質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四号

高血圧症治療薬バルサルタン(商品名ディオバン)の薬事法上の広告規制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十月十八日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   高血圧症治療薬バルサルタン(商品名ディオバン)の薬事法上の広告規制に関する質問主意書

 高血圧症治療薬バルサルタン(商品名ディオバン)に関する医師主導臨床研究の論文において不正が疑われる事件に関し、薬事法上の広告規制について以下、質問するので、項目ごとに答弁されたい。

一 「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という。)が平成二十五年十月八日にとりまとめた「高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(中間とりまとめ)」では、「4.その他の重要課題 (1)薬事法に基づく対応の必要性」において、「薬事法六十六条では何人も医薬品の誇大広告等をしてはならないと規定しているところ、今回の事案に関する広告は結果的に誇大広告に該当するおそれがあることから、国は立入検査等の権限を有する者による詳細な実態解明をすすめ、関係者の薬事法上の違法性を十分検証し、厳しい対応を図るべきものと考える。また、専門誌等のマスメディアにおいても、結果的に今回の事案に関連する企画広告が医療現場等に与えた影響は少なからずあることを十分認識すべきであり、今後の広告のあり方等について十分検討するべきと考える。」と記されている。まず、検討委員会において誇大広告の可能性が懸念され国に立入検査による検証を求めたのであるから、前述のようなデータを速やかに現場に立ち入って検証する必要があると考えるが、現状は、中央社会保険医療協議会の検討に委ね、当事者に時間稼ぎや証拠隠滅の機会を与えているようにしか思えない。中間とりまとめを受けて、厚生労働省は調査を開始しているのか。開始していない場合には、その正当なる理由を示されたい。

二 前記一に関して、「結果的に誇大広告に該当するおそれ」とあるが、これは、「データ操作が行われた論文であるとすれば結果的に誇大広告に該当する」という意味であると読み取れる。しかしながら、薬事法第六十八条では承認前の医薬品の広告を禁止しており、「医薬品等適正広告基準」では、広告の表現は「承認を受けた効能効果等の範囲をこえない」ものであるべきとされている。すなわち、承認を受けた効能効果の範囲をこえた広告は、薬事法第六十六条による誇大広告以前に、薬事法第六十八条に違反しているのではないかと考えられる。承認を受けた医薬品の、承認を受けた範囲をこえる広告は薬事法第六十八条違反と理解してよいか。

三 前記二の場合に、厚生労働省は、検討委員会での今後の検討や、医療保険財政への影響の評価等についての中央社会保険医療協議会における検討を待たずに、第一回検討委員会にノバルティスファーマ株式会社(以下「ノバルティス社」という。)が提出した資料二-七の十六ページにある「推計四百九十五種類(バルサルタン関連全千三百八十四資材中)」とされるプロモーション資材につき、ノバルティス社に承認外効能の情報を用いているものとそうでないものを分類の上、提出することを求め、承認外効能の宣伝とみなされるものは違法であるとして至急に適切な処置を執ることが必要であると考えるが、そのような対応を行わない理由は何か、明らかにされたい。

四 パンフレット等の資材では承認外の効能を直接うたわず抽象的な表現を行っているものが多いと予想されるが、医学雑誌座談会の体裁による「提供記事」は明らかに承認外の効能について研究者らが論じており、これら研究者を製薬企業が「オピニオンリーダー」と位置付けて宣伝に活用していることは中間とりまとめからも明らかである。薬事法第六十六条及び第六十八条は「何人も」と始まっており、本条文は、製造販売業者に限定されず、新聞・雑誌社等にも適用すると解釈される。このため、ノバルティス社の「提供記事」である座談会を掲載した医学雑誌、座談会で承認外の効能の宣伝に協力した医師も薬事法第六十六条及び第六十八条に違反する行為を行ったものとみなされると考えられるが、いかがか。
 また、この種の医学雑誌上の提供記事は、右記「推計四百九十五種類(バルサルタン関連全千三百八十四資材中)」の中に含まれているのかどうか、ノバルティス社に確認の上、明らかにされたい。

五 米国などでは、パンフレット、医学雑誌上の提供記事以外に、国際的なピアレビュー誌において承認外の効能につき有効性が示されたと主張する論文が掲載された場合に、その別刷りを製薬企業が医療機関に配布する行為が、不正行為の有無とは別に問題のある行為として議論されてきたと認識しているが、厚生労働省もそのように承知しているか。

六 前記五の行為について、日本においても倫理上許されてはならないと考えるが、いかがか。

  右質問する。