質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質一七一第一一号
  平成二十一年一月三十日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員近藤正道君提出原子力施設の耐震安全審査及び耐震安全性再検討と「活断層等に関する安全審査の手引き」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員近藤正道君提出原子力施設の耐震安全審査及び耐震安全性再検討と「活断層等に関する安全審査の手引き」に関する質問に対する答弁書

一の1について

 東京電力株式会社の柏崎刈羽原子力発電所及び北陸電力株式会社の志賀原子力発電所の耐震設計上考慮すべき活断層については、原子炉設置許可及び原子炉設置変更許可(以下「原子炉設置許可等」という。)に係る耐震設計審査において、その時々の耐震設計審査指針等や地震学等に関する当時の最新の知見に基づき、専門家の意見を聴きながら評価を行ってきており、当時の審査に問題があったとは考えていない。

一の2について

 原子炉設置許可等に係る耐震設計審査においては、基準地震動を上回る地震動の原子炉施設周辺での生起を前提とする考え方は採っていない。なお、平成十八年の改訂後の発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(平成十八年九月十九日原子力安全委員会決定。以下「新耐震指針」という。)においては、基準地震動を上回る地震動が生起する可能性は否定しておらず、原子炉設置許可等に係る耐震設計審査において、許可申請者が基準地震動を上回る地震動が生起する可能性を適切に考慮して原子炉施設を設計する方針を有しているかどうかを確認することとしている。

二の1について

 柏崎刈羽原子力発電所の原子炉設置変更許可に係る耐震設計審査においては、平成十八年の改訂前の発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定)等に基づき、「日本の活断層―分布図と資料(活断層研究会編一九八〇)」等における海底活断層の認定基準等を踏まえ、同発電所の耐震設計上考慮すべき活断層の評価を行った結果、F―B断層については、五万年前以降の地層に変位が見られなかったことから、同発電所の耐震設計上考慮すべき活断層ではないと評価した。

二の2について

 新耐震指針等に照らした柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性の確認の一環としてのF―B断層の評価については、変動地形学的調査、地表地質調査、地球物理学的調査等の結果を総合的に検討して行った。

三の1及び2について

 発電用原子炉施設の耐震設計上考慮する活断層の認定については、御指摘の「最終間氷期の地層又は地形面に断層による変位・変形」を含め、新耐震指針等に基づき、変動地形学的調査、地表地質調査、地球物理学的調査等の結果を総合的に検討して行うこととしている。

四の1から6までについて

 新耐震指針等に照らした日本原燃株式会社の六ヶ所再処理施設の耐震安全性については、同社から提出された耐震安全性評価結果報告書等に基づき、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会での議論を踏まえつつ、原子力安全・保安院において厳正に確認を行っているところである。
 なお、原子力安全委員会耐震安全性評価特別委員会地質・地盤に関する安全審査の手引き検討委員会(以下「手引き検討委員会」という。)が、活断層等に関する安全審査の手引き(平成二十年六月二十日原子力安全委員会了承)を策定した際に取りまとめた「「活断層等に関する安全審査の手引き」策定に当たっての見解」(平成二十年六月十一日原子力安全委員会耐震安全性評価特別委員会地質・地盤に関する安全審査の手引き検討委員会)においては、「新耐震指針では、「地形学・地質学・地球物理学的調査等を総合した十分な調査を行うこと」とされている。しかし、これらの各手法で調査結果が異なる場合もあり、その場合はまずそれらの結果を相互比較して個々の結果の妥当性を検証し、最終的に総合的な評価判断が必要となる。すなわち、ある手法によって高い確度で認定された調査結果は尊重されるべきであり、他の手法による調査結果をもって直ちに否定するのではなく、総合的に検討することが重要である。」とされている。

五の1について

 下北半島北西部において海成段丘の隆起が認められることは承知しているが、電源開発株式会社(以下「電源開発」という。)の大間原子力発電所の原子炉設置許可に係る耐震設計審査において、同段丘の北側海域で電源開発が実施した海上音波探査の結果を政府として検討した結果、同段丘の隆起に対応する同発電所の耐震設計上考慮すべき活断層は認められなかった。

五の2について

 下北半島西岸において波食棚や波食窪が認められることは承知しているが、これらの西側海域で電源開発が実施した海上音波探査の結果を政府として検討した結果、これらに対応する大間原子力発電所の耐震設計上考慮すべき活断層は認められなかった。

五の3について

 電源開発においては、大間原子力発電所の原子炉設置許可の申請に当たり、新耐震指針等に基づき、同発電所を中心とする半径三十キロメートルの範囲の海域を含む十分な範囲の海域で必要な海上音波探査を実施しており、政府は、電源開発からの当該探査結果の提出を受けて、同発電所の耐震設計審査を行った。

五の4について

 手引き検討委員会の第八回会合及び第十回会合において、中田手引き検討委員会副主査から、下北半島北西部における海成段丘の隆起並びに同半島西岸における波食棚及び波食窪の形成に対応した活断層の存在の可能性について指摘がなされたが、五の1について及び五の2についてで述べたとおり、電源開発が実施した海上音波探査の結果を政府として検討した結果、大間原子力発電所の耐震設計上考慮すべき活断層は認められなかったことから、追加の審議は必要ないと考えている。なお、政府としては、今後新たな知見が得られた場合には、必要に応じ同発電所の耐震安全性への影響について検討を行うこととしている。