質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第七一号

内閣参質一六六第七一号
  平成十九年七月十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員岡崎トミ子君提出強制連行朝鮮人の厚生年金に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員岡崎トミ子君提出強制連行朝鮮人の厚生年金に関する質問に対する答弁書

一について

 平成十七年十一月二十八日から二十九日まで行われた朝鮮半島出身旧軍人・軍属及び旧民間徴用者等の遺骨の問題に関する第三回日韓協議の際に、大韓民国(以下「韓国」という。)側より、現在韓国籍を有する者であって終戦前に我が国で雇用されていた者に係る厚生年金保険被保険者名簿の提供が要請され、これに対し、日本側より、引き続き現実的にどのような対応が可能か検討していく旨回答した。

二について

 平成十九年七月三日、韓国の国会において「太平洋戦争前後国外強制動員犠牲者等支援に関する法律(仮訳)」が議決されたと承知している。同法における我が国の厚生年金保険の扱いについては、韓国国内法の解釈に係ることであり、政府としてお答えする立場にない。

三から五までについて

 社会保険庁において、昭和二十九年四月一日以前に厚生年金保険の被保険者の資格を取得して同日以前に資格を喪失し、昭和三十四年三月三十一日までの間に再取得していない者の被保険者台帳(以下「旧台帳」という。)については、マイクロフィルム化し管理しているところであるが、旧台帳の記録を含む厚生年金保険の被保険者記録は、当該被保険者がいわゆる朝鮮人徴用者であるか否かの情報を保有していないため、お尋ねの点についてお答えすることは困難である。

六の1について

 日韓間では、財産及び請求権の問題、経済協力等について議論した結果、千九百六十五年の国交正常化に際して、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和四十年条約第二十七号)を締結し、同協定第二条1において「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、(中略)完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」しているが、その議論の詳細については、今後の日朝間の協議に与える影響等にかんがみ、お答えすることは差し控えたい。

六の2について

 厚生年金保険制度においては、制度発足以来、いわゆる朝鮮人徴用者であるか否かにかかわらず、基本的に適用事業所で使用される者は厚生年金保険の被保険者となるものであり、また、三から五までについてで述べたとおり、厚生年金保険の被保険者記録は、当該被保険者がいわゆる朝鮮人徴用者であるか否かの情報を保有していないため、お尋ねの点についてお答えすることは困難である。
 また、厚生年金保険制度においては、日本国籍の有無にかかわらず、基本的に適用事業所で使用される者は厚生年金保険の被保険者となるものである。

七の1について

 お尋ねの点については、日韓両国政府間で協議されているところであり、引き続き検討してまいりたい。

七の2及び3について

 政府としては、平成十九年七月五日に年金業務刷新に関する政府・与党連絡協議会において取りまとめた「年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立について」に基づき、旧台帳の記録を社会保険オンラインシステムに収録し、国民年金又は厚生年金保険の受給権者又は被保険者(以下「受給権者等」という。)に係る記録との名寄せを行い、その結果、基礎年金番号へ統合することができると思われる受給権者等に対しては、平成二十年五月までを目途にその旨と加入履歴をお知らせすることとしている。
 なお、韓国政府の要請については、政府として引き続き検討していく考えである。

八について

 死者に関する情報については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)の適用対象外とされているものではあるが、同法の趣旨にかんがみ、その利用目的を超えた取扱いや漏えい等の不適切な取扱いを避け、適切な管理を行うことが必要であることから、社会保険庁においては、「個人情報保護に関する周知徹底について」(平成十七年四月二十一日付け社会保険庁運営部企画課長事務連絡)により、死者の情報を提供できる範囲を、死亡した者の配偶者、子及び民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十二条に規定する相続財産の管理人等の明らかに正当な権利を有する者又はこれらの者の同意を得た者としているところであり、この要件に該当する者であれば情報の提供は可能である。したがって、御指摘のような通達を行うことは考えていない。