質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一八二号

同一価値労働同一報酬に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年五月二十八日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   同一価値労働同一報酬に関する再質問主意書

 前回提出した「同一価値労働同一報酬に関する質問主意書」(第一七一回国会質問第五八号)の答弁書(内閣参質一七一第五八号)には、不十分と思われる点があるため、再度質問する。

一 答弁書の「一について」において、男女間の賃金格差についての政府見解とその対応に関する質問に対して、格差の縮小の必要性は認めているものの、「具体的には、昇進等の機会の均等が十分に確保されていないこと等による職階の格差や出産等により離職する女性が依然として多いこと等により生じる勤続年数の格差といったことが男女間賃金格差の要因としてある」という見解を示している。しかし、この見解では、同学歴、同産業の初任給での賃金格差は説明がつかない。「平成一九年賃金構造基本統計調査」によると、大卒男子の初任給の平均は一九八八〇〇円であるのに対し大卒女子のそれは一九一四〇〇円であり、高卒男子の初任給平均は一五八八〇〇円であるのに対し、高卒女子のそれは一五〇八〇〇円である。これを産業別に見ても大卒・高卒ともに一産業を除く全産業で男子の初任給が女子の初任給を上回っている。このような格差をいかに説明するのか、見解を述べられたい。

二 また、答弁書の「一について」では、男女間の賃金格差に関する問題への対応として、男女雇用機会均等法に規定された義務を「適切に履行するよう、事業主に対する指導等を行う」としている。この指導には、勧告も含まれているのかを問う。また、指導や勧告の件数、及び指導の結果としてどのような効果が確認されたのか、政府としていかなる方法で結果や効果を確認しているのかを明示されたい。

三 答弁書の「一について」にある「支援する施策」の内容を示されたい。また、現在実施されている「支援する施策」の開始年次、数値目標および目標達成年次を含めた具体例、その施策によって現時点でどのような効果がもたらされたのかについても示されたい。

四 答弁書の「二について」及び「三について」では、ILOの条約勧告適用専門家委員会の意見についての対応を問う質問に対して、「ILOに対する次回の政府報告において、我が国の立場を明らかにする予定である」と回答している。しかし、男女間の賃金格差の問題、特に労働基準法第四条が同一価値労働同一賃金を反映しているかどうかについては、ILOから再三にわたり、指摘を受けている問題である。その理由としては、これまでILOの理解を得るだけの説明や回答がなされていない、あるいは政府の説明や回答を覆す事実が国内に存在しているとILOが認識していることが考えられる。もし、今回の回答が準備中であるならば、この問題に関するこれまでの意見や勧告に対して、政府はいかなる説明や回答を行ってきたのかを示されたい。また、これまでの説明や回答において、どのような点でILOの理解が得られなかったと考えているのか、見解を問う。

五 答弁書の「二について」及び「三について」で述べているILOへの回答予定時期を示されたい。

六 答弁書の「四及び五について」では、性に中立的な客観的職務評価に基づく賃金決定についての政府見解を問うた質問に対して、性に中立的な客観的職務評価の有効性を認めている一方で、「具体的な賃金制度の導入については、個別の企業における労使の議論を踏まえてなされるべき」というきわめて消極的な見解を示している。確かに、賃金制度の導入について、労働関連諸法令が定める基準に従って各企業が雇用契約において定めるべきものである。しかし、例えば、性に中立的な客観的職務評価を採用しようとする企業に対しての支援や情報提供といった推進策を展開することは、各企業の雇用契約における自主性・独立性を侵害するものではない。政府は、性に中立的な客観的職務評価を採用しようとする企業に対しても、政府として支援することはできないと考えているのか、見解を明らかにされたい。

七 右記の質問六に関連して、具体的賃金制度や雇用契約に関して定めた労働関係諸法令や男女共同参画に関する諸法令に基づいたガイドライン等は存在するのか。ガイドラインが存在する場合、性に中立的な客観的職務評価についての記載があるのか、示されたい。

八 また、答弁書の「四及び五について」では、性に中立的な客観的職務評価に関して、個別企業の事例を収集していると述べている。この事例収集の方法、年度ごとの予算、情報をどのような形でとりまとめているのか、今後の男女間賃金格差是正のための政策にどのように活かしていくのかを明示されたい。

  右質問する。