質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一六三号

発達障害の子どもたちへの投薬に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年五月十四日

加賀谷 健   


       参議院議長 江田 五月 殿



   発達障害の子どもたちへの投薬に関する質問主意書

 平成十七年四月一日施行の「発達障害者支援法」が三年間の見直し期間を経過した。この法律は、発達障害を早期に発見し、学校教育における発達障害児への支援等により、その自立及び社会参加と福祉の増進を目的としているものと理解している。しかし一方で、発達障害児童が「早期に発見」されることにより、近年その危険性が度々指摘されている精神薬の子どもへの投与が進むのではないかとの危惧がある。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 発達障害者支援法により、発達障害の疑いのある幼児や児童に対しては、自治体が発達障害者支援センター等に紹介し、必要に応じ医療機関などを紹介するものと理解している。そこで、同法施行後から直近まで年度ごとに、支援センター等での取り扱い件数、このうち医療機関を紹介した件数、投薬を受けている件数を、就学前、小学生、中学生、高校生以上に分けて示されたい。また、この件数については、全国の件数とともに、都道府県ごとの件数についても示されたい。

二 発達障害者支援センター等での取り扱い件数については、ホームページなどを含め、国民にどのような形で公表されているのか。公表されているとすれば、いつ、どのような方法で公表されているのか、また、公表されていない場合はその理由を回答されたい。

三 ADHD(注意欠陥・多動性障害)など発達障害の原因は医学的に解明されているのか。また、リタリンやコンサータ(成分名はいずれも「塩酸メチルフェニデート」)など精神薬が対症療法ではなく、障害を根本的に治療することに効果があると医学的、科学的に証明されているのか。解明、証明されているとすればその論拠をそれぞれ示されたい。

四 米国で二〇〇四年十二月に成立した「Public Law 108-446」は障害児教育に関する法律の改正法で、同法第六百十二条第二十五号には「教育機関による子どもへの強制的な薬物治療の禁止」を盛り込んでいる。これは「コロンバイン高校銃乱射事件」など、精神薬を服用していた子どもによる事件が続いたことや、米国食品医薬品局(FDA)の薬物安全リスク管理諮問委員会が「二〇〇三年までの五年間に塩酸メチルフェニデートの服用者二十五名の死亡例があった」と警告したことが背景にあると聞いている。ところで、「リタリン」の医薬品添付文書には、「【原則禁忌(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)】」の対象として「六歳未満の幼児」と明記されている。また、「7.小児等への投与」では「六歳未満の幼児には投与しないこと〔安全性が確立していない。〕小児に長期投与した場合、体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。」とされている。しかし、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、そのホームページでADHDについて「原因は何らかの脳機能障害によるものと考えられています。このような症状の軽減には、リタリン(中枢神経刺激剤)等の薬物が有効なことが少なくありません。また、適切な支援があれば、年齢が上がるに従い多動は落ち着き、衝動性が目立たなくなることが少なくありません。」と記述するなど、その使用を奨励している。発達障害支援などわが国の特別支援教育の指導的立場にある同研究所が、国内外においてその危険性が多々指摘されているリタリンの使用を推奨していることは、子どもの命と健康を守る立場から問題が大きいと考えるが、政府の見解を示されたい。また、前述のホームページの記述を修正するべきと考えるが、政府の方針を示されたい。

五 政府は、文部科学省が資金提供している浜松医科大学・大阪大学・金沢大学による連携融合事業「子どものこころの発達研究センター」と唯一連携している製薬会社「(株)ヤンセンファーマ」(ADHD治療薬「コンサータ」の販売元)の親会社「ジョンソン・エンド・ジョンソン社」(米国。「コンサータ」の製造・販売元)が、世界的な児童精神科医に対する不適切な研究資金の授与及びコンサータなどの精神薬の治験結果などの操作疑惑によって摘発・捜査されている事実を把握しているのか。また、今後も、このような疑惑のある製薬会社と連携事業を行っていくのか。

六 イーライリリー社(米国。ADHD治療薬「ストラテラ」の製造・販売元)は、精神薬の違法な販売促進によって民事・刑事訴訟を受け、今年一月その不正行為を認めた結果、十四億ドルの和解金を原告や米国の政府機関に支払うこととなった。厚生労働省は三月中旬まで質問主意書の指摘があるまで同社の違法行為を把握していなかったとはいえ、同社の日本支社が、世界自閉症啓発デー・日本実行委員会(発達障害啓発週間も支援している)の唯一の協賛企業になっていたことに問題はなかったのか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。