質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二七六号

存立危機事態と集団安全保障との関係に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月七日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   存立危機事態と集団安全保障との関係に関する質問主意書

 平成二十七年六月一日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会(以下「平和安全法制特別委員会」という。)において、安倍内閣総理大臣は、「集団的自衛権の行使から(中略)集団安全保障措置に変わったとしても、それが三要件であり続ければ、当然、機雷掃海は行い続き得るということであります。これは、例えば、個別的自衛権を発動している中において、安保理の決議があって、それが集団安全保障措置に変わったとしても、個別的自衛権の行使をやめるわけではないのとこれは同じ理屈というふうに御理解をいただければと思います。」と答弁している。また、同年八月二十七日の参議院外交防衛委員会において、中谷防衛大臣は「我が国が武力の行使を行い得るのはあくまでも憲法上は新三要件を満たす場合に限られますが、存立危機事態において我が国が武力の行使を行うこととなった場合に、その国際法上の根拠が集団的自衛権の行使となるのか、あるいは武力の行使を容認をする国連安保理決議になるのかにつきましては、個別具体的な状況に即して判断される」と答弁している。
 これらの点に関連して、以下質問する。

一 前述の安倍内閣総理大臣の答弁のように、我が国が個別的自衛権又は集団的自衛権を行使している段階で、国連安保理決議に基づき集団安全保障措置が発動された場合、その後の我が国の武力行使は、国際法上はどのように評価されるのか。仮に個別的自衛権又は集団的自衛権と集団安全保障措置が併存し得る場合、どのような基準で、どちらの法的根拠が適用されることとなるのか。国連憲章第五十一条が「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」と規定していることとの関係も含めて示されたい。

二 武力行使の新三要件を満たす場合、前述の安倍内閣総理大臣の答弁のように集団的自衛権から集団安全保障措置に切り替わる場合のみならず、国際法上の根拠が当初から集団安全保障措置の場合であっても、我が国が武力行使を行うことは可能か。また、その際、攻撃を受けた国からの要請又は同意は必要としないのか。

三 平成二十六年七月一日の閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」においては、「憲法上許容される上記の「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。」と記述されており、集団安全保障措置についての言及はない。それにもかかわらず、前述の中谷防衛大臣の答弁のように、「その国際法上の根拠が集団的自衛権の行使となるのか、あるいは武力の行使を容認をする国連安保理決議になるのかにつきましては、個別具体的な状況に即して判断される」となぜ言えるのか。

四 平成二十七年七月十日の衆議院平和安全法制特別委員会において、岸田外務大臣は、「湾岸戦争のときの実態を振り返りましても、実質的な停戦が行われてから正式な停戦が行われるまで、この間に、フランス、ドイツ、イタリア、こういった国々が機雷の掃海を行っておりますが、これらの国は全て、安保理決議六七八を援用して、武力行使を含めて全ての行為が許される、こうした安保理決議を援用することによって武力の行使と認定された場合にも備えて機雷を掃海したというのが実態であります。」と答弁している。すなわち、これらの国は集団安全保障措置として機雷の掃海を行っている。政府が集団的自衛権行使の事例として挙げているホルムズ海峡の機雷掃海について、実際に活動しようとする場合、過去の例を踏まえれば、国際法上の根拠は集団安全保障措置となる可能性の方が高いのではないか。集団的自衛権の行使の事例として説明を続けているのは、国民に誤解を与えるものではないのか。

  右質問する。