質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第八五号

防衛装備移転三原則に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年四月二十五日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   防衛装備移転三原則に関する質問主意書

 平成二十六年四月一日、政府は、従来の「武器輸出三原則等」に代わるものとして、「防衛装備移転三原則」(以下「新原則」という。)を閣議決定した。武器輸出三原則は、昭和四十二年に佐藤内閣が輸出貿易管理令等の運用指針として表明したものであり、①共産圏諸国、②国連決議により武器等の輸出が禁止されている国、③国際紛争の当事国又はそのおそれのある国、に対して武器輸出を認めないこととした。昭和五十一年には、三木内閣が「武器輸出に関する政府統一見解」を示して、三原則対象地域以外の地域についても武器輸出は慎むことを表明し、事実上の武器及び武器技術等の全面禁輸政策を打ち出した。その後、例外的に武器輸出等を認める場合は、その都度、内閣官房長官談話等を発出し、その理由等の説明も行われていた。今回の新原則は、こうした今までの我が国の武器輸出の基本方針を大きく変えるものだと考える。
 そこで、以下質問する。

一 新原則により、武器等の防衛装備の移転は、「原則禁止で個別に例外措置を認める」ものから、「原則自由で例外として移転を禁止する場合を明示する」ものに変わったと理解してよいのか。

二 新原則一の「移転を禁止する場合の明確化」として、①我が国の締結した条約その他の国際約束に基づく義務に違反する場合、②国際連合安全保障理事会の決議に基づく義務に違反する場合、③紛争当事国(武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国際連合安全保障理事会がとっている措置の対象国をいう。)への移転となる場合については防衛装備の移転を禁ずるとしている。従来の武器輸出三原則では、「国際紛争の当事国又はそのおそれのある国」への武器等の輸出を禁じていたが、「そのおそれのある国」が削除された理由を明らかにされたい。また、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮や内戦が続くシリアへの防衛装備の移転は、これらの基準に該当することとなるのか、明らかにされたい。

三 新原則二の「移転を認め得る場合の限定並びに厳格審査及び情報公開」において、「特に慎重な検討を要する重要な案件については、国家安全保障会議において審議するものとする」とあるが、「特に慎重な検討を要する重要な案件」について、具体的な判断基準はあるのか。また、情報公開について、武器輸出三原則等では、「例外」を認めるたびに内閣官房長官談話が発出され、その都度内容が公表されていた。新原則では、国家安全保障会議で審議された案件については情報公開法を踏まえ情報公開が図られるとともに、経済産業省において移転許可を行った案件については、年次報告書を作成し公表するとしている。これらの情報公開はどの程度詳細になされるのか。特に、年次報告書では、相手国や件数のほか数量等も公表されるのか。

四 新原則三の「目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保」において、原則として目的外使用及び第三国移転について我が国の事前同意を相手国政府に義務付けるとしているが、他方、部品等を融通し合う国際的なシステムに参加する場合などには、仕向先の管理体制の確認をもって適正な管理を確保できれば事前同意を不要としている。これでは、防衛装備が紛争国に流出するかどうかは相手国頼みになってしまうおそれがあるのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

五 新原則は、憲法の平和主義の精神にのっとったものと説明されるが、日本国憲法の前文では「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と規定され、人々が戦争や暴力という恐怖から免れるべきとの考えを示している。恐怖の元凶である武器やその技術を提供することは、その考えに反することになるのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。