質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第三一号

内閣参質一六六第三一号
  平成十九年五月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員荒井広幸君提出ETCシステムにおける新たな利用者負担の解消とORSEの廃止等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員荒井広幸君提出ETCシステムにおける新たな利用者負担の解消とORSEの廃止等に関する質問に対する答弁書

一について

 高速自動車国道の料金引下げの対象については、「道路関係四公団民営化の基本的枠組みについて」(平成十五年十二月二十二日政府・与党申し合わせ)に基づき、国土交通省において、学識経験者や国民一般からの意見を踏まえて検討した結果、ETCシステム(有料道路自動料金収受システムを使用する料金徴収事務の取扱いに関する省令(平成十一年建設省令第三十八号。以下「ETC省令」という。)第一条に規定する「ETCシステム」をいう。以下同じ。)の活用により時間帯割引等の多様な料金割引が可能となることや料金所での渋滞減少等の効果があること等から、これをETC通行車(道路整備特別措置法施行規則(昭和三十一年建設省令第十八号。以下「特措法施行規則」という。)第十三条第二項第三号イに規定する「ETC通行車」をいう。以下同じ。)とすることが妥当であるとの結論を得た。
 その結論を踏まえ日本道路公団は、国土交通大臣に対し料金の変更の認可の申請を行い、平成十六年九月二十四日に国土交通大臣が日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律(平成十六年法律第百一号)による改正前の道路整備特別措置法(昭和三十一年法律第七号)第二条の四の規定による認可を行ったものである。

二、三及び四について

 我が国のETCの車載器の平均的な販売価格は、財団法人道路システム高度化推進機構(以下「ORSE」という。)の調査によれば、平成十九年三月末時点で、約一万三千円であると承知している。お尋ねの「ETC車載器にかかわったメーカーの売上額の累積額」については、承知していない。
 諸外国における道路の自動料金収受システムの概要、車載器一台当たりの利用者の購入額及び通行料金の割引制度については、ORSEの調査によれば、例えばシンガポールにおいては、一定の区域内に進入する自動車について車載器の取付けが義務化され、自動車が当該区域内に進入する際に車載器と路側設備との無線通信により課金しており、車載器一台当たりの価格は、平成十九年一月時点で、約百五十シンガポールドル(これを国際通貨基金の国際財政統計に基づく同月の円シンガポールドル平均レートを使用して円に換算すると、約一万二千円である。)であり、通行料金は一定の区域内の自動車の平均走行速度が高い場合には、料金が引き下げられ無料となる場合もあると承知している。
 イタリアの高速道路を管理する会社であるアウトストラーデの管理している道路においては、料金所において車載器と路側設備との無線通信により距離に応じた料金を課金しており、車載器一台当たりの価格は、平成十九年一月時点では、約五十ユーロ(これを国際通貨基金の国際財政統計に基づく同月の円ユーロ平均レートを使用して円に換算すると、約七千八百円である。)であり、料金割引は実施していないと承知している。
 カナダのトロントにおいては、有料道路において道路管理者が道路利用者に貸与する車載器と路側設備との無線通信により距離に応じた料金を課金しており、車載器一台当たりの一年間の貸与料は、平成十九年一月時点で、約二十カナダドル(これを国際通貨基金の国際財政統計に基づく同月の円カナダドル平均レートを使用して円に換算すると、約二千円である。)であると承知している。また、夜間割引、週末割引等の約五パーセントの料金割引を実施しており、これらは車載器を付けていない自動車についても適用されるが、当該自動車については、一回の走行当たり、小型車で三・五カナダドル、大型車で五十カナダドルの別途料金が加算されると承知している。

五について

 ETCシステムの導入に当たって、クレジットカードを用いて料金を徴収する方式は、御指摘のETCパーソナルカードを用いる方式のようにあらかじめ利用者から保証額を利用実績に応じて徴収する方式と比べて、利用者の利便性や導入等に要する経費等の点で合理的であると考えられていたため、ETCパーソナルカードを用いる方式よりもクレジットカードを用いる方式が先行して導入されたものである。

六について

 お尋ねの「金融機関がETCの利用・普及の拡大で得ている収入の年間額」及び「信販会社等カード発行事業体が得る収入」については、承知していない。
 クレジットカードを用いて有料道路の料金を支払う場合、クレジットカードの決済口座のある金融機関及びクレジットカードの発行事業主体は、クレジットカードの利用者に対し直接手数料の負担を求めることは、通常ないものと承知している。また、クレジットカードの年会費等については、クレジットカードの発行事業主体によって異なるものであるため、クレジットカードの利用者が負担するかどうかについては、一概に言えないものと考えている。そのため、クレジットカードと、年会費が千二百円である御指摘のETCパーソナルカードとで、どちらが利用者にとっての負担が少なく有利となるかについては、一概に言えないものと考えている。

七及び二十八について

 ORSEが行う情報安全確保規格(ETC省令第四条第一項第一号に規定する「情報安全確保規格」をいう。以下同じ。)の提供の代行及び識別処理情報(同項第二号に規定する「識別処理情報」をいう。以下同じ。)の付与の業務については、これらを確実かつ効率的に実施するとともに複数の有料道路の利用者の利便に資するよう一元的な実施を確保する必要があり、これを各高速道路株式会社がそれぞれ行うこととすると、一元的な実施を図ることが困難となり、結果として複数の有料道路の利用者の利便を害する結果にもつながるため不適切であると考えている。
 したがって、今後もORSEにおいて引き続き当該業務を行うことが適切であると考える。

八について

 御指摘の省令については、平成十一年八月二日に制定し、ETCシステムに係る情報安全確保規格の提供及び識別処理情報の付与の業務について、確実性及び効率性並びに複数の有料道路の利用者の利便に資するよう一元的な実施を確保する観点から、同令第四条第一項第三号の規定により、情報の安全確保の確実かつ効率的な実施を目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の財団法人に、情報安全確保規格の提供を代行すること及び識別処理情報の付与の業務を一元的に行わせることとしているものである。
 ORSEについては、情報安全確保規格の提供の代行及び識別処理情報の付与の業務を専門的及び一元的に実施すること等を目的として設立された財団法人であって、その目的を適正に遂行する能力を有していると考えていることから、ORSEが同令に規定する財団法人に該当するものと考えている。

九について

 ORSEは、情報安全確保規格の提供の代行及び識別処理情報を付与する業務を行う必要があり、情報の安全確保の観点から、国際標準化機構(ISO/IEC)の定める規格二七〇〇一に基づく情報セキュリティマネジメントシステム適合性評価制度の認証を取得している。
 御指摘の「国際標準規格(ISO一五四〇八)」は情報技術に関連した製品及びシステムが情報の安全確保の観点から適切に設計され、それが実装されたかを評価するためのものであり、ETC車載器やETCカード等を製品化するに当たっての評価基準であって、ORSEはそれらの製品化は行っていないため本規格に基づく評価及び認証の取得を行っていない。

十について

 ETCシステムにおいては、自動車の種類に応じて異なる料金を確実に徴収する必要があることから、仮に御指摘の「無記名カード」を用いて料金を徴収する方式にしたとしても、自動車の情報について不正記録防止等の措置を講じた上で、識別処理情報として車載器ごとに付与する必要がある。
 識別処理情報の付与については、複数の有料道路の利用者の利便に資するとともに、情報の安全確保や関連する民間事業者に対する中立性及び公正性の確保等の観点から、公益を目的として設立された財団法人に一元的にこれを行わせることが必要であると考えている。

十一について

 ORSEから聞いたところ、車SAM鍵情報(車載器に付与される識別処理情報をいう。以下同じ。)については、その使用料は、平成十一年度から平成十六年度までは一件当たり百五円であり、平成十七年度は九十四・五円であるとのことである。年度別の使用料の収入実績は、平成十一年度が百五十二万八千円、平成十二年度が千四百十二万八千円、平成十三年度が五千六百三十七万三千円、平成十四年度が九千二十七万九千円、平成十五年度が二億八百四十七万八千円、平成十六年度が五億四千九百八十五万三千円、平成十七年度が四億四千百七十三万四千円であるとのことである。
 また、ETCカード用鍵情報(ETCカードに付与される識別処理情報をいう。以下同じ。)については、その使用料は、平成十一年度から平成十六年度までは一件当たり百五円であり、平成十七年度は九十四・五円であるとのことである。年度別の使用料の収入実績は、平成十一年度が七百万六千円、平成十二年度が六千七百十五万六千円、平成十三年度が一億四千二百二十七万二千円、平成十四年度が一億四千五百二十万円、平成十五年度が二億七千五百六万円、平成十六年度が五億七千三百九十四万円、平成十七年度が八億三千六百十五万八千円であるとのことである。
 車SAM鍵情報の使用料とETCカード用鍵情報の使用料の収入実績の合計額は、平成十一年度が八百五十三万四千円、平成十二年度が八千百二十八万四千円、平成十三年度が一億九千八百六十四万五千円、平成十四年度が二億三千五百四十七万九千円、平成十五年度が四億八千三百五十三万八千円、平成十六年度が十一億二千三百七十九万三千円、平成十七年度が十二億七千七百八十九万二千円であるとのことである。

十二について

 識別処理情報の価格は、その管理及び提供に要する費用を基本として、ETCシステムの普及促進を図る観点も踏まえ、ORSEにおいて決定しているものと承知している。

十三について

 ORSEにおいては、セットアップ情報の手数料については一台当たり五百二十五円を徴収していたが、ETCシステムの普及促進のため、平成十六年十月から百五円、同年十一月からは五百二十五円の割引を実施していると承知している。

十四について

 ORSEでは、平成十七年度において有料道路事業者より路側鍵情報(路側設備に付与される識別処理情報をいう。以下同じ。)の使用料として合計で一億八千二百三十七万六千円を徴収しているものと承知している。

十五について

 スマートインターチェンジ(地方公共団体が主体となって発意し、高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第十一条の二第一項の規定に基づき連結許可を受けた同法第十一条第一号の施設で、特措法施行規則第十三条第二項第三号のETC専用施設が設置され、ETC通行車のみが通行可能なインターチェンジ。以下「スマートIC」という。)の社会実験のためにORSEに対し支出した国費は、検討業務の委託費として、平成十六年度については五千四百七十二万六千円、平成十七年度については六千六百四万五千円である。
 スマートICの社会実験を行うに当たり、路側鍵情報の使用料として国土交通省からORSEに対し、国費は支出していない。

十六について

 ORSEが、車SAM鍵情報の使用料、ETCカード用鍵情報の使用料、セットアップ情報の手数料及び路側鍵情報の使用料の他に徴収している手数料としては、相互接続性試験料、確認番号付与料及び型式登録料があると聞いている。
 相互接続性試験料については、平成十七年度までで百三十三回徴収しており、一件当たり一日につき十五万七千五百円、収入総額は二千九十四万七千五百円であると聞いている。
 確認番号付与料については、平成十七年度までで百機種分徴収しており、一機種当たり一万五百円、収入総額は百五万円であると聞いている。
 型式登録料については、平成十七年度までで百七十九回徴収しており、一件当たり三万千五百円、収入総額は五百六十三万八千五百円であると聞いている。

十七について

 御指摘の保証金は、ORSEがセットアップ事業者との間の契約に基づき、貸与した機器が破損した場合の損害金等の債務の担保としてORSEが預るものであり、セットアップ事業者の店舗の数に応じて金額を定めているものと承知している。
 保証金収入については、収支計算書の「受入保証金収入」として計上し、ORSEがセットアップ事業者に事業年度内に返却したもの以外については「受入保証金引当預金支出」として計上している。
 このほか、セットアップ事業者に対し、セットアップ事業を実施するに当たって必要な業務用書類一式やセットアップの業務を実施する店舗の登録に係る手続費用、ORSEと通信回線で接続を希望する場合の貸与機器使用料等の負担を求めていると聞いている。

十八について

 平成十七年度については、ETCシステムの各種普及促進策の実施等により、ETCシステムが急速に普及したこと等により、個々の予算科目について予算と決算との間に乖離が生じたものであると承知しており、当該年度のORSEの全体の収支をみれば、健全な財政運営を行っていると考えている。

十九について

 国土交通省、高速道路株式会社、コンサルタント、車載器メーカー等が、ETCシステムの普及促進やシステムの高度化、高速道路料金割引の効果の調査、スマートⅠCの社会実験に係る調査、セットアップデータの取りまとめの業務等をORSEに発注しているものと承知している。国土交通省が平成十八年度にORSEに発注した業務としては、ETCシステムの高度化業務及びセットアップデータの取りまとめ業務がそれぞれ一件あり、いずれも随意契約であった。

二十について

 ORSEについては、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成八年九月二十日閣議決定。以下「指導監督基準」という。)及び「インターネットによる公益法人のディスクロージャーについて」(平成十三年八月二十八日公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申し合わせ)に基づき、適切に情報開示をしているところであるが、個別の手数料については、これらにおいて情報公開の対象になっていないため公表していないと承知している。

二十一について

 諸外国において、識別処理情報を付与している事業体の事例については、把握していない。

二十二及び二十三について

 ORSEは、寄附行為の定めるところにより、ETCシステムに関する情報安全確保規格に関する業務、ETCシステムに関する識別処理情報の付与に関する業務並びにETCシステムの技術の高度化に関する調査研究及び開発に関する業務等を適切に行っており、資産額や正味財産の増加はETCシステムの普及に伴う事業規模拡大とそれに必要な投資等によるものであり妥当なものであると考えている。

二十四及び二十五について

 ORSEの役員の選任については、寄附行為第十七条第一項等の規定により、評議員会において適切に行われているものと承知しており、また、国土交通省としても指導監督基準に基づき適正に役員の選任が行われるよう指導監督を行っているところである。
 また、各省庁出身者の役員の人数は、平成十一年度から平成十八年度までについては、ほぼ同数で推移している。
 ORSEの役員給与規程については、役員の役職ごとに給与の額が定まっていることから、指導監督基準に基づき公益法人が一般の閲覧に供することとされている役員名簿と照合することにより、その給与を得る個人を識別し得ることとなるが、もとより公益法人の個人別の役員報酬額は個人に関する情報であるため、答弁は差し控えたい。

二十六について

 財団法人道路新産業開発機構が主催する「国土交通省道路事業予算説明会」は、同法人の寄附行為第四条第五号の事業の一環として行っており、その事務費用については同法人が負担しているところであり、平成十八年度の実績としては約三十二万円であると承知している。
 同説明会において国土交通省の担当者が説明を行ったことについては、同法人からの依頼に基づき、道路に関する事業や施策についての広報の一環として実施したものである。

二十七について

 公益法人制度改革の趣旨は、従来の民法に基づく主務官庁制による包括的な指導監督を廃止し、国にあっては内閣総理大臣が法人の公益性を統一的に認定することとし、また、当該認定は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第五条各号において定められた明確な基準に従い、有識者からなる合議制の機関の意見に基づいてなされることとしたものである。このように主務官庁制を廃止した改革の趣旨から、法人が各府省から人員を受け入れていることで、当該法人に対する公益認定の判断が左右されることはない。
 政府調達に関しては、昨年二月に「公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議」が設置され、公益法人等との随意契約についても、各府省において一般競争入札等の方式に改めていくなどの見直しを進めているところである。
 また、公益法人への国家公務員の再就職に関しては、第百六十六回国会に提出した「国家公務員法等の一部を改正する法律案」においては、各府省等職員が職員又は職員であった者について、営利企業及び非営利法人に対し再就職のあっせんを行うことを禁止し、官民人材交流センター(以下「センター」という。)に一元化することとしている。センターにおいては、①各府省等の人事の一環としての再就職あっせんから、センターによる再就職支援に重点を移していく、②各府省等の人事当局と企業等の直接交渉は禁止し、センター職員は出身府省職員の再就職あっせんを行わないこととする、等を原則としている。併せて、再就職後の働きかけに刑事罰を課す厳格な行為規制と外部監視機関(再就職等監視委員会)による厳格な監視体制をとることとしている。
 これらの措置により、国家公務員の再就職及び国と公益法人の関係の透明性が確保されるものと考えている。

二十九について

 公益法人に対しては、指導監督基準において、対価を伴う公益事業については、対価の引下げ等により収入、支出の均衡を図り、当該法人の健全な運営に必要な額以上の利益を生じないようにすること等とするとともに、業務及び財務等に関する資料を主たる事務所に備えて置き、原則として、一般の閲覧に供することとしている。御指摘のORSEについても、所管の国土交通省において、指導監督基準に基づいて適切な指導監督に努めているところである。
 今後とも、公益法人の適正な運営の確保のため、適切に情報開示が行われるよう努めてまいりたい。