質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七一号

内閣参質一七一第一七一号
  平成二十一年五月二十九日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員加賀谷健君提出建設業退職金共済制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加賀谷健君提出建設業退職金共済制度に関する質問に対する答弁書

一について

 独立行政法人勤労者退職金共済機構(以下「機構」という。)は、中小企業退職金共済法(昭和三十四年法律第百六十号。以下「法」という。)第七十八条第一項の規定に基づいて作成した基本方針に沿って、業務上の余裕金を運用しており、御指摘の建設業退職金共済制度(法第二条第五項に規定する特定業種退職金共済契約に係る退職金共済制度のうち建設業に係るものをいう。以下同じ。)における給付経理の資産額は、適正なものであると考えている。

二及び三について

 平成二十年度の貸借対照表等の財務諸表については、いまだ機構から提出を受けていないが、少なくとも同年度の国際金融情勢等の影響にかんがみれば、お尋ねの資産及び利益剰余金はいずれも減少となるものと考えている。

四について

 御指摘の部会については、これまで平成二十年九月五日、同年十月二十一日及び平成二十一年三月二日に開催し、利益剰余金の在り方に関する検討を行っているところである。これまでの審議において、利益剰余金については、その原資が被共済者の退職金の支給のために事業主が納付した掛金、運用益等であることにかんがみると、本来被共済者に還元されるべき性格のものであるが、平成十九年度に損失を計上したこと、市場の低迷が長期化する可能性があること及び建設労働者の福祉の増進を図るため事業の安定的な運営が肝要であることにかんがみると、現時点においては、積極的に取り崩す状況にはないという共通認識が示されているところである。
 また、その結論を得る時期については、「独立行政法人整理合理化計画」(平成十九年十二月二十四日閣議決定)における措置期限が原則として平成二十二年度末とされていることにかんがみ、遅くともそれまでに措置できるよう、結論を出していただくこととなると考えている。

五について

 機構から聴取したところによると、御指摘の指導は被共済者からの相談等に基づき事実関係を確認した上で必要に応じて口頭により随時行われているものであることから、その合計件数をお示しすることは困難とのことである。

六について

 御指摘の報道がされたことも踏まえ、平成十年七月から、特殊法人勤労者退職金共済機構において、どの程度の元請事業主が下請事業主を選定するに当たり建設業退職金共済制度への加入を指導しているか、どの程度の発注者が下請事業主の当該制度への加入を指導するよう元請事業主に指導しているか、及びどの程度の下請事業主が元請事業主から共済証紙を受領しているかについて、全国調査を実施したものである。同年十二月に取りまとめられた調査結果によると、していると答えた者の割合はそれぞれ十・六パーセント、三十二・四パーセント及び三十三・九パーセントであった。
 機構から聴取したところによると、平成十六年に実施した同様の全国調査において、していると答えた者の割合はそれぞれ四十八・三パーセント、五十二・四パーセント及び五十八・六パーセントであったとのことであり、このような改善状況にかんがみれば、共済証紙の貼付状況についても改善されてきていると考えている。

七について

 機構から聴取したところによると、御指摘のシステムに要した初期費用は千七百三十二万五千円であり、そのランニングコストの契約額は、平成十六年度から平成十九年度までが年間二百六十八万九千六百八十円、平成二十年度が百三十三万四千五百五十円であり、当該システムは株式会社アイネスが納入したとのことである。

八について

 機構から聴取したところによると、前回の更新から三年を経過することとなった被共済者について、その住所を把握し、就労の現況等を確認した上で、必要に応じて共済手帳を更新し、又は退職金を請求するよう要請する手続(以下「調査」という。)を行っているところであり、平成十九年度においては、三万九千四十七件中、共済手帳の更新に至ったものが三千八百五十三件、退職金の支給に至ったものが二千五百七件あったとのことである。さらに、今年度以降も調査を継続して行うとともに、これまで対象とならなかった被共済者についても同様の調査を行うこととしているとのことである。
 また、調査の対象の抽出には被共済者管理システムを活用しているところであるが、被共済者の住所の把握等については個々の確認作業が必要となることから、調査には一定の時日を要するものと考えている。

九について

 お尋ねの人数は、平成二十年三月末時点において四十一万三千百六十三人である。

十について

 機構から聴取したところによると、平成十八年度及び平成十九年度に再要請を行った共済契約者のうち履行を確認することができたものの数は、それぞれ千百二十五件及び二百十六件とのことであり、再要請を行ってもなお共済契約者が履行しない場合には、共済契約を解除する旨を通告することとしているとのことである。
 また、御指摘の要請文に対して「履行の意思なし」と回答した共済契約者数は、平成十六年度が五千八百九十三件、平成十七年度が五百四十二件、平成十八年度が千八百九十七件、平成十九年度が千百四十六件とのことであり、「履行の意思なし」と回答した共済契約者に対しては、建設業退職金共済契約解除申請書を送付し、それを機構に提出するよう要請しているが、その結果、適正な履行に至る場合もあるとのことである。

十一について

 お尋ねの費用は八千六百六十九万円であるが、当該支出については、機構に設置された「建退共制度における掛金納付方法のあり方検討会」において、新たな掛金納付方式の導入に係る実務的な問題点の整理及びその解決策の検討を行うために必要なものであったと考えている。
 また、機構から聴取したところによると、新たな掛金納付方式の導入の前提となるICカードの普及状況、導入のための費用負担等にかんがみ、同検討会においては「時期尚早」であるとの意見があったものであり、共済証紙の貼付が適切に行われるよう、共済手帳及び共済証紙の受払簿を普及させるための共済契約者に対する指導等に取り組んでいるとのことである。

十二について

 お尋ねの差額は、平成二十年三月末において千二百五十八億円である。