質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第九二号

内閣参質一七四第九二号
  平成二十二年六月十八日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員山下栄一君提出特殊法人等の改革に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山下栄一君提出特殊法人等の改革に関する質問に対する答弁書

一について

 特殊法人については、法令上、例えば、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(平成十八年法律第四十七号。以下「行革推進法」という。)第十四条第二号において、「特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第十五号の規定の適用を受けるもの」と定義されているところである。また、認可法人については、法令上、例えば、行革推進法第四十二条第一項において、「特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政官庁の認可を要する法人」と定義されているところである。
 特殊法人と認可法人の相違点としては、例えば、設立に当たり、特殊法人の場合は、政府が設立委員を命じて設立に関する事務を処理させることとされ、かつ、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第十五号に規定する総務省の審査を受けることとされている一方、認可法人の場合は、民間の発起人が、主務大臣に対して法人の設立に係る認可申請を行い、認可を受けることとされている点がある。

二について

 お尋ねの特殊法人としては、平成二十二年六月一日現在、沖縄振興開発金融公庫、日本放送協会、日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社、日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、日本たばこ産業株式会社、株式会社日本政策金融公庫、株式会社日本政策投資銀行、輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社、日本私立学校振興・共済事業団、放送大学学園、日本年金機構、日本中央競馬会、日本アルコール産業株式会社、株式会社商工組合中央金庫、関西国際空港株式会社、北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社、東京地下鉄株式会社、成田国際空港株式会社、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社及び日本環境安全事業株式会社がある。
 また、認可法人としては、平成二十二年六月一日現在、株式会社企業再生支援機構、日本銀行、預金保険機構、銀行等保有株式取得機構、日本赤十字社、農水産業協同組合貯金保険機構及び株式会社産業革新機構がある。

三、十五及び十六について

 特殊法人及び認可法人については、平成九年十二月にまとめられた行政改革会議最終報告において、経営責任の不明確性、事業運営の非効率・不透明性、組織・業務の自己増殖性、経営の自立性の欠如などが指摘されたこと等を受け、簡素・効率的・透明な政府を実現する行政の構造改革の一環として、「特殊法人等整理合理化計画」(平成十三年十二月十九日閣議決定。以下「整理合理化計画」という。)が策定され、また、特別の法律により設立される民間法人については、「特別の法律により設立される民間法人の運営に関する指導監督基準」(平成十四年四月二十六日閣議決定。以下「指導監督基準」という。)が策定されており、これまで、これらに基づいて、法人の実態把握や情報公開、必要な監視を行ってきているが、引き続き、政府として責任を持ってこれらの取組を適切に行っていくこととしている。このほか、会計検査院や総務省行政評価局がそれぞれの権限に基づき監視を行っている。したがって、御指摘の「特殊法人等監視委員会」(仮称)を設置することは考えていない。

四及び五について

 総務省設置法第四条第十五号の規定については、昭和三十八年、行政管理庁設置法の一部を改正する法律(昭和三十八年法律第百六号)により当時の行政管理庁の所掌事務として、これと同様の規定が規定されたが、国会における法案の提案理由説明では、特殊法人は、国が必要な事業を行うために自らが強制的に設立する法人であり、国として必要な業務を合理的かつ能率的に遂行するためには、行政機関又は特殊法人のいずれが実施すべきか等を十分検討する必要があることから、行政機関の機構の新設等の審査を行っている行政管理庁において、特殊法人の新設等の審査を新たに行うこととするものである旨の説明がなされている。このような立法趣旨により、民間等の関係者が自主的に設立するものである認可法人については、総務省の審査対象としていないものである。

六について

 整理合理化計画における「民間法人化」については、整理合理化計画において新たに用いている用語ではなく、「行政改革に関する第五次答申―最終答申―」(昭和五十八年三月十四日臨時行政調査会)における「民間法人化」の考え方を踏まえ、特殊法人又は認可法人を、次のいずれかに該当する法人にすることをいうものである。
① 商法又は民法上の法人で、国又はこれに準ずるものの出資が制度上及び実態上ないもの
② ①以外の法律に基づき設立された法人で、法律上数が限定されておらず、国又はこれに準ずるものの出資が制度上及び実態上ないもの
③ ①及び②以外の法人で次のすべての要件に該当するもの
ⅰ 国又はこれに準ずるものの出資が制度上及び実態上ないこと
ⅱ 役員の選任が自主的に行われていること
ⅲ 事業の経常的運営に要する経費が、その事業による収入で賄われており、国又はこれに準ずるものからの補助金等に依存していないこと
 民間法人化された特殊法人又は認可法人は、国又はこれに準ずるものの出資が制度上及び実態上存在せず、役員の選任が自主的に行われている等の要件を備えており、政府資金等に依存する体質から脱却し、自立的に経営を行えるものであることから、整理合理化計画においては、民間法人化が民営化の一類型として位置付けられたものである。

七について

 指導監督基準においては、本基準の対象を、「民間の一定の事務・事業について公共上の見地からこれを確実に実施する法人を少なくとも一つ確保することを目的として特別の法律により設立数を限定して設立され、国が役員を任命せず、国又はこれに準ずるものの出資がない民間法人」としているところであり、「特別の法律により設立される民間法人」とは、本基準の対象となる当該法人に該当するものである。
 また、「特別の法律により設立される民間法人」という用語は、整理合理化計画を推進する上で、民営化された法人の一類型を適切に表すものとして用いたものである。

八について

 お尋ねの特別の法律により設立される民間法人としては、平成二十二年六月一日現在、自動車安全運転センター、日本公認会計士協会、日本消防検定協会、消防団員等公務災害補償等共済基金、危険物保安技術協会、日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本税理士会連合会、社会保険診療報酬支払基金、建設業労働災害防止協会、陸上貨物運送事業労働災害防止協会、林業・木材製造業労働災害防止協会、港湾貨物運送事業労働災害防止協会、鉱業労働災害防止協会、中央職業能力開発協会、中央労働災害防止協会、企業年金連合会、石炭鉱業年金基金、全国社会保険労務士会連合会、農林中央金庫、漁船保険中央会、全国農業会議所、全国農業協同組合中央会、全国漁業共済組合連合会、東京中小企業投資育成株式会社、名古屋中小企業投資育成株式会社、大阪中小企業投資育成株式会社、高圧ガス保安協会、日本電気計器検定所、日本商工会議所、全国商工会連合会、日本弁理士会、全国中小企業団体中央会、日本勤労者住宅協会、軽自動車検査協会、日本小型船舶検査機構及び日本水先人会連合会がある。

九について

 日本消防検定協会(以下「検定協会」という。)については、「民間法人化」に当たり、消防法及び消防組織法の一部を改正する法律(昭和六十一年法律第二十号)により、検定協会に対する政府の出資を廃止すること、役員の選任について自治大臣による任命制を廃止し、検定協会における選任に対し自治大臣が認可するものとすること、資金計画及び借入金に係る自治大臣の認可並びに財務諸表に係る自治大臣の承認に関する制度を廃止すること等の改正を行ったところである。

十について

 中央職業能力開発協会については、「民間法人化」に当たり、定款の変更により、職業能力開発に関する自主的な活動を行うこと等により職業能力の開発の促進を図ることを目的とすること等を目的規定に追加したところである。

十一及び十二について

 整理合理化計画においては、特殊法人及び認可法人の民間法人化の趣旨にかんがみ、お尋ねの「経常的事業経費に対する国等からの補助金等の廃止」は求められていないが、指導監督基準においては、「法人の事業の経常的運営に要する経費は、事業による自己収入で賄われ、国又はこれに準ずるものからの補助金等(補助金、負担金、交付金、補給金及び委託費をいう。以下同じ。)に依存していないこと」とするとともに、「真にやむを得ない理由から当該補助金等を受けている場合においても、経常収益に占める補助金等の割合の低減化を図る」こととされており、行政改革に逆行するとの御指摘は当たらないものと考える。

十三について

 「特殊法人等の組織見直しの類型別ガイドライン」(平成十三年十二月十九日内閣官房行政改革推進事務局。以下「ガイドライン」という。)においては、完全民営化の組織及び運営の基本として、国等が株式を保有しないこと、個別の根拠法を廃止すること等について規定されているが、整理合理化計画に基づき、完全民営化された法人は、電源開発株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社である。

十四について

 民間法人化が民営化の一類型として位置付けられている理由については、六についてで述べたとおりである。
 また、特殊会社については、ガイドラインにおいて、特殊会社の組織及び運営の基本として、商法(明治三十二年法律第四十八号)の適用を受ける株式会社であること、会社の取締役が株主総会において選任されること等について規定されていることから、民営化の一類型として位置付けられたものである。