質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第二三八号

白内障における多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術の保険導入に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年八月二十八日

浜田 昌良   


       参議院議長 平田 健二 殿



   白内障における多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術の保険導入に関する質問主意書

 白内障は加齢などが原因で、本来透明である目の水晶体が混濁し、物が霞んで見えたりする病気である。濁った水晶体を取り出し、代わりに人工の眼内レンズを挿入する白内障手術により、視力が大きく改善される。レンズには、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの二種類があり、現在保険適用されているのは、単焦点眼内レンズのみである。
 多焦点眼内レンズの挿入手術については、平成二十年七月から将来的な保険適用のための評価を行う先進医療に位置付けられた。これにより、一定の基準を満たす先進医療の実施医療機関では、診察、検査、投薬など通常の治療と共通する部分は保険が適用されることとなったが、先進医療に関わる費用は全額自己負担となるため、依然として高額になっている。多焦点眼内レンズへの関心はますます高まっており、早期に保険が適用され自己負担が軽減されることを強く望む声が一段と広まっている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 厚生科学研究費補助金による「科学的根拠に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」の平成十三年度総括研究報告書では、白内障の年齢階級別の有所見率について、「初期混濁を含めた有所見率は五十歳代三十七パーセント~五十四パーセント、六十歳代六十六パーセント~八十三パーセント、七十歳代八十四パーセント~九十七パーセント、八十歳以上で百パーセントであった」と報告されている(同書七頁)。白内障は加齢に伴い有所見率が増加することが明示されており、人口の高齢化による白内障の罹患率の上昇を裏付けるものであると理解できる。次回の診療報酬の改定に当たっては、このガイドラインで示されたエビデンスなどを重視し、専門家の意見を尊重しながら保険導入を検討すべきであると考えるが、野田内閣の見解を示されたい。

二 厚生労働省の「患者調査」では、白内障の総患者数は、平成十七年では百二十八万八千人、平成二十年では九十一万七千人となっているが、第百八十回国会提出の「平成二十三年度高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」によれば、「平成二十五(二〇一三)年には高齢化率が二十五・一パーセントで四人に一人となり、四十七(二〇三五)年に三十三・四パーセントで三人に一人となる」と記述されており(同書三頁)、今後、高齢化の進行に伴い、白内障の総患者数は更に増加することが大いに予測されるところである。
 また、内閣府が平成二十三年十一月に実施した「高齢者の経済生活に関する意識調査」では、「特に力を入れてほしい高齢者施策」の第二位に「医療サービス」(六十四・九パーセント)が挙げられている(同書百三十二頁)。
 白内障における水晶体再建術において、多焦点眼内レンズは、遠距離、中距離、近距離など複数に焦点が合うため、多くの場合、眼鏡に依存しない生活が可能となり、生活の質を更に高めることができる。眼鏡が日常の仕事等の支障になる場合や、耳、鼻、脊髄等に障害がある場合には、多焦点眼内レンズの必要性は一層増すこととなる。また、白内障手術としての眼内レンズ挿入術は、一度眼内レンズを入れると再手術は難しく、単焦点眼内レンズから多焦点眼内レンズへ替えることは現実的には困難だと言われている。
 これらのことを踏まえ、高齢社会の到来に当たり、多焦点眼内レンズへの保険適用の必要性について、野田内閣は如何なる見解であるか明らかにされたい。

三 「先進医療専門家会議」は、その検討項目として「保険給付との併用が認められた医療技術について、実施保険医療機関からの定期的な報告を踏まえ、普及性、有効性、効率性、安全性、技術的成熟度及び社会的妥当性の観点から、保険導入に係る技術的問題について検討を行う」とされているが、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術の実施件数について、最新の「実施保険医療機関からの定期的な報告」では、どのようになっているか示されたい。さらに、先進医療に関わる患者の負担する費用はどのようになっているか示されたい。

四 多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は、平成二十年六月三日に行われた第二十九回「先進医療専門家会議」において先進医療技術として認定されたが、認定に当たっての先進技術としての適格性では、有効性及び安全性は三段階中A評価とされ、将来の保険収載の必要性について「将来的に保険収載を行うことが妥当」とされたところである。
 その後、平成二十四年一月十九日に開催された第六十二回「先進医療専門家会議」及び同年一月二十七日に開催された「中央社会保険医療協議会総会」(第二百十八回)において、平成二十四年度診療報酬改定に向け、先進医療技術の再評価が行われた。多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術については、引き続き先進医療で実施されることが適当であるとされたが、その結論が如何なる理由によるのか明らかにされたい。また、保険導入のための条件として、どのような点が指摘されているのか、併せて示されたい。

五 厚生労働科学研究費補助金による「網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究」の平成十九年度の分担研究報告書では、視覚障害の原因疾患として、昭和六十三年と平成十三年~平成十六年の約十五年間の変遷を検討した結果、「顕著に減少した疾患は、白内障〇・二一倍(十五・九パーセント→三・二パーセント)」と報告されている(同書百頁)。また、「本報告にみられる顕著な傾向」として、「白内障の激減にみられる治療・技術の進歩であろう」と記されている(同書百頁)。これは、平成四年以降の保険適用により、多数の白内障手術が実施されてきている事実が大きく反映されていると考えられる。
 厚生労働省の平成二十三年「社会医療診療行為別調査」によれば、「水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合」の実施回数は月間八万六千百六十五回であり、一般的に「白内障手術は年間百万件」と言われていることがほぼ裏付けられている。白内障治療の需要が高まっている中、治療の選択肢を広げることや患者負担増大の防止を図る観点からも、次の診療報酬改定時には多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術への保険適用を実現すべきであると考えるが、野田内閣として、どのように取り組むのか明らかにされたい。

  右質問する。