質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇三号

検察官の行う「証人テスト」に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十二月二十七日

峰崎 直樹   


       参議院議長 江田 五月 殿



   検察官の行う「証人テスト」に関する再質問主意書

 先般私が提出した「検察官の行う『証人テスト』に関する質問主意書」(第一六八回国会質問第七六号)(以下「前回質問主意書」という。)に対して、本年十二月十四日付けで答弁書(以下「前回答弁書」という。)が受領されたところであるが、「いわゆる証人テストの回数や所要時間については、事案によって異なり、一概に答弁することは困難である」などとして、なお政府側の見解に不明な点がある。
 そこで、以下質問する。

一 証人テストの回数と内容

 前回質問主意書においては、おびただしい回数にわたる証人テストが、証人が体験した事実を証言することを妨げ、偽証につながる危険性について指摘したところであるが、前回答弁書では「一般に、多数回にわたりいわゆる証人テストが行われたことのみをもって、その後になされた証言の証拠能力が否定されるわけではないと思われる」として、おびただしい回数にわたる証人テストが偽証につながる危険性についての認識がなされていない。私は、おびただしい回数の実例として、担保提供名下詐欺事件における二十七回の証人テストを挙げたところであるが、前回答弁書ではこの実例に言及することなく、これを含んで一般に多数回の証人テストとして答弁している。担保提供名下詐欺事件における二十七回の証人テストを、おびただしいととるのか、あるいは単に多数回と考えるのかは、見解の相違があるが、近時においておよそ国民常識からは想像さえできない異常回数に上る証人テストが報道されている。
1 本年十二月十九日付け東京新聞朝刊二十四面並びに二十五面において、「証人テストが冤罪を呼ぶ?裁判員制、迅速化で死角拡大、検事と練習五十回、丸暗記証言」と題する特集記事(以下「特集記事」という。)が掲載されている。特集記事によれば、平成十四年のキャッツ粉飾決算事件(以下「キャッツ事件」という。)において、被告人の重要関係者二名が法廷証言の前にそれぞれ検察官と四十回から五十回に及ぶ証人テストを行い、検察官と証言を作り込んで丸暗記して証言したとされている。これについては、私が公判記録を取り寄せて確認できた事実と整合するが、これは事実か明らかにされたい。
2 特集記事においては、証人テストを受けたキャッツ事件重要証人自身が、控訴審において、「事実の捏造と言われても仕方ない部分もあったと思う」と証言して、一審での偽証を認めている。この一審証言並びに控訴審証言については、私が公判記録を取り寄せて確認できた事実と整合する。かかる中、キャッツ事件重要証人の一審証言は、なお、証拠能力があると考えているか、政府の認識を示されたい。
3 特集記事においては、キャッツ事件重要証人自身が、キャッツ事件証人テストについて一審で十五回と証言したものの、それが検察官からの偽証教唆による嘘であったことを、控訴審で再証言したとしている。この件に関連して、キャッツ事件の被告人が最近上梓した「公認会計士VS特捜検察」において、検察官は一審の証言時にキャッツ事件重要証人と昼食をともにしていたものの、「お昼は一緒にいなかったことにしてほしい」などと持ちかけ、そのように偽証させたことが、当人の控訴審証言で明らかとなったことが記載されている。これらの一審証言並びに控訴審証言については、私が公判記録を取り寄せて確認できた事実と整合するが、これは事実か明らかにされたい。
4 特集記事においては、検察官による事実の捏造が、「第一段階は結論の決めつけ。『これは粉飾なんだ』と検事が決めつけ、有無を言わさない。第二段階はストーリーの作成。第一段階の結論に都合の良い部分だけを拾い出して作り上げる。第三段階では、ストーリーに合わせて日付を特定、登場人物を決めて、会議での発言を作っていく。これを丸暗記した。」というキャッツ事件重要証人の証言により明らかにされたとしている。この控訴審証言については、私が公判記録を取り寄せて確認できた事実と整合し、検察官はこの証言について何らの反対尋問を行っていないことから、捏造を認めたものと解してよいか。また、仮に、捏造を認めたものでないのであれば、反対尋問を行わなかった理由は何か、それぞれ明らかにされたい。

二 証人テストの範囲

 前回答弁書においては「検察当局においては、証人が体験した事実、記憶状況、表現能力等について十分確認するなどして、いわゆる証人テストを適切に実施しているものと承知している」と答弁しているが、前記のような証人テストが行われているのであれば、それは「証人が体験した事実、記憶状況、表現能力等についての確認」などというものとは程遠く、事実の捏造とその暗記並びに偽証教唆にほかならないと考える。
1 前記キャッツ事件において重要証人に対して行われた四十回から五十回にわたる証人テストは、刑事訴訟規則第百九十一条の三により規定される証人テストの範囲を逸脱しているのではないかと考えるが、政府の認識を示されたい。仮に、キャッツ粉飾事件において重要証人に対して行われた四十回から五十回にわたる証人テストが、刑事訴訟規則第百九十一条の三により規定される証人テストの範囲を逸脱していないというのであれば、これだけおびただしい回数の証人テストが必要であった理由を明らかにされたい。
2 一般論として、検察官による事実の捏造とその暗記並びに偽証教唆がなされ、法廷証言が検察官の作成したストーリーをそのまま暗記して証言しているにすぎない場合、「証言の信用性に問題があると疑われる場合には、証人尋問において、その経緯等が吟味される」として反対尋問を行ってみても、その意味は全くなくなってしまうものと考えられる。証言は証人の口を借りてはいるものの、その内容は検察官が作成して暗記させたものにすぎないから、このような証人テストが行われるのであれば、それは被告人の反対尋問権を奪い去っていることにならないかと考えるが、政府の認識を示されたい。

  右質問する。