質問主意書

第165回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三〇号

政府における政策決定の補佐を行う政策会議等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年十二月八日

櫻井 充   


       参議院議長 扇 千景 殿



   政府における政策決定の補佐を行う政策会議等に関する質問主意書

 我が国において、法律を作る場合は、国民の信託を得た国権の最高機関である国会が行い、法律に基づく具体的な政策を作る場合は、国会が選んだ首相が総理する内閣が行うのが基本である。ところが、現在、内閣には政策決定の補佐を行う様々な会議、委員会(以下「政策会議等」という。)が設置されており、国会や内閣の統制から外れて、国民の信託を受けない者が政策決定を行っている。首相のリーダーシップを強めるというのは一つの考えであろうが、このような会議の決定が日本の国益のためになるものであればまだしも、一度誤った決定を下せば、日本の社会に多大な悪影響をもたらすことは明らかである。
 そこで、問題に満ちた政策会議等の在り方について、以下質問する。

一 内閣には政策会議等が、法律、政省令、閣議決定等様々な根拠法令等に基づいて設置されているものの、その設置根拠や構成員の選出過程には不透明な部分が多い。

1 政策会議等は根拠法令等によりその権能や決定の効果は異なるのか。異なるのであれば、どのような違いがあるのか。それぞれ明らかにされたい。また、設置方法を統一しない理由についても明らかにされたい。
2 政策会議等が、各府省の施策と異なる決定を行った場合、どちらの決定が優先されるのか明らかにされたい。
3 政府は、特に平成十三年の省庁再編以来、内閣機能の強化をうたってきた。内閣機能の強化において、政策会議等はどのような役割を果たすのか明らかにされたい。
4 政策会議等の構成員は、優れた識見を有する者から選ぶと聞くが、「優れた」とは誰がどのような基準で判断するのか。その選出過程を含めて明確に示されたい。
5 政策会議等の多くは内閣に置かれているため、国会がその政策決定過程には関与できない。政府は、このような仕組みについて国民が認めていると考えているのか。国民が認めていると考えているならば、具体的根拠を示されたい。

二 経済財政諮問会議と総合科学技術会議は、どちらも内閣府設置法第十八条第一項の「内閣の重要政策に関して…次の機関を置く」との規定を根拠としているものの、その取扱いは全く異なっている。

1 総合科学技術会議の議員のうちのいわゆる民間有識者(以下「総合科学技術会議の民間議員」という。)は、内閣府設置法第三十条第一項で「議員を任命しようとするときは、両議院の同意を得なければならない」旨の規定がされているにもかかわらず、なぜ同じ法律に基づく経済財政諮問会議の議員のうちのいわゆる民間有識者(以下「経済財政諮問会議の民間議員」という。)には国会同意が不要であるのか。それぞれの会議の趣旨、権能等両者の違い等に触れながら理由を明確に示されたい。
2 政府は、どのような政策会議等の構成員について、国会同意が必要であると考えているのか、見解を示されたい。
3 総合科学技術会議の民間議員について、内閣府設置法第三十二条では、職務上の義務違反その他議員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる旨の罷免条項がある。また、同法第三十三条では、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない旨の服務条項がある。しかしながら、経済財政諮問会議の民間議員には同様の条項が無い。罷免・服務条項に関し、両会議の取扱いが異なっている理由について明らかにされたい。

三 政府は、平成七年に規制緩和小委員会を設置して以来、現在まで名称を変えながらも会議等を存続させている。

1 規制改革は小泉内閣で担当大臣を置くなど、政府の重要政策であったにもかかわらず、規制改革・民間開放推進会議の根拠は、政省令である内閣府組織令である。経済財政諮問会議及び総合科学技術会議の根拠が内閣府設置法である一方、なぜ規制改革・民間開放推進会議の根拠が法律でなく国会の審議を直接受けない政省令であるのか。国会の審議など必要ないという考えなのか。理由を示されたい。
2 平成十年、小渕内閣に置かれた行政改革推進本部規制緩和委員会以来、長期にわたり、宮内義彦氏が規制緩和や規制改革に関する会議等の長を務めてきたが、宮内氏は規制緩和や規制改革に直接関係する一民間企業の人物である。なぜこのような当事者が、これほど長期にわたり会議等の長を務めてきたのか。また、宮内氏がどのような基準により選ばれたのか、それぞれ明確に示されたい。
3 宮内氏以外に鈴木良男氏、神田秀樹氏、八代尚宏氏が、規制緩和や規制改革に関する会議の委員等を長期間務めている。同じ人物が長期にわたり委員等を務めることは問題ではないのか。政府の見解を示されたい。
4 平成七年の規制緩和小委員会の発足から現在の規制改革・民間開放推進会議までの各委員会等について、平成七年度から平成十八年度までの予算額及びスタッフの人員数を年度ごとに示されたい。また、スタッフの出身(スタッフになる前にどの府省や企業等に勤務していたか)に関し、出身母体ごとの人数について具体的名称を挙げて示されたい。

四 対日投資会議は規制改革・民間開放推進会議と同様に非常に重要であるにもかかわらず、その設置根拠は閣議決定である。

1 対日投資会議の設置根拠について、法律とせず閣議決定としている理由を示されたい。
2 平成十八年四月二十八日現在、対日投資会議専門部会には九名の外国人特別委員がおり、多くが英国及び米国の人間である。しかも、そのほとんどがサービス産業出身者であり、ものづくりの企業出身者はわずかである。外国人特別委員の人選についての決定権者及び決定方法を明らかにされたい。また、なぜこれほどまで偏った人選になったのか明らかにされたい。
3 米国政府の政策決定の補佐を行う政策会議等の構成員が日本国民である事例があれば、具体的に示されたい。事例がないのであれば、その理由について示されたい。また、このような事例がないとすると、日米の不均衡を許してもいいのか政府の見解を示されたい。

五 一九九六年の米国政府の日本政府に対する年次改革要望書において、米国は「審議会及び研究会」という項目で、「政府機関に助言・提言する公式・非公式の諮問委員会及び研究会(審議会、研究会、懇談会及び勉強会等)」について、その構成員から公務員を排除し、外国の非政府関係者及び外国企業が参加し、政府から独立性を保つよう要求している。

1 政策会議等はあくまで日本政府が政策を決定することを助けるものであって、他国が口を挟む話ではない。米国がこのような内政干渉とも言える要求をしてきたことに対して政府は抗議を行ったのか明らかにされたい。
2 同要望書に対して政府はどのような対応を行ったのか。もし米国の要望を受け入れるのであれば、同様の要求を政府は米国に対して行っているのかそれぞれ明らかにされたい。また、行っていないのであれば、その理由を明確に示されたい。
3 同要望書と経済財政諮問会議の設置はどのような関係があったのか。時系列に沿って主要人物の名前を挙げるなど詳しく示されたい。

  右質問する。