質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二九号

一般用医薬品のインターネット販売を含む法の適正化、明確化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十月二十五日

又市 征治   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   一般用医薬品のインターネット販売を含む法の適正化、明確化に関する質問主意書

 国に報告された、一般用医薬品によるものと疑われる副作用報告件数は毎年二百五十件前後あり、直接国に報告されたものや、全く報告されないものはカウントされておらず、この数字は氷山の一角に過ぎない。「医薬品のインターネット販売訴訟(最高裁判決)を受けた対応について」(厚生労働省医薬食品局総務課(平成二十五年一月十七日))の中では、「一般用医薬品の使用は、有益な効果をもたらす一方で副作用の発生のリスクを伴うものであり、薬剤師又は登録販売者と相談しながら、購入していただくことが重要である」と記載されている。
 しかし、一般用医薬品販売の現状を見ると、平成二十四年度一般用医薬品販売制度定着状況調査(以下「定着状況調査」という。)では、店舗での第一類医薬品販売において、購入しようとした際に文書を用いて詳細な説明があったのは六十・七パーセントと、相変わらず低く、約四十パーセントが書類での説明をせず販売をしている等、完全な法令遵守には程遠い状況にある。さらに、現行の省令にある情報提供義務の免除条件等を利用し、店舗では、本人確認をしないまま代理人に一般用医薬品を販売している。
 配置販売については、浅尾慶一郎衆議院議員が平成二十五年五月十五日に提出した「医薬品のインターネット販売に関する質問主意書」(第百八十三回国会質問第七三号。以下「質問第七三号」という。)に対し、同五月二十四日付け答弁書(内閣衆質一八三第七三号。以下「答弁書第七三号」という。)では、「薬剤師等による管理及び指導が可能な限度で、購入者から情報提供の求めがあった場合等に速やかに一般用医薬品を配置する場所において薬剤師等が情報提供を行うことができる適切な体制の下で実施される必要がある」とし、結果として無資格者による配置販売が堂々と容認されている。
 また、群馬県知事あて厚生省薬務局長回答である「配置販売業者の配置対象について」(昭和三十八年十一月七日薬収第八百八十三号)において、「配置販売業は個々の消費者に対する行商形態の販売業であるから、学校及び事業所等は、配置販売業の配置対象とは認められない」、また、「配置販売業者が学校及び事業所等の集団責任者に対して医薬品を配置し、当該責任者は対象員(学校の場合は生徒、職員、事業所の場合は会社工場等の従業員)が医薬品を必要のとき無料で使用させる」場合の「当該責任者の行為は、薬事法第二十四条違反となり得る場合がある」とされてきた事業所配置について、厚生労働省医薬食品局長発の「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成二十一年五月八日薬食発第〇五〇八〇〇三号)中の薬事法施行規則第百五十九条の十四関係において突然認められるようになった旨記載されている。
 事業所や学校における配置販売は、事業所や学校の責任者が多数の使用者を対象に情報伝達することを前提にしており、専門家が事業所や学校の責任者に初回のみ情報提供すれば、二回目以降は、同じ品目を一般従事者が配置販売している。なお、情報提供し、一般用医薬品を使用させている事業所や学校の責任者は、薬剤師や登録販売者ではなく、販売業の許可を得ていない。
 一方、インターネット販売は、薬剤師や登録販売者との対面なしに一般用医薬品を購入することで、薬の選択も、それによる被害の結果も、全て消費者の自己責任になり、薬害を助長するとの指摘があるが、法令を遵守する事業者によって実施されれば、トレーサビリティにおいて「店舗販売」より優位であり、情報通信技術の進歩や工夫等によっては「対面販売」と同等になる、今後は処方された医薬品さえインターネットで入手することも可能であるとも言われているが、平成二十四年度郵便等販売実態把握調査(以下「実態把握調査」という。)では、法令を無視する業者の存在が明らかとなっている。
 近年、医療現場において薬剤師によるフィジカルアセスメント(患者を観察して対話を交わしながら、患者の身体の状態を把握すること)の重要性が高まっている。
 私は、一般用医薬品の販売においても専門家によるフィジカルアセスメントは必要であることから、専門家に対する研修が重要であり、消費者の一方的な要望のみで販売するのではなく、店舗、配置、ネットにかかわらず、専門家によるフィジカルアセスメントが実施され、専門家の職能を生かした適切な情報提供、受診勧奨、販売可否の判断等がなされる体制が必要であると考える。
 以上のような現在の医薬品販売の問題点を踏まえ、消費者の安全性を確保する明快かつ合理的な規制と、消費者の利便性の両立が大切であり、法令の見直し・整備が不可欠であるとの立場から以下質問する。

一 医薬品のインターネット販売訴訟と現状について

 平成二十五年一月十一日、最高裁は、医薬品のインターネット販売訴訟において、第一類・第二類医薬品について郵便等販売をしてはならないとする省令は、これらの「各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の趣旨に適合するものではなく、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。」との判決(以下「最高裁判決」という。)を下した。
1 最高裁判決以降、勝訴した二社以外に医薬品のインターネット販売が拡大していると言われている。インターネット販売業者の数等、現状を明らかにされたい。
2 勝訴した二社以外に医薬品のインターネット販売業者が増えている場合、最高裁判決を基に、医薬品のインターネット販売に参入しているのではないか、政府の見解を示されたい。また、政府が勝訴した二社以外に医薬品のインターネット販売に参入した業者を訴えないのはなぜか。
3 定着状況調査によると、相談応需しない違法なサイトが四十一・三パーセントあり、平成二十二年度の二十一パーセント、平成二十三年度の三十四・三パーセントより悪化している。法令を無視する販売業者の存在が明らかとなっていることから、十分に取り締まることのできる有効な法律の策定が急務と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 対面販売について

 私は、平成二十一年十一月三十日に提出した質問主意書(第百七十三回国会質問第七八号。以下「質問第七八号」という。)で、「改正薬事法第三十六条の六は、(中略)「医薬品の通信販売の禁止」の理由とした『対面販売の原則』を規定した言葉が見られない。(中略)省令は、「法律の授権を欠き、憲法第四十一条に違反する」として、(中略)対面販売の原則の定義を明確化し、その条件に適合するか否かで、対応すべきではないか」と質問した。
 これに対し、平成二十一年十二月八日付け答弁書(内閣参質一七三第七八号。以下「答弁書第七八号」という。)は、「「対面販売の原則」とは、一般用医薬品については、その副作用等による健康被害が生ずるおそれの程度に応じて、薬局、店舗又は医薬品を配置する場所において、薬剤師又は登録販売者(以下「薬剤師等」という。)が対面で販売及び情報提供を行うことを基本とするというものであり、その趣旨は、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第三十六条の五、第三十六条の六等の規定から明らかであると考える」とのことであった。
1 質問第七八号により「対面販売の原則」を薬事法に明記するよう指摘したにもかかわらず対処せず、省令で既存の医薬品小売業界を擁護した結果、裁判で敗れた厚生労働省の責任は重いと言わざるを得ない。
 最高裁判決で、「新薬事法三十六条の五及び三十六条の六は、いずれもその文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における販売、授与及び情報提供を対面で行うことを義務付けていないことはもとより、その必要性等について明示的に触れているわけでもなく」とされたことを踏まえて、答弁書第七八号の「その趣旨は、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第三十六条の五、第三十六条の六等の規定から明らかである」は訂正されるべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。
2 薬事法施行規則第百五十九条の十四第一項では、「第一類医薬品については、(中略)当該薬局若しくは店舗又は当該区域における医薬品を配置する場所(中略)において、対面で販売させ、又は授与させなければならない。」と規定し、同第二項本文では、「第二類医薬品又は第三類医薬品については、(中略)当該薬局等において、対面で販売させ、又は授与させなければならない。」と規定している。また、第百五十九条の十五第一項第一号、第百五十九条の十七第一号及び同第二号において一般用医薬品の情報提供を対面により行わせなければならない旨規定しており、これこそ薬事法第三十六条の六に明記されるべきであったと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
3 対面販売を薬事法に明記できないのであれば、前記二の2の施行規則中の「対面」の文字を「毎回必ず専門家が直接関与すること」に変更することで、店舗販売における代理人購入、家庭の延長としての小規模事業所配置及びインターネット販売の間での整合性がとれると思われるので、薬事法に明記してはどうか、政府の見解を明らかにされたい。

三 「一般用医薬品の販売ルール策定作業グループ」報告書案に対する一般社団法人新経済連盟の意見書について

 厚生労働省の「一般用医薬品の販売ルール策定作業グループ」(以下「作業グループ」という。)がとりまとめた「一般用医薬品の販売ルール等について」における冒頭の文章に対し、作業グループ構成員が顧問を務める一般社団法人新経済連盟から、「配置販売も消費者に一般用医薬品を販売する方法であることに変わりはなく、他の販売方法に求められることが同様に求められるべきである」との理由で「本作業グループのとりまとめを踏まえ、規制が合理的かつ必要最小限のものとなっているか、各販売方法におけるルールとバランスが取れたものとなっているかを考慮したうえで、店頭販売、インターネット販売、電話販売その他の郵便等販売における具体的な医薬品の販売ルールについて制度的な対応が講じられることを望むとともに、本作業グループで議論されなかった配置販売についても、同様の観点から具体的なルールの検討および制度的検討がなされることを望むものである」と修正すべきとの意見書が出された。
1 質問第七三号において、「配置販売において、一般用医薬品を最初に配置する際には薬剤師又は登録販売者による情報提供が必要であるが、二回目以降の補充の際は、薬剤師等の専門家による間接的な管理指導さえあれば、無資格の者でも配置先に単独で第一類医薬品を含む一般用医薬品を補充できる(平成二十一年五月八日付け薬食発第〇五〇八〇〇三号の厚生労働省医薬食品局長施行通知)」と言及されている配置販売における無資格者による補充(実質的な配置販売)は、各販売方法におけるルールとバランスが取れたものとなっているか、政府の見解を明らかにされたい。
2 事業所や学校における配置販売は、各販売方法におけるルールとバランスが取れたものとなっているか。
3 事業所の代表者には医薬品の販売業の許可を得ていない場合がほとんどであることから、従業員に一般用医薬品を使用させる行為は薬事法第二十四条違反となり、薬事法施行規則第百五十九条の十四は無効ではないか、政府の見解を明らかにされたい。
4 作業グループが十月八日に公表した「一般用医薬品の販売ルール等について」(以下「作業グループ報告書」という。)中の、専門家による的確な確認・情報提供等について、「情報提供義務(第一類)の免除条件の明確化」に関し、ア)医師・薬剤師等や同じ品目を継続して使用する者に対して販売する場合であって、かつ、イ)薬剤師が説明を必要としないと認めるときに限ることとする。」ならば、質問第七三号において言及されている配置販売における無資格者による補充(実質的な配置販売)は、薬事法第三十六条の五の委任の範囲を超え、配置販売業のみ優遇した省令となるので、廃止されるべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。
5 答弁書第七三号は、「薬剤師等による管理及び指導が可能な限度で、購入者から情報提供の求めがあった場合等に速やかに一般用医薬品を配置する場所において薬剤師等が情報提供を行うことが出来る適切な体制の下で実施される必要がある」としている。
 一般従事者が単独で医薬品を販売することはあってはならないことから、答弁書第七三号にある「適切な体制の下」を「毎回必ず専門家が直接関与すること」とすれば、店舗、配置及びネット販売におけるバランスが取れたルールとなって、一般従事者が単独で医薬品を販売することができなくなるのではないか。

四 報告書に対する一般社団法人新経済連盟意見書について

 厚生労働省の作業グループ報告書と「スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合」の報告書公表に関し、一般社団法人新経済連盟代表理事三木谷浩史名で、「1.作業グループのうち少なくとも三名の構成員から、作業グループをもう一度開催すべきとの強い要望があったにもかかわらず、座長の判断ということで、そのまま厚生労働省が公表に至ったことは、非常に問題があり大変遺憾である。2.専門家会合においても本日の会合で報告書がほんの三十分の会議を経てとりまとめられた。その報告書の内容は、スイッチ直後品目等の特性と販売に当たっての留意点にとどまるので、その販売ルールは別途検討される必要がある。スイッチ直後品目等の販売のルール化に当たってはイコールフッティングの観点から詳細に分析がなされるべきである。我々の見解は、先週金曜日に出した意見書のとおり、インターネット販売及び対面販売双方に安全性の確保の仕組みを設けたうえで、インターネット販売と対面販売に不合理な差を設けずに、販売経路に関わらず販売を可とするべきというものである。なお、スイッチ直後品目等の具体的な販売ルールは、作業グループという公開の場において議論すべきである。よって、スイッチ直後品目等のルールを議論することなく作業グループのとりまとめを本日公表したことには大変遺憾であり、不当である。3.スイッチ直後品目等のインターネット販売を合理的な理由なく禁止するということになれば、本年一月の最高裁判決、総理大臣の全面解禁のご発言、日本再興戦略、規制改革会議の見解に反し、さらに技術革新にも背を向けるため到底受け入れられない。4.政府としての販売ルールについての方針を決める状況には無く、厚生労働省は真摯に誠実に議論を尽くすよう強く要請する。未だ議論は尽くされていない。」との意見書が出ている。
1 複数の構成員から、作業グループをもう一度開催すべきとの強い要望が出ているのに、座長の判断で公表された理由は何か。
2 公開の場において議論すべきスイッチ直後品目等のルールを、ほんの三十分の専門家会議でとりまとめ公表した理由は何か。
3 スイッチ直後品目等のインターネット販売を禁止する合理的な理由は何か。
4 作業グループ報告書中に、一般用医薬品の販売ルール等について、「本作業グループでは議論されなかった電話販売その他の郵便等販売や配置販売における具体的な医薬品の販売ルールについても、消費者の安全性確保の観点から必要かつ合理的なものとなっているか、それぞれの特性を踏まえつつバランスの取れたものとなっているかという点を考慮しつつ、制度的な対応を講じることを強く望むものである。」とある。
 また、三木谷氏の名前で出された意見書中の「インターネット販売及び対面販売双方に安全性の確保の仕組みを設けたうえで、インターネット販売と対面販売に不合理な差を設けずに、販売経路に関わらず販売を可とするべき」との点を含め、いまだ議論は尽くされていない。
 「政府としての販売ルールについての方針を決める状況には無く、厚生労働省は真摯に誠実に議論を尽くすよう」にとの強い要請、店舗における代理人購入の際の本人確認の方法、配置における二回目以降の無資格者による配置及び事業所配置の違法性への対処につき、政府の方針を示されたい。

五 研修について

 平成十八年四月十八日の参議院厚生労働委員会で、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び社会民主党・護憲連合の各会派共同提案による、薬事法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(以下「附帯決議」という。)が提出され、政府は、本法の施行に当たり、適切な措置を講ずるべき事項の一つとして「一般用医薬品の販売に従事する者については、都道府県等と連携し、その資質の向上に努めること。」がある。
 ところが、平成二十四年三月二十六日付け厚生労働省医薬食品局総務課長発の「登録販売者に対する研修の実施について」(薬食総発〇三二六第一号。以下「厚労省通知」という。)には、「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(昭和三十九年厚生省令第三号。)において、薬局開設者並びに店舗販売業者及び配置販売業者(以下「一般用医薬品販売業者等」という。)は、一般用医薬品の情報提供その他の一般用医薬品の販売又は授与の業務に係る適正な管理を確保するため、従事者に対する研修を実施することとされています。
 しかしながら、昨年実施した調査によれば、従事者に対する研修の中で、一般用医薬品の販売業務に従事する登録販売者に対する研修については、時間数、研修内容等の実施状況にばらつきが生じている状況です。
 登録販売者は、薬事法上、第二類及び第三類の医薬品の販売、情報提供等を担う立場にあることから、一般用医薬品販売業者等は、登録販売者に対し一定の水準以上の研修を実施し、その質の向上を図る必要があります。このためには、研修の専門性、客観性、公正性等の確保の観点より、一般用医薬品販売業者等が自ら登録販売者に対し研修を適切に行うことに加え、外部の研修実施機関が行う研修を受講させることが適当です。」とある。
 平成二十五年一月二十三日に行われた第一回産業競争力会議において委員より、「現行の登録販売者は専門性が低い。OTC医薬品第一類及び第二類全てを、上記TV会話等のICTによる薬剤師の活用で、安全を担保して二十四時間販売が可能。病状によっては、最も近い医師への紹介を行う仕組みを検討。ゆえに医療費の削減と新たな雇用機会の創出が可能となる」旨意見が出されている。
1 現在、実施されている講習、研修は、登録販売者の研修を請負う教育機関によって、研修の質に相当の格差があるように聞いている。教育機関の数、教育の中味(教員、教材、カリキュラム等)を政府は把握されているのか明らかにされたい。
 フィジカルアセスメントを実施し専門家として判断した上で、適切な情報提供を行い、場合によっては受診勧奨まで可能となるような内容を研修に加えるべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。
2 安心で安全な社会を作るには、専門的な情報を伝える専門家の資質の向上が必要であり、そのためには、登録販売者の研修を請け負う外部教育機関に研修レベルを競わせ、登録販売者の資質の向上を図ることが合理的と思われる。
 薬事法関連において、厚生労働大臣の登録を受けた者が行う講習を義務付けている類似例が、医療機器販売業にある。また、厚生労働省は平成二十五年八月十九日、二〇一三年度薬剤師生涯教育推進事業の実施法人に日本薬剤師会を選定したと聞いている。
 登録販売者研修、既存配置研修についても同様に、資質向上教育推進事業を実施する団体や教育機関を把握した上で厚生労働省が指定し、責任を持って行わせるべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。
3 薬事法第三十六条の六第三項は、専門家に購入者からの相談に応じるよう義務づけている。また、報告書の「従事者に対する研修等の実施」には、「引き続き、従事者に対する研修の実施その他必要な措置を実施することを義務付けることとする。なお、インターネット販売を行う場合は、インターネット販売に関する研修の実施その他必要な措置の実施を義務付けることとする。」とある。
 よって、厚労省通知を更に精緻にし、薬事法に罰則を設け、登録販売者に対する研修を義務化するべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。

六 情報提供について

 一般用医薬品を販売する際の医薬品情報伝達の手段として、「専門家による対面販売」と「インターネット販売」の相違が問題とされ、店舗販売において、目の前の購入者に薬剤師等の専門家が必要な情報提供を行う方法に対して、インターネット販売において、店舗にはいない購入者から情報通信手段により注文を受けて情報提供をするという方法が、同等程度の情報提供の効果があるのかが争われている。
 また、「改正薬事法を遵守しないと、医薬品小売業界に未来は無い」とされていたにもかかわらず、薬事法を遵守しようとしない、既存の医薬品小売業界のぬるま湯的体質にこそ根本的問題が内在しており、体質改善が望まれる現状である。
1 薬事法第二十五条に「一般用医薬品(医薬品のうち、(中略)薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものをいう。以下同じ)」とある。インターネット販売において、薬剤師または登録販売者によってフィジカルアセスメントが実施され、使用者に一般用医薬品情報を適切かつ確実に提供でき、トレーサビリティが高いとすれば、薬事法第二十五条の医薬品の許可の種類に、「インターネット販売業の許可」を加えざるを得ないのではないか、政府の見解を明らかにされたい。
2 定着状況調査結果報告書では、全国六千五百三十八件の薬局・店舗販売業者の店舗のうち、第一類医薬品について、購入しようとした際に文書を用いて詳細な説明があったのは六十・七パーセントとあるが、本来は百パーセントであるべきである。これは、薬事法第三十六条の六第四項「医薬品を購入し、又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があった場合には、適用しない」の文言「適用しない」にも一因があると言われている。
 よって、答弁書第七三号にある「「購入者が説明を要しない旨の意思の表明をした場合」であっても、専門家が必要と判断したときは、専門家として適切な情報提供を行われる」か、報告書の「情報提供義務(第一類)の免除条件の明確化」のア)医師・薬剤師等や同じ品目を継続して使用する者に対して販売する場合であって、かつ、イ)薬剤師が説明を必要としないと認めるときに限ることとする。」を入れて、薬事法第三十六条の六第四項の文言を変更するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

七 登録販売者試験の受験資格に係る実務経験について

1 一般用医薬品を販売(又は配置)する場合は、毎回必ず専門家が直接関与することとすべきではないか。
2 前記七の1に関し、「一般用医薬品を販売(又は配置)する場合は、毎回必ず専門家が直接関与すること」とすれば、医薬品陳列場所(配置の場合は家庭のくすり箱)において、薬剤師または登録販売者の直接管理下で、一般従事者に情報提供以外の業務を行わせ、それをもって、実務経験とすることが可能ではないか、政府の見解を明らかにされたい。
3 平成二十五年五月七日付け内閣参質一八三第八二号によれば、登録販売者試験の受験資格である実務経験の証明に対し不正が行われたのは、株式会社日本配薬三十八名、合同会社西友三百十名、株式会社カメガヤ四百八十五名、全国の三十一薬局開設者等二百六十九名であり、違反事件が多発していることから、「一般用医薬品を販売(又は配置)する場合は、毎回必ず専門家が直接関与すること」、「医薬品陳列場所において、一般従事者に情報提供以外の業務を行わせ、それをもって、実務経験とする」を薬事法に明記されてはどうか。

八 薬事監視、指導について

 配置販売においては、初回のみ薬剤師等が情報提供すれば、同一薬について二回目以降は情報提供を行うことなく、一般従事者が単独で配置販売している。また、前記七の3に指摘したように登録販売者試験のための実務経験取得違反事件も多発している。このままでは、一般用医薬品販売制度そのものが有名無実となり、一般用医薬品から処方箋薬まで、インターネット等による販売の方が良いと言われかねない。
 現在、医薬品販売業における監視、指導は、都道府県が行っているが、法の裏付けのない省令では、有効な監視、指導が出来ないと、監視、指導を控える自治体が増えていると言われている。
1 附帯決議において、政府は、本法の施行に当たり、「制度の実効性を確保するよう薬事監視の徹底を図ること。」とされていることから、監視、指導を徹底できるように、法令の整備を至急行うべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。
2 本年七月中旬にフランスでは、実店舗を営む薬局での医薬品のインターネット販売が解禁されたが、外国の犯罪団関与の違法サイトも多く、告訴されていると報じられている。また、「安全な薬品を入手するための欧州同盟」の調査では、インターネットで販売されている薬の六十二パーセントが偽造品という。都道府県による監視・指導では、当該行政地域とは異なる場所での購入者に副作用被害等が生じた場合や国外から流入する医薬品等への対処、対応が難しい。
 インターネット販売におけるルールを早急に作るとともに、実質的に取り締まる有効な方策として、インターネット販売上の新たな薬事監視、指導システムを省庁横断で構築すべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。
3 平成二十五年二月十三日に私が提出した質問主意書(第百八十三回国会質問第二六号)の六で、「医薬品のネット販売のルール作りについて厚生労働省は、消費者庁と連携して取り組むことが必要ではないか。」と質問した。
 これに対し、答弁書(内閣参質一八三第二六号)は、「必要に応じて、消費者庁との間で情報を共有するなど、同庁と連携して取り組んでまいりたい。」とあった。
 消費者庁と連携を取りつつあるのか。連携を取っている場合には、その具体例を示されたい。また、今後、厚生労働省と他省庁との連携を拡大するつもりはあるか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。