質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三八号

内閣参質一六九第一三八号
  平成二十年六月十三日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員近藤正道君提出カーボン・ナノチューブへの安全対策や予防策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員近藤正道君提出カーボン・ナノチューブへの安全対策や予防策に関する質問に対する答弁書

一について

 経済産業省が主要な製造企業に対して行ったヒアリング及び独立行政法人労働安全衛生総合研究所と独立行政法人産業技術総合研究所が合同で行ったアンケート調査によると、カーボン・ナノチューブの製造に当たっては、製造工場建物の外部に漏れないような除去フィルタの設置、労働者へのばく露を防止するための呼吸用保護具、保護手袋及び作業衣の着用等の対策が講じられており、また、当該ヒアリングによると、カーボン・ナノチューブの廃棄に当たっては、焼却処分されているとのことである。また、その使用の現状については、当該ヒアリング及び厚生労働省において平成十九年度に調査会社に委託して行った「ナノマテリアル安全対策調査」によると、その大半が樹脂等に混練された上でリチウムイオン電池の電極添加剤や半導体トレイ等に使用されているとのことである。

二について

 カーボン・ナノチューブについては、一定の条件の下でマウス等に影響を与えることを示唆する報告がなされているものの、ヒトに対する有害性は明らかになっておらず、我が国を含めた各国の研究機関等においてその解明に取り組んでいるところである。今後、更なる知見の集積が必要であるが、カーボン・ナノチューブを含むいわゆるナノマテリアルに関する現時点の対策としては、厚生労働省において、「ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」(平成二十年二月七日付け基発第〇二〇七〇〇三号厚生労働省労働基準局長通知。以下「局長通知」という。)を発出し、関係事業者団体に対して、会員その他関係事業場にばく露防止対策について広く情報提供するよう要請するとともに、「ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」(平成二十年二月七日付け基発第〇二〇七〇〇四号厚生労働省労働基準局長通知)を発出し、都道府県労働局長に対して、関係事業場においてばく露防止対策が広く周知されるよう徹底を図ることを指示しているところである。
 また、経済産業省において、平成十八年度に調査会社に委託して「ナノテクノロジーの研究・製造現場における適切な管理手法に関する調査研究」を行い、「研究・製造現場におけるナノテクノロジーの適切な管理手法のガイドライン」を作成し、これをナノテクノロジー関連団体の会員企業に対して周知するとともに、ガイドラインに沿った自主的な取組を促しているところである。

三について

 厚生労働省としては、局長通知において、ナノマテリアル製造・取扱い作業現場に従事する労働者へのばく露防止対策として、①製造装置は原則として密閉構造とし、これが困難な場合においては局所排気装置を設置すること、②製造工程以外の工程においても密閉化・無人化・自動化によって労働者がばく露しないようにすることが望ましいが、これが困難な場合には局所排気装置を設置すること、③ナノマテリアルの取扱いに関する作業規程を作成すること、④ナノマテリアルの吸引を防止するため、適切な呼吸用保護具を必要な数量備え、有効かつ清潔に保持すること等を示しているところである。なお、厚生労働省としては、本年三月に「ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に関する検討会」を設置し、ナノマテリアルに係る労働者のばく露防止対策の更なる検討を行っているところである。また、同月に「ナノマテリアルの安全対策に関する検討会」を設置し、ナノマテリアルの安全性の評価手法、安全対策の在り方等について検討を行うとともに、必要に応じ、両検討会を合同で開催しているところである。