質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第三一号

内閣参質一八三第三一号
  平成二十五年二月二十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員川田龍平君提出東海再処理工場、六ヶ所再処理工場の安全規制等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出東海再処理工場、六ヶ所再処理工場の安全規制等に関する質問に対する答弁書

一の1、3及び4並びに二の2及び6について

 再処理設備及びその附属施設(以下「再処理施設」という。)に係る新たな安全基準については、平成二十五年十二月までに、原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号)附則第十八条の規定により改正された核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)に関連する原子力規制委員会規則の施行等を行うこととしており、具体的な内容については、航空機衝突等のテロ対策や火災・電源喪失等が同時多発する事象に対する対策も含め、今後、同委員会において検討することとしている。
 また、原子力災害対策指針(平成二十四年十月三十一日原子力規制委員会決定。以下「指針」という。)において、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の事故(以下「本件事故」という。)の教訓を踏まえ、発電用原子炉に係る原子力災害対策重点区域の設定の目安等について定めたところであるが、御指摘の「放射性物質の拡散予測」(以下単に「拡散予測」という。)については、関係道府県が指針に基づき地域防災計画を修正するに当たり、まずは発電用原子炉に係る原子力災害対策重点区域の具体的な範囲の検討が円滑に進められるよう、参考情報としてお示ししたものである。再処理施設に係る指針の見直し及び拡散予測については、今後、同委員会において検討することとしている。

一の2について

 再処理施設に係る事業指定の申請等の審査の進め方については、申請の内容により様々であることから一概にお答えすることは困難であるが、原子力規制に関する最終的な決定は原子力規制委員会が行うものである。なお、同委員会においては、外部有識者から意見を聴くに当たっては、当該有識者に係る情報を積極的に公開することにより透明性を確保することとしている。

二の1について

 再処理事業者から提出を受けた御指摘の「ストレステスト評価報告書」については、原子力規制委員会のホームページにおいて公開しているところ、その取扱いについては、今後、同委員会が行う再処理施設に係る安全規制の見直しの中で検討することとしている。

二の3について

 日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)の再処理事業所再処理施設(以下「六ヶ所再処理施設」という。)に設置されている高レベル放射性液体廃棄物(以下「高レベル廃液」という。)に係る貯槽の容量の合計は、約六百八十立方メートルであり、お尋ねについては、六ヶ所再処理施設において、当該容量の範囲内において高レベル廃液を貯蔵するものと認識している。

二の4について

 平成二十五年二月一日時点における独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)の東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所再処理施設(以下「東海再処理施設」という。)における高レベル廃液の貯蔵量、貯蔵されている高レベル廃液に含まれるセシウム一三七の含有量の推定値並びに当該高レベル廃液に含まれる放射性核種及びその放射能濃度の推定値については、原子力機構のホームページで公表されている。
 日本原燃からは、同日時点において、六ヶ所再処理施設における高レベル廃液の貯蔵量及び貯蔵されている高レベル廃液に含まれるセシウム一三七の含有量の推定値について、それぞれ、約二百二立方メートル、約五百二十ペタベクレルであると聞いており、また、当該高レベル廃液に含まれる①放射性核種及び②放射能濃度の推定値について、確認できる範囲でお示しすると、次のとおりであると聞いている。
①ルテニウム一○六 ②約三百十ギガベクレル毎立方メートル
①アンチモン一二五 ②約千四百ギガベクレル毎立方メートル
①セシウム一三四 ②約二十五テラベクレル毎立方メートル
①セシウム一三七 ②約二千六百テラベクレル毎立方メートル
①ユウロピウム一五四 ②約三十一テラベクレル毎立方メートル
①アメリシウム二四一 ②約四十七テラベクレル毎立方メートル
①キュリウム二四四 ②約四十四テラベクレル毎立方メートル
 一方、「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書―東京電力福島原子力発電所の事故について―」(平成二十三年六月原子力災害対策本部決定)においては、本件事故により大気中に放出された放射性物質について、放出量が最も多いとされる事故発生後約四日間に係る解析の結果等を取りまとめており、その中において、東京電力の福島第一原子力発電所の第一号機から第三号機までの各号機におけるセシウム一三七の放出量の合計を一万五千テラベクレルと推定している。
 しかしながら、これらの推定の前提や方法は大きく異なるものであり、お尋ねについて単純に比較することは合理的でないと考えている。

二の5について

 お尋ねについては、再処理施設の場合は原子炉等の場合に比べ核種が非常に多様であること等を考慮し、放射性廃棄物の海洋放出に起因する海産物の摂取等も含めた一般公衆の被ばくの線量限度について示しており、具体的には、実効線量で三か月間につき二百五十マイクロシーベルトとしている。

三の1について

 政府としては、仮に平成二十三年三月十一日に東海再処理施設に東京電力の福島第一原子力発電所に到達したものと同程度の津波が襲来していたとする場合に、お尋ねの「外部への放射性物質の放出」等に至る可能性がどの程度であったかについて、評価していない。

三の2について

 お尋ねについては、放射性物質に係る適用除外規定を設けている大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)等の関係法律について、所要の整備を行うことを内容とする法律案の今通常国会への提出を検討しているところである。
 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(昭和四十五年法律第百四十二号)においては、人の健康を害する物質(身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質を含む。)を規制対象としており、放射性物質も同法の規制対象となり得ると考えている。

三の3について

 平成二十二年十月三十一日の日越首脳会談において、ベトナムにおける二基の原子力発電所建設の協力パートナーに我が国が選ばれるに当たり、使用済燃料及び放射性廃棄物の管理(以下「使用済燃料の管理等」という。)を我が国が請け負ったという事実はない。なお、原子力発電施設で発生する使用済燃料の管理等の具体的方法については、基本的には当該原子力発電施設が所在する国が責任を持って取り組むべき課題であると考えている。我が国としては、使用済燃料の管理等に取り組んできた経験を基に、助言を行うなど、できる範囲で協力していく考えである。