質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一七二号

特別養子縁組など家庭養護に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月十八日

林 久美子   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   特別養子縁組など家庭養護に関する質問主意書

 子ども・子育てをめぐる社会環境が大きく変化する中で、全ての子どもに良質な成育環境を保障し、子どもを大切にする社会の実現が求められている。一方、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童については、公的責任で社会的に養育・保護する社会的養護の充実を図ることが重要と考える。また、子どもの養育を考えれば、社会的養護においては、できる限り家庭的な養育環境で行うことが必要であり、政府においても里親などの家庭養護を優先することを原則として取り組んでいるものと承知している。
 しかし、家庭養護の進捗状況の目安となる里親等委託率は微増に留まっており、社会的養護はいまだ施設養護が中心となっている状況にある。また、特別養子縁組についても、諸外国と比べれば成立した件数が低いことが指摘されている。こうした状況を踏まえ、以下のとおり、質問する。

一 里親制度全体、養子縁組希望里親及び養育里親それぞれについて、登録里親数、委託里親数及び委託児童数の直近の数値を示されたい。また、里親等委託率についても直近の数値を示されたい。

二 普通養子縁組及び特別養子縁組について、児童相談所があっせんした件数及び民間養子縁組あっせん事業者があっせんした件数のそれぞれ過去五年間の数値を示されたい。

三 養子縁組成立前の里親委託解除、民間養子縁組あっせん事業者を通じたあっせん後の養子縁組成立前の児童の返還並びに児童相談所又は民間養子縁組あっせん事業者を通じた養子縁組の無効、取消し及び離縁に関し、その件数と割合について直近の数値を示されたい。

四 日本人児童が国外で外国人の養子となる国際養子縁組の件数について、過去五年間の数値を示されたい。

五 里親、児童の普通養子縁組及び特別養子縁組について、諸外国と比較した場合、我が国の取組状況を政府はどのように評価しているのか明らかにされたい。

六 児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会・社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会が平成二十三年七月に取りまとめた「社会的養護の課題と将来像」(以下「本件とりまとめ」という。)においては、欧米主要国の状況を踏まえ、今後十数年間で里親等委託率を三割以上へ引き上げる目標が掲げられている。一方、児童相談所では近年急増している児童虐待の問題に業務量の多くを割かれるため、家庭養護の取組が十分に行えないとの指摘もある。里親等委託率を大幅に増加させた自治体の取組状況を見ると、専任の担当職員の設置や支援機関の充実などが行われている。里親等委託率の目標を達成するためには、こうした取組を自治体任せとせず、国として支援していく必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

七 児童相談所が家庭養護について十分機能を発揮できない状況の下では、特別養子縁組については民間養子縁組あっせん業の役割が大きくなる。一方、児童福祉法により、営利を目的とした養子縁組のあっせん行為は禁止されている。このため、あっせん事業者は養親希望者に対し、実費又はそれ以下の額の徴収が認められている。あっせん事業者が養親希望者から受領した金品を見ると、その金額は事業者によって大きな格差がある。諸外国ではあっせん事業者への国の補助がある国もあり、また、養親希望者が負担する費用は無料であったり、養親希望者に対して金銭的な支援が行われている国もあると聞く。養子縁組も家庭養護と位置付ければ、養親希望者や民間養子縁組あっせん事業者への国庫補助も必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

八 全ての子どもたちの家族を持つ権利をできるだけ新生児の段階から保障するためにも、乳児院を経ない新生児段階からの特別養子縁組を促進していくべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

九 実子を希望し、高額な不妊治療を受けたものの望みを叶えられない例も多い。子ども養子大国と称される米国では、不妊治療を受けながら養子縁組を希望する例も少なくないと聞く。厚生労働省の里親委託ガイドラインでは、養子縁組を希望する里親の年齢について、子どもが二十歳に達した時、里親の年齢が概ね六十五歳以下であることが望ましいとしている。また、本件取りまとめにおいては、望まない妊娠による出産で養育できないなど保護者の意向が明確な場合には、特別養子縁組を前提とした新生児里親を活用すべきとしている。今後、我が国においても、不妊治療を受けてまでも実子を望む家庭に対して養子を選択する方法を提示していくことも、家庭養護を促進するために取り組むべき重要な課題と考えるが、政府の見解を示されたい。

十 病院や障害児入所施設など社会的養護施設以外の施設において、本来の目的とは異なり、保護者がいない又は保護者に監護させることが適当でないことを理由として、入院等をしている児童の数を示されたい。

十一 社会的養護に係る措置が採られている児童について、家族再統合に向けた支援が行われたものの、相当期間を経過しても家族再統合が困難な場合、児童相談所長が児童福祉法第三十三条の七の規定に基づき家庭裁判所に対して民法第八百三十四条に規定する親権喪失の審判請求をし、これが認められた場合、児童相談所長は、当該児童の父母の同意がなくとも養子縁組を成立させることができると考えるが、政府の見解を示されたい。また、パーマネンシー・ケアなどの観点から、養子縁組が当該児童の最善の利益となると考えられる場合には、児童相談所長は、こうした手続を行うことが望ましいと考えるが、政府の見解を示されたい。

十二 児童福祉法第二十八条第一項の規定に基づく都道府県の措置について、保護者が施設の入所措置には同意するものの里親委託などの家庭養護に係る措置には同意しないケースにおいても、都道府県は、家庭裁判所の承認を得て、里親委託などの措置を採ることができると考えるが、政府の見解を示されたい。また、こうした事例が過去五年間に何件あったのか示されたい。

  右質問する。