質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

大阪・泉南アスベスト訴訟第二陣訴訟の判決及び上告に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年一月二十四日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   大阪・泉南アスベスト訴訟第二陣訴訟の判決及び上告に関する質問主意書

 二〇一三年十二月二十五日、大阪高等裁判所は大阪・泉南地域の石綿紡織労働者らにおける健康被害について、国の責任を認定した。しかし、二〇一四年一月七日に政府は上告した。判決に対する解釈と政府の対応について、以下質問する。

一 昨年十二月二十六日の産経新聞には厚生労働省関係者のコメントが掲載され、「国の(過去のアスベスト)対策について、「これで百パーセントだろう」と思っていた部分が、裁判所は「二百パーセントじゃないとダメだ」と言ってきた。国としては適切に指導してきたという立場だったので、予想外の判決」と紹介されている。この関係者と同じ考えであるのかどうか、政府の見解を明らかにされたい。また、同じである場合は、百パーセントと二百パーセントがどのように異なるのか判決内容を用いてその意味を示されたい。

二 一月七日の厚生労働大臣の記者会見では、二〇一一年八月二十五日の第一陣訴訟の大阪高裁判決内容との乖離を上告の理由に挙げている。同判決は、労働者保護の観点からアスベスト粉じんの規制を強化することは、「工業技術の発達及び産業社会の発展を著しく阻害するだけではなく、労働者の職場自体を奪うことにもなりかねない」という立場に基づく判決である。法務省職員は、判決後の二〇一二年一月十五日発行の「判例タイムズ」第一三五九号に「規制権限の不行使をめぐる国家賠償法上の諸問題について」という論文を投稿し、泉南アスベスト第一陣訴訟に触れ、「規制権限の不行使の問題は、被害回復の側面で国の後見的役割を重視して被害者救済の視点に力点を置くと、事前規制型社会への回帰と大きな政府を求める方向につながりやすい。それが現時点における国民意識や財政事情から妥当なのか否かといった大きな問題が背景にあることにも留意する必要がある」との見解を述べている。
 厚生労働大臣が会見で述べた上告理由からは、政府として右のような立場を取っており、今回の大阪高裁判決が政府の立場と相反するものだから「上告をせざるを得ない」と判断したと解さざるを得ないが、政府の見解を明らかにされたい。

三 一月七日の厚生労働大臣の記者会見において、「被害者の方々の御心情というものは我々も理解をするところがございます」との発言があるが、「被害者の方々の御心情」とは何を指しているのか。また、その心情をどのように理解したのか具体的に示されたい。

四 泉南地域も含まれる岸和田労働基準監督署管内にはどの程度のアスベスト被害者がいると考えているのか、これまでの労災認定者数などの資料を参考に明らかにされたい。その際、大阪労働局保有の文書である、「労災保険受給者等についての分析①石綿取扱業務従事年数別死亡者・療養者数(岸和田署管内分)②死因別・件数・従事期間(岸和田署管内分)」、「石綿紡織業従事者(死亡分)の分析(労災支給決定者百四名のうち分析可能者)「昭和三十年から昭和六十二年十一月」」とその資料をもとに集計された「石綿取扱歴年別・死亡時の年齢別・取扱経験年数別」に準じる形で、現在までの集計数を示されたい。

  右質問する。