質問主意書

第160回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

年金改正法にかかわる総理大臣等の発言等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年七月三十日

小川 敏夫   


       参議院議長 扇 千景 殿



   年金改正法にかかわる総理大臣等の発言等に関する質問主意書

一 小泉総理の「一元化」発言

 小泉総理大臣は、平成一六年三月二八日の民放テレビ番組において「制度の改革になると、確かに一元化というのはね、望ましい方向だと私も思います」と発言をしている。この発言の真意は何か。憲法第六六条の定めに基づく内閣の首長として、将来的には公的年金の一元化を行うことを国民に表明したのか。

二 坂口大臣の法案提出者としての適格性

 平成一六年五月七日衆議院厚生労働委員会において、坂口厚生労働大臣は阿部委員の質問に対して、「我々が五〇%を維持するというふうに言っておりましたのは、それは、年金を受ける人の、若いときにその人が受け取った平均の手取りの五〇%、こういうことを言っているわけでありまして、あのデータは、そのときそのときの、その時代の働く人たちのモデル平均を言っているわけでありますから、そこのいわゆるとり方が違うというふうに思います。」と答弁している。従来政府は、所得代替率について「年金受給開始時点における、その時点の現役世代の平均的な賃金に対する受給額の割合」と説明しており、改正法にもその趣旨が法定されている。坂口大臣の答弁は、明らかに政府の説明と矛盾しており、法案の提出責任者としての資格を著しく欠いているものと考えるが、政府の見解如何。

三 小泉総理の法案提出者としての適格性

 平成一六年六月三日の参議院厚生労働委員会において、小泉総理は山本孝史委員の「マクロ経済スライド」の意義、内容等を問う質問に対して「私は、そういう経済の専門家の知識が乏しいですから」「極めて技術的な質問に答えろというんなら用意いたしますが」と答弁している。これは小泉総理が明らかに「マクロ経済スライド」について理解していないことを示すばかりか、改正法における「マクロ経済スライド」の重要性について全く認識を欠いていることを示している。これは法律案提出の最高責任者としての適格性を完全に欠如していると考えられるが、政府の見解は如何。

四 小泉総理の抜本改革に対する認識

 小泉総理は六月二七日の民放テレビ番組で、今回の改革を「給付と負担を具体的に決めたから抜本改革」と説明した直後に「一元化を進めれば、給付と負担が全く変わる」と発言した。これらの説明は明らかに矛盾している。小泉総理の後段の発言通り、「一元化」を進めれば給付と負担の関係が変わることは自明の理であることから、前段の「給付と負担を具体的に決めた」としてもそれは過渡的なものであり、到底今回の改正を抜本的な改革とは言えないと考える。
 政府の認識として、今回の改正は「給付と負担の関係を具体的に決めた」から抜本改革なのか、仮にそうであるならば官房長官の下に設置された「社会保障のあり方に関する懇談会」或いは改正法付則に基づく「公的年金制度について必要な見直しを行う」結果としての年金制度改正との関係はどうなるのか、認識を問う。

五 小泉総理の「人生いろいろ」発言

 小泉総理は六月二日の衆議院決算行政監視委員会において、自らの年金加入歴に関連して「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろです。全部社員が同じように、一定の時間に会社に出て、一定の時間に会社を退出して、そして机を並べている社員も多いでしょう。しかし、うちにいてもいいよ、あるいは、海外旅行してもいいですよという会社もあるんです。それでも社員です。」と発言している。この発言の真意は何か。一般的に社員に海外旅行をさせ給与等を支払い、社会保険料を負担する企業があるとは考えられないが、この発言に具体的な根拠はあるのか。またこの発言に対して多くの国民が疑問を感じているが、内閣の、この発言に対する見解は如何。内閣としてもしくは小泉総理はこの発言を撤回することはないのか。

  右質問する。