質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇〇号

特定健康診査・特定保健指導制度におけるデータ解析とその健康増進政策への応用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年六月十四日

川田 龍平   


       参議院議長 江田 五月 殿



   特定健康診査・特定保健指導制度におけるデータ解析とその健康増進政策への応用に関する質問主意書

 平成二十年四月より特定健康診査・特定保健指導が開始された。特定健康診査は満四〇歳以上の医療保険加入者を対象として、現代病とも言える生活習慣病予防を目的とした健康診断を実施するよう、当該医療保険者に義務付けたものと承知している。また、当該制度は特定健康診査にてリスク要因が確認された医療保険加入者には、食生活や生活習慣を改善するための助言を行う「特定保健指導」と称する保健指導を提供し、生活習慣病に至るリスクを軽減しようと体系的に設計された制度であると理解している。
 坂巻弘之氏によれば、疾病管理は「主に慢性疾患を対象とし、疾病の重症化を予防するために、住民や患者の自己管理をサポートすることで、総合的な健康改善とそれに基づく費用コントロールを目標とするもの」(東京大学出版会「ヘルスサポートの方法と実践」二〇〇七)と定義されているが、この坂巻氏の定義を借りるのであれば、「特定健康診査・特定保健指導制度」は予防医学・健康増進という観点から、疾病罹患予防が主眼に据えられた疾病管理プログラムと言え、今後の成果が期待されるところである。
 そこで、この特定健康診査・特定保健指導制度の現時点での評価及びその過程で入手されるデータを用いた解析状況について、諸外国の疾病管理プログラムとの比較という点から以下質問する。

一 平成二十年度より導入された特定健康診査・特定保健指導制度に関し、特定健康診査の実施率の推移を明らかにされたい。また、特定保健指導の対象者数の推移も併せて明らかにされたい。

二 特定健康診査・特定保健指導制度の目的は生活習慣病の予防であると承知しているが、具体的に罹患予防の対象となる生活習慣病について明らかにされたい。

三 疾病管理では、母集団の健康リスク評価を行い、高リスクグループから低リスクグループまでを階層化し、階層ごとに最適な介入計画が練られ、専門家による介入がなされるものと理解している。そこで、我が国の特定健康診査・特定保健指導における階層化の実態とその具体的な介入方法について明らかにされたい。

四 我が国において特定保健指導という介入が実施され、厚生労働省も「標準的な検診・保健指導プログラム」(平成十九年四月厚生労働省健康局)を策定し、集団的介入として全国一律の指導内容を周知しているところであるが、保険指導プログラムとして該当者に対して実施されている支援の具体的事例について政府が把握しているものを明らかにされたい。

五 特定健康診査・特定保健指導制度が導入され二年が経過したところであるが、これまでのデータを解析し、階層化のための予測モデル、介入方法などについて評価は行われているのかどうか明らかにされたい。また、経済的評価も同時に行われているのであれば、費用対効果の観点からの現時点における政府での評価について明らかにされたい。

六 疾病管理を導入している諸外国では、生活習慣病はもちろんであるが、広く慢性疾患を対象とし、合併発症の罹患予防や重篤化予防などの三次予防に重点が置かれている。しかしながら特定健康診査・特定保健指導制度では、すでに生活習慣病に罹患し、医師の治療を受けているものについては、特定保健指導の対象としないとしており、三次予防については疾病管理の対象外としている。ドイツや英国では、疾病管理は機能連携(Integrated Care)と位置づけられ、医療機関、専門医、コメディカルなどを有効に活用することにより医療資源の効率的な運用を指向するとともに、クリティカルパスいわゆる地域医療連携の円滑化を目指したものと理解している。我が国においても診療ガイドラインが整備され、地域医療連携やクリティカルパスに注目に集まるようになって久しい。そこで、地域医療連携という視点から、この特定健康診査・特定保健指導制度で得たデータやインフラを補完的に利用し、三次予防に生かしていくことも可能と考えるところであるが、政府は生活習慣病予防の三次予防につき機能連携を用いた方策を考えているのかどうかについて見解を明らかにされたい。

  右質問する。