲葉誠一君提出徴兵制問題に関する質問に対する答弁書(昭和五十五年八月十五日内閣衆質九二第四号)一及び二についてで、「一般に、徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいうと理解している。このような徴兵制度は、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、兵役といわれる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があり、平時であると有事であるとを問わず、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考える」とお答えしたとおりである。
 このような政府の考え方は、社会情勢等の変化によって変わるものではなく、御指摘のような「将来的には他国の憲法解釈に合わせる形で、政府が憲法解釈を変える可能性」はない。
 また、我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増す中でも、多くの優秀な若者に自衛隊員を志していただいており、今後とも優秀な人材を十分確保できるものと考えている。

二について

 お尋ねは、外国の憲法解釈に関するものであると考えられるところ、政府として、外国の憲法における「その意に反する苦役」に係る規定の有無及びその解釈を網羅的に把握しておらず、また有権的に解釈し得る立場にはないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

三について

 お尋ねについては、現在、ロシア連邦、中華人民共和国、大韓民国、北朝鮮及び台湾において、徴兵制度の採用又は徴兵制度と志願制度の併用が行われていると承知している。

五について

 平成二十七年九月十九日に成立した我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(以下「一部改正法」という。)による改正後の自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)等及び同日に成立した国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(以下「国際平和協力支援活動法」という。)の規定に基づいて様々な活動に従事する自衛隊員には、一部改正法による改正前の自衛隊法等に基づいて活動に従事する場合と同様、その活動に伴うリスクが存在するものと考えるが、これらの活動は、一部改正法による改正後の自衛隊法等及び国際平和協力支援活動法の規定に基づいて行うことは当然であり、加えて、活動地域について十分な情報収集を行い、十分な自己防護用の装備を整え、これらの活動に従事する自衛隊員を対象として現地の状況や活動の内容を想定した実践的な教育訓練等を行った上で、現地の社会的・文化的慣習を尊重し、地域住民との良好な関係の構築及び維持に努めるなど、自衛隊員が安全に活動できる環境を確保しつつ行っていくこととなるものであり、「明確に自衛隊の危険は増すことになる」及び「これにより、自衛隊員が大量に職を辞すること」となるとの御指摘は当たらないと考えている。
 また、一部改正法による改正後の自衛隊法等及び国際平和協力支援活動法の内容については、自衛隊員に適切に周知しているところである。