質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一六号

内閣参質一八〇第一一六号
  平成二十四年五月二十九日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員又市征治君提出暴力団員による不当な行為の防止等の対策の在り方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員又市征治君提出暴力団員による不当な行為の防止等の対策の在り方に関する質問に対する答弁書

一について

 一部の条例において「暴力団関係者」という文言を用いていることは承知しているが、条例については、各地方公共団体の判断により制定されるものであるので、国において御指摘のような「基準」を定めるべきものとは考えていない。

二及び三について

 第百八十回国会に提出している暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)による改正後の暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号。以下「法」という。)第十五条の二第八項又は第三十条の八第四項において準用する法第五条第一項の規定により、都道府県公安委員会は、法第十五条の二第一項又は第三十条の八第一項の規定による特定抗争指定暴力団等又は特定危険指定暴力団等の指定をしようとするときは、法第三条又は第四条の規定による指定暴力団等(法第二条第五号に規定する「指定暴力団等」をいう。以下同じ。)の指定の場合と同様に、公開による意見聴取を行わなければならないこととされている。
 また、法第十五条の二第一項又は第三十条の八第一項の規定による特定抗争指定暴力団等又は特定危険指定暴力団等の指定については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)及び行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)の規定の適用がある。
 したがって、「「特定危険指定暴力団」及び「特定抗争指定暴力団」の指定を行うこと」が「憲法第三十一条の適正手続の保障の規定に抵触する」との御指摘は当たらないと考えている。

四について

 お尋ねの「都道府県暴力追放運動推進センターによる事務所使用差止請求制度」(以下「本制度」という。)は、指定暴力団等の事務所(法第三十条の二第二号に規定する「事務所」をいう。以下同じ。)の使用により生活の平穏又は業務の遂行の平穏が違法に害されていることを理由として当該事務所の使用等の差止めを請求しようとする付近住民等(法第三十二条の三第二項第六号に規定する「付近住民等」をいう。以下同じ。)が、暴力団員(法第二条第六号に規定する「暴力団員」をいう。以下同じ。)による報復等への懸念からこれをちゅうちょすることがあるという問題に対処するため、法律により、当該付近住民等が、自らの意思で、その請求に関する権限を適格都道府県センター(法第三十二条の四第一項に規定する「適格都道府県センター」をいう。)に委託することができることとする制度であり、右のような問題を解消する上で効果があるものと考えている。
 また、法第三十二条の四第三項の規定により、指定暴力団等の事務所の使用等の差止めの請求に係る民事訴訟手続等については弁護士に追行させなければならないこととされていること等から、本制度は弁護士代理の原則に反するものではないと考えている。
 このほか、御指摘の「なお十分な議論がなされていない点がある」という点についても、改正法案の国会提出に当たり、政府として十分に検討を行ったものである。
 なお、本制度については、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項に該当するものではないことから、法制審議会において調査審議する必要があるとは考えていない。

五から七までについて

 お尋ねの「社会的批判の強い天下りにお墨付きを与える」の意味が必ずしも明らかではないが、法第三十二条の二は、事業者(法第十四条第一項に規定する「事業者」をいう。以下同じ。)に、その事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努める等の責務があることを規定するものであり、何が「暴力団員に不当な利益を得させる」行為なのかについては、その責務を有する各事業者において、社会通念に従って適切に判断されるべきものと考えている。
 また、同条は、事業者による取引や契約に警察が関与することを法的に義務付けるものではない。

八について

 法第三十三条第一項の規定による質問は、他の一般的な行政目的による質問の権限と同様に、犯罪捜査のために認められたものではなく、法の規定に基づく命令その他法の施行に必要があると認めるときに、法の施行に必要な限度において実施することができるものであり、その違反者を処罰することは憲法第三十八条第一項の規定に違反するものではないと考えている。

九について

 御指摘のように暴力犯罪がエスカレートするようなことがないよう、御指摘の対策を含め、警察及び関係機関において必要な措置が講じられていくべきものと考えている。