質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四九号

内閣参質一八〇第一四九号
  平成二十四年六月二十九日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員又市征治君提出暴力団員による不当な行為の防止等の対策の在り方に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員又市征治君提出暴力団員による不当な行為の防止等の対策の在り方に関する再質問に対する答弁書

一について

 先の答弁書(平成二十四年五月二十九日内閣参質一八〇第一一六号。以下「前回答弁書」という。)一についてで述べたとおり、条例については、各地方公共団体の判断により制定されるものであるので、国において御指摘のような「基準」を定めるべきものとは考えていない。

二について

 お尋ねの「人格権という一身専属的権利を授権することについて、理論的問題はないという趣旨か」及び「民事訴訟手続の原則に反するのではないか」との点については、指定暴力団等(第百八十回国会に提出している暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)による改正後の暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号。以下「法」という。)第二条第五号に規定する「指定暴力団等」をいう。以下同じ。)の事務所(法第三十条の二第二号に規定する「事務所」をいう。以下同じ。)の使用により生活の平穏又は業務の遂行の平穏が違法に害されていることを理由として当該事務所の使用等の差止めを請求しようとする付近住民等(法第三十二条の三第二項第六号に規定する「付近住民等」をいう。以下同じ。)が、暴力団員(法第二条第六号に規定する「暴力団員」をいう。以下同じ。)による報復等への懸念からこれをちゅうちょすることがあるという問題に対処するため、法律により、当該付近住民等が、自らの意思で、その請求に関する権限を適格都道府県センター(法第三十二条の四第一項に規定する「適格都道府県センター」をいう。以下同じ。)に委託することができることとする制度(以下「本制度」という。)を設けることは可能であると考えている。
 また、前回答弁書四については、御指摘の「授権者の存在を明らかにしないまま訴訟を進行することが可能」であるということを述べたものではない。
 さらに、前回答弁書四についてで述べたとおり、改正法案の国会提出に当たっては、御指摘の諸点も念頭に置きつつ検討を行い、指定暴力団等の事務所の使用により生活の平穏又は業務の遂行の平穏が違法に害されている付近住民等による当該事務所の使用等の差止めの請求が裁判所において認容されているという現在の実務を踏まえ、暴力団員による報復等への懸念から当該請求をちゅうちょすることがあるという問題に対処するためには、本制度が最も適当であると判断したものである。
 なお、御指摘の「適格団体の業務の適正の確保」については、法第三十二条の五第三項において適格都道府県センターに係る同条第一項の国家公安委員会の認定の要件として規定されている。

三について

 御指摘の「企業による「暴力団対策」としての警察OBの雇用等が著しく増加している実態」については、承知していない。

四について

 御指摘の「暴力団員が銀行等の口座を開設する行為」等で暴力団員が詐欺罪で検挙されている事例があることは承知しているが、このことと、法第三十二条の二において事業者(法第十四条第一項に規定する「事業者」をいう。以下同じ。)はその事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めることとしていることとは、直接の関係はない。
 なお、前回答弁書五から七までについてで述べたとおり、何が「暴力団員に不当な利益を得させる」行為なのかについては、その責務を有する各事業者において、社会通念に従って適切に判断されるべきものと考えている。

五について

 前回答弁書八についてで述べたとおり、法第三十三条第一項の規定による質問は、他の一般的な行政目的による質問の権限と同様に、犯罪捜査のために認められたものではなく、法の規定に基づく命令その他法の施行に必要があると認めるときに、法の施行に必要な限度において実施されるものである。

六について

 御指摘の「「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案」は、排除の対象となる「暴力団員等」の範囲を拡大させる可能性がある」の意味が必ずしも明らかではないが、御指摘の「各自治体や各事業者等の暴力団排除条項において、排除の対象となる「暴力団員等」に、暴力団員でなくなった時から五年を経過しない者を含めるのが主流となっており、就業率が極めて低い現状」については、承知していない。