質問主意書

第161回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九号

ヤミ金融対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年十二月一日

櫻井 充   


       参議院議長 扇 千景 殿



   ヤミ金融対策に関する質問主意書

 地元に根ざしている中小零細貸金業者は、過剰な取立てなどによって自分の子や孫が世間から後ろ指を指されることのないよう、「貸金業の規制等に関する法律」(以下「貸金業規制法」という。)及び「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下「出資法」という。)を遵守し、日夜努力している。
 しかし、彼らの努力にも限界がある。貸金業者は、出資法に基づく上限金利が引き下げられて収益が少なくなった分だけリスクを圧縮する必要があるため、信用度の低い多数の資金需要者からの申込みを断らざるを得ない。そして、このように融資のできなかった資金需要者は、結局、法律を無視し暴利をむさぼる違法な金融業者(以下「ヤミ金融」という。)から金を借りてしまうケースが多い。中小零細貸金業者は資金需要者の経済・家計状況が一番良く分かる存在であり、今やリレーションシップ・バンキングの一翼を担っている。したがって、リスクをカバーできる収益が可能となれば、中小零細貸金業者は資金需要者のヤミ金融からの被害を食い止めることができるのである。
 戦後、「昭和サラ金地獄」が社会問題になったため、昭和五十八年に貸金業規制法が制定された。しかし、その後も「商工ローン取立事件」など、貸金業における様々な事件が起こり、その度に法改正がされてきた。これらの問題を起こしたのは、ヤミ金融という犯罪者と、違法な取立てを繰り返した一部大手商工ローン業者であり、まじめに営業してきた中小貸金業者ではない。
 ところが、現行の貸金業規制法は、違法業者も健全業者もひとくくりにして規制しているために、一向にヤミ金融を取り締まるのに効果を発揮していないばかりか、資金需要者が健全業者から借りられない状況を作り出している。
 そこで、以下質問する。

一 本年一月、貸金業規制法及び出資法の改正法(以下「ヤミ金融対策法」という。)を施行したにもかかわらず、ヤミ金融は未だに野放し状態であり、彼らによる被害・迷惑は後を絶たない。例えば、宮城県では、今年に入って既にヤミ金融の被害者からの相談が三百件(被害六十件・被害総額千八百二十四万円)も貸金業協会に寄せられた。昨年は、仙台市中心街においてヤミ金融の張り紙広告と看板広告の撤去が貸金業協会によって行われたにもかかわらず、現在もそのような広告が至る所に氾濫している。また、ヤミ金融はポスティング、ダイレクトメール、電話等による勧誘を引き続き行うなど、その活動は全く衰えていない。
 こうした事実を見ると、貸金業規制法や出資法は、ヤミ金融を取り締まる効果が極めて薄いと言わざるを得ないが、政府の見解を示されたい。また、過去五年間のヤミ金融取り締まり実績を示すとともに、ヤミ金融対策法施行後の被害改善効果についての認識を示されたい。

二 貸金業者に対する金融庁の指導・監督や警察の取り締まりだけでは、ヤミ金融の撲滅は困難なのが実情である。そこで、すべての正規の貸金業者に貸金業協会への加入を義務付け、協会内で会員を指導、教育、監督するようにし、貸金業者が自らを律するような仕組みにすべきと考えるが、これについて政府の見解を示されたい。

三 これまで、サラ金被害や多重債務者の被害を減少させるために、数度にわたり貸金業規制法及び出資法が改正され、貸金業者の上限金利は抑制されてきた。ところが、そのような被害はむしろ拡大するばかりであり、破産者数は昭和五十八年以降増加傾向をたどっている。上限金利の抑制は、破産者の増加を食い止める効果が乏しいと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 健全な貸金業者が融資を行う際、現行の利息では融資先が限定されてしまうので、結果として借り手である企業がヤミ金融に走って被害を受けている実態がある。しかし、健全な貸金業者は、短期間であればそうした企業に融資することも可能であると表明している。政府は、このように、短期間で少額のもののみ金利を上げることはあり得るものと考えるか。

五 貸金業規制法及び出資法では、ヤミ金融が定義されていないため、健全な登録業者もヤミ金融と同一視されてしまっている。そのため、ヤミ金融を取り締まるはずのものが、結果として健全な貸金業者をも圧迫する事態が生じているのであり、この両法律が実をなしていないと言っても過言ではない。

1 貸金業規制法及び出資法とは別にヤミ金融対策のための特別法を制定し、ヤミ金融を定義するとともに、彼らを厳しく効果的に取り締まり、資金需要者が安心して貸金業者から資金を借り入れられるようにすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 貸金業者の上限金利を、資本金の額及び貸付残高等により、適切な利率に変え、地元に根ざした地域貸金業者がより幅広いリスクを負えるような制度にすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。