質問主意書

第161回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一六一第二号
  平成十六年十一月十九日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員櫻井充君提出イラク戦争の正当性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出イラク戦争の正当性に関する質問に対する答弁書

一について

 イラクについて、かつて実際に大量破壊兵器を使用していた事実があるほか、多くの大量破壊兵器に関する疑惑が存在したことは、国際連合監視検証査察委員会(以下「UNMOVIC」という。)等の査察報告等でも明らかになっているとおりである。
 イラクは、査察への非協力を始め関連する国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)の決議につき重大な違反を継続的に犯してきたものであり、米国等によるイラクに対する武力の行使は、累次の関連する安保理の決議に合致し、国際連合憲章にのっとったものであって、我が国がこれを支持したことは正しかったと考える。
 したがって、お尋ねのような抗議を行う考えは無い。

二について

 二千四年十月七日に発表されたイラクの大量破壊兵器に関する米国中央情報局長官特別顧問による包括的報告、いわゆるイラク監視グループ(以下「ISG」という。)の報告によれば、イラクに大量破壊兵器が存在しないことは、ほぼ確実となったと判断される。
 しかし、ブレア英国首相が謝罪したのは、イラクの大量破壊兵器に関する英国政府自らの情報が結果として誤っていたことについてであったと承知しており、我が国政府についてはそのような事情がなく、また、我が国の米国等によるイラクに対する武力の行使への支持は、飽くまで累次の関連する安保理の決議及びUNMOVIC等の査察報告等に基づいて自主的に判断したものであり、その判断は正しかったと考える。
 また、仮に米国等によるイラクに対する武力の行使が行われなかったならば、今回のようなISGによる徹底した調査の実施は困難であり、大量破壊兵器の疑惑から生ずるイラクの脅威は現在も続いていたと考える。かつて大量破壊兵器を使用したことのあるイラクが安保理の決議に従わず、UNMOVIC等の査察団が大量破壊兵器をめぐる疑惑を否定し得ないという極めて異常な状況の下では、国際の平和と安全を回復するために安保理の決議に基づきとられた行動を支持することは、当然のことであったと考える。
 したがって、我が国政府が謝罪すべきであるとの御指摘は当たらないと考える。

三について

 UNMOVIC等の査察報告等でも明らかになっているとおり、イラクについては、かつて実際に大量破壊兵器を使用していた事実があるほか、多くの大量破壊兵器に関する疑惑が存在したところである。イラクは、査察への非協力を始め関連する安保理の決議につき重大な違反を継続的に犯してきたものであり、米国等によるイラクに対する武力の行使は、累次の関連する安保理の決議に合致し、国際連合憲章にのっとったものである。したがって、大量破壊兵器の疑惑があるという理由だけで米国がイラクを攻撃したわけではないと考える。

四及び五について

 一についてで述べたとおり、米国等によるイラクに対する武力の行使は、累次の関連する安保理の決議に合致し、国際連合憲章にのっとったものであり、我が国は自主的な判断に基づきこれを支持している。大量破壊兵器の保有や開発が疑われているその他の国については、イラクに対してなされたような安保理の決議は存在していないこと等から、こうした国に対する対応とイラクに対する対応とは、同様のものとはならないと考える。
 また、我が国の外交政策については、従来から、日米同盟と国際協調の双方を重視しつつ、我が国の国益を踏まえ自主的に判断してきている。米国との間では、これまで同様、日米双方が言うべきことを言い、行うべきことを行っていく必要があり、あらゆるレベルで率直かつ緊密に政策協議を行っていく必要があると考えている。

六について

 イラクに対する武力行使は、国際の平和と安全を回復するという目的のために武力行使を認める国際連合憲章第七章の下で採択された決議第六百七十八号(以下「決議六七八」という。)、決議第六百八十七号(以下「決議六八七」という。)及び決議第千四百四十一号(以下「決議一四四一」という。)を含む関連する安保理の決議により正当化されると考えている。
 すなわち、決議一四四一において、安保理は、イラクが決議六八七を含む関連する安保理の決議の義務の重大な違反を継続的に犯していることを決定し、イラクに対して関連する安保理の決議の下での武装解除の義務を遵守する最後の機会を与えた。しかし、武力行使開始の時点までの、UNMOVIC等の安保理への累次の査察報告等においても明らかなとおり、決議一四四一で履行を求められている関連する安保理の決議の義務がイラクによって完全に履行されていなかったことから、決議一四四一が採択された後もこれらの義務の更なる重大な違反が生じていると言わざるを得ない状況にあった。決議一四四一によって与えられた最後の機会をイラクがいかそうとせず、いわゆる湾岸戦争の停戦条件を定めた決議六八七を含む関連する安保理の決議の重大な違反が武力行使開始の時点まで継続的に生じていたことから、決議六八七に基づくいわゆる湾岸戦争の停戦の基礎が損なわれていたため、国際の平和と安全を回復するために、あらゆる必要な手段をとることを容認した決議六七八に基づき、武力行使が正当化されると考えている。