質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第七二号

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムの有効な活用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年四月二日

福島 みずほ   


       参議院議長 平田 健二 殿



   緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムの有効な活用に関する質問主意書

 文部科学省が所管する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(以下「SPEEDI」という。)は、原発事故が発生した場合の放射性物質の飛散状況をいち早く地域住民に知らせることで、放射能による被ばくを最小限に抑えることが可能となる。また、これにより地元の関係自治体は原子力防災計画を事前かつ適切に策定することができ、地域住民に対して日頃から避難準備の心構えを促すことも可能となる。
 こうした観点から、現在のSPEEDIを有効かつ迅速に活用すべきと考え、以下質問する。

一 二〇一一年三月におけるSPEEDIの試算結果の公開の遅滞について

1 二〇一一年三月二十二日の参議院予算委員会において、私がSPEEDIの三月十一日以降の試算結果の公開を求めたことにより、三月二十三日にようやくその一部が公開された。三月十五日に文部科学省では政務三役会議が開催されたと承知しているが、同会議においてSPEEDIの試算結果の公開の決定に踏み切らなかった理由は何か。また、どのような政府内の意思決定プロセスに基づき、試算結果を三月二十三日に公開することとなったのか、政府内の決定権者・機関を含めて具体的に説明されたい。さらに、三月十一日以降、試算結果が迅速に公開されなかったが、この非公開の決定は誰が行ったのか。加えて、三月二十三日の公開の決定は誰が行ったのか、具体的に明らかにされたい。
2 SPEEDIの試算結果の公開は迅速に行われない結果となったが、三月十一日の東京電力福島原発事故発生後から三月二十三日までの間、文部科学省の担当者は、同省の政務三役に対して、試算結果の公開・非公開について、どのような説明を行ったのか明らかにされたい。また、政務三役に対して説明した担当者は誰か。
3 原子力安全・保安院は、SPEEDIの試算結果を積極的に公開すべきとの方針だったのか、それとも、公開について消極的だったのか。当時の原子力安全・保安院の方針を明らかにされたい。
4 文部科学省は、三月十一日の東京電力福島原発事故発生後、SPEEDIの試算結果が三月二十三日まで公開されなかったことに対して、迅速に公開されなかったという認識はあるのか。また、放射性物質の飛散による被害が拡大した結果、被ばくした地域住民が増大したという認識はあるのか。さらに、試算結果を迅速に公開すべきであったという考えはあるか。

二 SPEEDIの過酷事故対応を想定した試算について

1 セシウムやヨウ素の放出率(Bq/h)について、原子力防災計画においては十の十一乗の前提で試算されているが、東京電力福島原発事故の放出率である十の十六ないし十九乗の前提に基づく試算は全国の原発施設ごとに行われていない。これだけの過酷な原発事故が発生したのであるから、今後の原子力防災計画をより適切なものとするために、積極的に各自治体や地域住民に情報を提供するべきと考えるが、なぜこうした情報を提供しないのか。私は、文部科学省から、東京電力福島原発事故の発生前に原子力防災計画用に作成された全国の各原発施設周辺におけるSPEEDIによる放射性物質の拡散状況の試算を提供してもらったが、当該試算と同じ風向きを条件にした上で過酷事故レベルの放出率である十の十六ないし十九乗の前提に基づく試算を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 本年三月十四日の参議院予算委員会において、私の質問に対して平野文部科学大臣は、地元自治体の要請に基づきSPEEDIの試算を行う旨の答弁を行ったが、なぜ地元自治体の要請がなければ、過酷事故レベルの前提での試算ができないのか。そのような対応を取り決めている法的根拠・内規があれば明示されたい。もし、法的根拠・内規がないのであれば、誰が判断した結果であるかを明示されたい。
3 私は、文部科学省の担当部署に対して、過酷事故レベルの試算を行うよう要請したが、国会議員の要請では対応できないとの回答があった。なぜ、国会議員の要請では試算ができないのか、その理由及び法的根拠を明示されたい。
4 本年三月十四日の参議院予算委員会において、原発の再稼働における地元の了承に関する私の質問に対して、枝野経済産業大臣は、「地元」の範囲について「地元の御理解ということについて何をもって理解とするのか、それからどの範囲をもって地元とするのか、これ機械的にできる問題ではないと思っております」との答弁を行った。それでは、地元自治体の要請に基づきSPEEDIの試算を行うとした前記2の平野文部科学大臣の答弁にある「地元自治体」とはどのように定義されるのか、明示されたい。
5 滋賀県がSPEEDIの試算の要請を文部科学省に対して行ったとのことであるが、それは事実か。事実であれば、いつ要請を受け、どのような前提に基づく試算なのかを明示されたい。また、試算結果を滋賀県に提示したのはいつか。さらに、滋賀県に試算結果を提示する前に、本件について福井県に相談したとのことであるが、それは事実か。事実であれば、福井県に相談する理由を明示されたい。

  右質問する。