質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一一九号

違憲無効の解釈改憲に基づく安倍総理の訪米外交を中止すべきことに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年四月二十七日

小西 洋之   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   違憲無効の解釈改憲に基づく安倍総理の訪米外交を中止すべきことに関する質問主意書

一 政府においては、本年四月における安倍総理の訪米中に予定されているオバマ大統領との首脳会談及び上下両院合同会議での議会演説について、「強固な日米同盟を世界に示す上で大変有意義なもの」として国会答弁等をしているところである。
 しかし、政府の企図している今後の日米同盟の在り方の基礎となっている昨年七月一日の閣議決定における憲法第九条の解釈変更については、いわゆる昭和四十七年政府見解の便宜的かつ意図的な読み直しによる法令解釈の考えを逸脱した違憲無効なものである旨が、私の参議院外交防衛委員会での質疑(三月二十四日、四月二日、四月七日、四月二十三日)及び参議院決算委員会での質疑(四月二十日)において、明らかとなっている。
 特に、四月二十日及び四月二十三日の質疑においては、岸田外務大臣に対し、このような違憲無効かつ将来の最高裁判決で違憲判決を受ける解釈変更に基づく安倍総理の訪米外交は相手国の信頼を裏切るものとして我が国の国益に反するものであり、外相として総理に対し訪米中止の意見を行うべきである旨、岸田外務大臣に見解を質し、また、その実施の要請を行ったところである。
 ここで、岸田外務大臣及び外務省にあっては、前述の私の質疑及びその趣旨等を安倍総理に説明し、訪米を中止するべき等の進言を行った事実及び前記の首脳会談及び議会演説の以前に進言する意思はあるか。もし、そうした事実がない場合及びそのような意思がない場合は、将来において、当該憲法解釈の変更が、国会あるいは内閣において違憲無効とされ、または、最高裁判決において違憲無効とされた場合に、この度の安倍総理の訪米外交に係る外務大臣及び外務省の責任は断じて許されないものとなると考えるがそれぞれの見解如何。

二 安倍総理及び政府にあっては、安倍総理が前記一にいう首脳会談及び議会演説を行う以前に、本年三月二十日の参議院予算委員会において、私より、憲法第九条の解釈変更が、憲法前文の平和主義の規律を切り捨てた法令解釈の名に値しない違憲無効のものであり、また、解釈変更の事前に解釈の変更の案そのものに係る「憲法解釈の原則の考え」との適合性についての十分な国会審議を踏まえることを定めた参議院憲法審査会附帯決議に違反している我が国の議院内閣制を否定する暴挙であることを追及された事実、並びに、安倍総理がこれらの追及に対し、何一つ論理的な答弁を行うことができなかった事実について、事前に米国側に説明を行った事実及び事前に米国側に説明を行う意思はあるか。
 もし、そうした事実がない場合及びそうした意思を有しない場合については、憲法第九条解釈が違憲無効なものであり、かつ、それが議院内閣制を蹂躙する暴挙であることについて友好国であり日米安全保障条約の締結国である米国を欺くものであり、故に、我が国の国益に反する行為ではないか。

三 安倍総理及び政府にあっては、安倍総理が前記一にいう首脳会談及び議会演説を行う以前に、米国において国際条約の締結及び承認について責任を有するオバマ大統領及び米国上院に対して、沿革的に米国上院で一九四八年に決議されたヴァンデンバーク決議を背景とする日米安全保障条約第三条が、当該決議に基づくNATO(北大西洋条約機構)その他の防衛条約における類似規定と全く異なり、我が国が集団的自衛権行使を行うことが憲法上禁止され、故に、米国に対して我が国が集団的自衛権行使を行うことがないことを明確にするために、前記の類似規定において「単独に及び共同して」とされているのを「個別的に及び相互に協力して」とし、同様に「個別的の及び集団的の能力を」とされているのを「それぞれの能力を」とするとともに、さらに、「憲法上の規定に従うことを条件」という文言が加えられているものであることについて、事前に米国側に説明を行った事実及び事前に米国側に説明を行う意思はあるか。
 もし、こうした事実及び意思すらないのであれば、我が国は、安倍内閣の度重なる暴挙により、政府がこの度の安倍総理の訪米目的にいうところの「民主主義及び法の支配といった共通の価値観を共有」できていない状態であるにも関わらず、それを米国に示さず、結果として米国を欺き、日米両国関係を損ね、また、我が国の国益を損なうことになるのではないか。

  右質問する。