質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第五二号

イレッサの副作用被害問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年四月二十七日

櫻井 充   


       参議院議長 扇 千景 殿



   イレッサの副作用被害問題に関する質問主意書

 イレッサは、英国アストラゼネカ社が製造する手術不能又は再発非小細胞肺癌に使用されている抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)ゲフィチニブの販売名である。アストラゼネカ社の日本法人であるアストラゼネカ株式会社が平成十四年一月二十五日に医薬品輸入承認申請を行い、優先審査の対象とされたことから、わずか五か月後の同年七月五日に世界で初めて承認され、同月十六日より販売が開始された。ところが、販売開始から三か月後の同年十月十五日までに、間質性肺炎等肺障害発症例二十六例(うち死亡十三例)が報告され、同日、間質性肺炎について警告する緊急安全性情報が発出された。その後も間質性肺炎の被害は止まらず、平成十七年四月二十二日現在で間質性肺炎等肺障害発症例千五百五十五例(うち死亡六百七例)、平成十八年三月末日現在で同症例千六百三十一例(うち死亡六百四十三例)もの報告がなされている。
 一方、ゲフィチニブの有効性の指標となる延命効果については、延命効果を確認する第Ⅲ相臨床試験(INTACT1・2、ISEL、SWOG0023)の結果が相次いで報告されたが、平成十四年八月に報告されたINTACT1・2、平成十六年十二月に報告されたISEL、平成十七年五月に報告されたSWOG0023の中間解析のいずれにおいても、ゲフィチニブに有意な延命効果は認められなかった。以上の結果を受け、英国アストラゼネカ社は、平成十七年一月四日にEU公衆医薬品審査庁への承認申請を取り下げた。また、米国食品医薬品局(FDA)は、平成十七年六月十七日にゲフィチニブの新規使用を原則禁止とした。
 これに対し、我が国では依然ゲフィチニブの使用が継続されている。平成十七年五月にSWOG0023試験に関する研究発表がなされた際にも、厚生労働省は、ゲフィチニブの使用継続を前提に、製薬企業に対しこの研究発表を医療関係者に情報提供するよう指導するとともに、日本肺癌学会に対し「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」改訂の必要性について検討を依頼することを発表した。
 以上の事実関係を踏まえ、ゲフィチニブによる被害の実態を明らかにし、ゲフィチニブ又は他の抗がん剤による同様の被害を防止する観点から、以下質問する。

一 ゲフィチニブによる副作用被害について、平成十八年三月末日現在で報告のある間質性肺炎等肺障害発症例数及び死亡例数が公表されたが、累積使用患者数については公表されていない。被害の実態を明らかにするため、同日時点でのゲフィチニブの累積使用患者数を明らかにされたい。

二 政府は、ゲフィチニブが六百人を超す副作用被害死亡例を出した原因をどのように考えているのか、具体的に明らかにされたい。

三 政府は、これまでのゲフィチニブによる副作用被害の実態を踏まえ、ゲフィチニブによる副作用被害を今後出さないために、現段階までにどのような対策を講じ、また、今後講じる予定でいるのか、具体的に示されたい。

四 多数の副作用による被害が生じている上、諸外国で使用されなくなったゲフィチニブを、なぜ我が国では継続して使用しているのか、明確に示されたい。

五 抗がん剤について、使用患者総数に対してどのような著効例がどの程度の割合認められた場合に有効性があると判断しているのか。また、どの程度の割合の死亡例が報告された場合に安全性が欠如すると判断しているのか。有効性及び安全性の評価基準を具体的に明らかにされたい。

六 抗がん剤について、どのような副作用被害がどの程度の割合発生したときに、その承認を取り消したり使用の中止を命じたりすることとしているのか。その基準を具体的に明らかにされたい。

七 平成十七年五月にSWOG0023試験に関する研究発表がなされた際の厚生労働省の対応は、この試験について米国の国立がん研究所のホームページから入手できる資料以外に、詳細な情報を入手して検討した結果であるのか。そうであれば、いつ、いかなる方法で、どのような情報を入手したのか。

八 政府は、我が国で承認審査中若しくは使用中の医薬品に関する海外での臨床試験結果等の情報収集について、遺漏なきようにするためにどのような体制で臨んでいるのかを明らかにされたい。

  右質問する。