質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第二四八号

内閣参質一八〇第二四八号
  平成二十四年九月十四日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員紙智子君提出高レベル放射性廃棄物の地層処分の見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出高レベル放射性廃棄物の地層処分の見直しに関する質問に対する答弁書

一について

 核燃料サイクル開発機構(当時)が平成十一年十一月二十六日に取りまとめた「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性―地層処分研究開発第二次取りまとめ―」(以下「第二次取りまとめ」という。)においては、我が国における高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る基本的考え方として、岩盤等の天然の地質環境による防護である天然バリア及びガラス固化体、金属製容器等による工学的な防護である人工バリアの組合せである多重バリアにより、放射性物質を長期にわたり人間環境から隔離し得るものであり、このうち人工バリアについては、地震の影響が少ない地下深部に設置することにより、将来の不確実な地震、断層活動等の影響を緩和できることを示すとともに、地下に活断層が伏在している可能性があるため、物理探査やボーリング調査等の地下構造調査を特に慎重に行うことにより、伏在する活断層の有無や規模等を確認する必要性についても指摘している。
 このため、政府としては、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号。以下「法」という。)第六条から第八条までに規定する文献調査、概要調査及び精密調査という多段階の調査を通じて、調査対象となる地区の地質環境について活断層の有無等を詳細に調査し、多重バリアが有効に機能するかどうかを評価した上で、法第二条第十二項に規定する最終処分施設建設地を選定することとしている。
 また、最終処分事業の更なる安全性に資するため、深地層に係る研究開発等に着実に取り組むとともに、当該研究成果や平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「東北地方太平洋沖地震」という。)も踏まえた地球科学分野の最新の研究成果について、精密調査地区等の選定基準等に適切に反映していくこととしている。

二の1から3までについて

 第二次取りまとめにおいては、地震の際の地下深部の地震動の規模、岩盤の変形及び応力の変化が地下水の流動特性に与える影響等を評価する観点から、釜石鉱山において、平成六年十月四日に発生した北海道東方沖地震や平成九年十月十一日に発生した宮城県沖地震等の地震に伴う影響を調査した結果、地震動の最大加速度については、地下深部では地表面に比べ、おおむね二分の一から四分の一にとどまっており、また、地下水の流動特性の変化を示す地下水水圧の変化についてはほとんど検知されず、水圧の変化が検知された場合でも、数週間程度で元の状態に戻っており、変化の要因は主に季節変動によるものであり、変化の幅も季節変動の範囲内であったことが示されている。
 また、最終処分施設建設地の選定に当たっては、調査地区ごとに、当該地区で想定される最大級の地震を考慮して多重バリアが有効に機能するかどうかを評価する必要があると考えており、東北地方太平洋沖地震を踏まえ政府の地震調査研究推進本部が検討を進めている海溝型地震の長期評価手法の見直し等についても、精密調査地区等の選定基準等に適切に反映していくこととしている。

二の4について

 最終処分事業に対する国民の理解、安心を得る観点から、法第二条第十四項に規定する最終処分施設の閉鎖後も一定期間の管理体制を維持することが重要であると考えており、法に基づき処分実施主体に支払われる処分費用として、最終処分施設の閉鎖後三百年間のモニタリングのための費用が計上されている。

二の5について

 第二次取りまとめにおいては、多重バリアが機能しなくなった場合を想定した解析も行っているが、政府としては、多段階の立地選定プロセスを通じ、多重バリアが適切に機能する地区を最終処分施設建設地として選定する方針であり、対象となる地区の地質環境やその時点における科学的知見等、様々な要素を踏まえ、合理的に想定される最悪の事態に対処していくこととなると考えている。いずれにせよ、最終処分事業の安全性については、最新の科学的知見に基づき、不断に向上させるべきものであると考えている。