質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一四九号

暴力団員による不当な行為の防止等の対策の在り方に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月十九日

又市 征治   


       参議院議長 平田 健二 殿



   暴力団員による不当な行為の防止等の対策の在り方に関する再質問主意書

 私が先般提出した「暴力団員による不当な行為の防止等の対策の在り方に関する質問主意書」(第百八十回国会質問第一一六号)に対する答弁書(内閣参質一八〇第一一六号)を踏まえて、以下のとおり再質問する。

一 前記答弁書の「一について」では、「条例については、各地方公共団体の判断により制定されるものであるので、国において御指摘のような「基準」を定めるべきものとは考えていない」とされているが、「暴力団関係者」の定義を含め、その解釈・運用を各都道府県の判断に委ねれば、区々になり、法の下での平等を侵害するおそれがあるのではないか。したがって、法令により統一された基準を設けるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 前記答弁書の「四について」での答弁は、人格権という一身専属的権利を授権することについて、理論的問題はないという趣旨か。
 さらに、訴訟において、授権者の情報が明らかにならざるを得ないことは、有識者会議でも「民事訴訟の根幹に関わるものとなるので困難である」と認めている。「右のような問題を解消する上で効果があるものと考えている」との前記答弁書における答弁は、それでもなお、授権者の存在を明らかにしないまま訴訟を進行することが可能という見解か。そうであるとすれば、いかなる手続により授権者の氏名、住所等が明らかにされずに訴訟を進行できると考えるのか、政府の見解を明らかにされたい。
 また、前記答弁書において、「法第三十二条の四第三項の規定により、指定暴力団等の事務所の使用等の差止めの請求に係る民事訴訟手続等については弁護士に追行させなければならないこととされていること等から、本制度は弁護士代理の原則に反するものではない」とされているが、付近住民等から委託を受けた場合に、適格都道府県センターが「当該委託をした者のために自己の名をもって、当該請求に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」こと自体が民事訴訟手続の原則に反するのではないか。政府の見解を明らかにされたい。
 さらに、前記答弁書において、「御指摘の「なお十分な議論がなされていない点がある」という点についても、改正法案の国会提出に当たり、政府として十分に検討を行ったものである」とされているが、固有の権利として使用差止めを認める法制度との比較検討について、いかなる議論がなされたのか。また、同様に、消費者団体訴訟制度等の他の制度との権衡について、いかなる議論がなされたのか。加えて、制度を導入した場合における暴力団事務所の使用差止め以外への類推の可能性について、いかなる議論がなされたのか。最後に、適格団体の業務の適正の確保について、いかなる議論がなされたのか、それぞれ具体的に明らかにされたい。

三 前記質問主意書における、「社会的批判の強い天下りにお墨付きを与える」とは、企業が、不当要求による被害防止のための責任者として、元警察官を雇用し、あるいは委託することを促進するという意味である。現に、企業による「暴力団対策」としての警察OBの雇用等が著しく増加している実態を政府は把握しているか。把握している場合には、実態を明らかにされたい。

四 前記答弁書の「五から七までについて」では、何が「暴力団員に不当な利益を得させる」行為なのかについて、「その責務を有する各事業者において、社会通念に従って適切に判断されるべき」としている。他方、暴力団員が銀行等の口座を開設する行為や、スポーツクラブの会員になる行為、ゴルフ場を利用する行為までもが禁止され、これらの行為が詐欺罪等の犯罪とされている事例があるが、現状を政府は把握しているか。また、これらの行為は不当な利益を得たことになるのか、政府の見解を明らかにされたい。

五 前記答弁書の「八について」では、法第三十三条第一項の規定による質問は、「犯罪捜査のために認められたものではなく、法の規定に基づく命令その他法の施行に必要があると認めるときに、法の施行に必要な限度において実施することができる」とあるが、質問の対象となる者が自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について、供述を求められることはないという理解で良いか。政府の見解を明らかにされたい。

六 前記答弁書の「九について」では、暴力団を脱退した者が社会復帰して正常な市民生活を送ることができるよう講じるべき対策について、「警察及び関係機関において必要な措置が講じられていくべきものと考えている」とあるが、各自治体や各事業者等の暴力団排除条項において、排除の対象となる「暴力団員等」に、暴力団員でなくなった時から五年を経過しない者を含めるのが主流となっており、就業率が極めて低い現状を政府は把握しているか。「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案」は、排除の対象となる「暴力団員等」の範囲を拡大させる可能性があるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。