質問主意書

第152回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参質一五二第四号

  平成十三年八月三十一日

内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員櫻井充君提出年金福祉事業団の行った事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員櫻井充君提出年金福祉事業団の行った事業に関する質問に対する答弁書

一について

 大規模年金保養基地に係る用地取得、施設整備等に要した費用は平成十二年度末までの累計で千九百四十二億円であり、このために旧年金福祉事業団が旧資金運用部から借り入れた資金の償還元本及び償還利息、施設の維持管理費等に充てるため、厚生保険特別会計、船員保険特別会計及び国民年金特別会計から旧年金福祉事業団に対して交付金及び出資金として支出した額は、平成十二年度末までの累計で二千七百九億円である。なお、旧資金運用部からの借入金の残額については、平成十三年度から平成三十四年度までの間に全額償還される予定であり、これに要する費用は償還利息を含め千億円と見込んでいる。

二について

 大規模年金保養基地に係る用地取得、施設整備等に要する費用については、利用料を低廉なものに抑え、被保険者等の福祉の向上に寄与するという観点から、年金保険者である国が負担することとしているため、個別基地ごとの収支状況を示す際には減価償却費等を含めないこととしている。
 また、外部監査の活用については、今後特殊法人全体の問題として検討すべきものと考えている。

三について

 旧年金福祉事業団によるいわゆる年金積立金の自主運用は、昭和五十九年以降旧資金運用部の預託金利が急速に引き下げられる中で、国民年金法等の一部改正法案の国会審議等において年金積立金の自主高利運用を行う必要性が強く指摘されたこと等を踏まえて、年金福祉事業団法及び国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律(昭和六十一年法律第二十一号)及び年金財政基盤強化のための年金福祉事業団の業務の特例及び国庫納付金の納付に関する法律(昭和六十二年法律第五十九号)が制定され、開始されたものである。本制度の立案過程においては、資産運用の専門家等で構成する研究会において検討が行われ、「安全・確実にかつ資金運用部への預託金利を上回る運用利回りが確保されうる」との報告を受けたこと、当時厚生年金基金の運用実績は旧資金運用部の預託金利を上回っていたこと等を踏まえ、旧資金運用部の預託金利を上回る自主運用が可能であると判断したものである。
 平成十二年度の旧年金福祉事業団の運用実績については、国内外の経済の動向を反映して、国内株式の価格が大幅に下落する等厳しい運用環境にあったことから、総合収益額はマイナス一兆四千六百七十一億円となり、旧資金運用部に支払う借入利息八千四百五十二億円を控除した後の利差損は二兆三千百二十三億円となった。また、累積利差損益も、平成十一年度末は六千九十八億円の累積利差益であったが、平成十二年度末は一兆七千二十五億円の累積利差損となった。なお、昭和六十二年度から平成十一年度までの間の修正総合収益率は平均五・一パーセントであり、旧年金福祉事業団は企業年金の資金運用を行う機関投資家並みの成果を上げてきた。このような運用実績があったにもかかわらず、平成十二年度に一兆七千二十五億円の累積利差損が生じたのは、株価の低迷に加え、旧資金運用部からの借入金利が長期固定であり、金利が低下する局面では相対的に高くなること等によるものである。
 平成十三年度から厚生労働大臣による年金積立金の自主運用が開始されたことに伴い、旧年金福祉事業団は廃止される一方、新たな自主運用を担う組織として年金資金運用基金(以下「基金」という。)が設立され、旧年金福祉事業団の資産及び負債は基金に引き継がれた。今後は、厚生労働大臣が策定した厚生保険特別会計の年金勘定に係る積立金及び国民年金特別会計の国民年金勘定に係る積立金の運用に関する基本方針(平成十三年厚生労働省告示第百八十三号)に基づき、責任体制の明確化及び情報公開の徹底を図るとともに、基金が当該基本方針で定められている資産構成割合を維持し、有価証券指数の変動と一致するような運用を中心とした運用管理を行う等安全、確実かつ効率的な運用を行っていくことにより、できるだけ早期の累積利差損の解消に努めることとしている。
 なお、今後、旧年金福祉事業団時代の平均的な総合収益率に見合う収益を重ねていけば、年金積立金全額の自主運用が開始される時までに累積利差損を解消することは可能であると見込んでいる。

四について

 厚生労働大臣、年金積立金の運用に携わる厚生労働省の職員、基金の役職員、運用機関等は、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)、年金資金運用基金法(平成十二年法律第十九号)等に基づき、年金積立金の運用に当たって各種の義務を負っている。例えば、基金の理事は、同法第二十一条第二項に基づき、年金資金の管理及び運用に関する職務の執行に際して慎重な専門家の注意を払う義務を課されており、この義務に違反した場合は、違反の内容等に応じて、同法第三十一条第一項に規定する制裁規程に基づき免職等の処分を受けることとなる。
 厚生年金保険法、年金資金運用基金法等に規定されているこれらの義務は、年金積立金の運用実施する過程で専門家としての注意義務を果たすことや必要な手続をすべて履行することを求める趣旨のものであり、このような義務が適切に履行されている場合には、運用の結果について責任を負わせるものではない。なお、これらの義務に関する規定は、米国や英国において年金資金の運用等について確立されている受託者責任の考え方を取り入れて設けられたものである。

五について

 社団法人全国年金住宅融資法人協会は、その会員である公益法人(以下「会員法人」という。)が行う住宅融資事業等の適正かつ円滑な運営を推進することを目的として設立された法人であるが、基金は直接会員法人に対して住宅融資資金の貸付けを行っている。なお、会員法人は、本年六月三十日に社団法人近畿四国厚生年金共済会が財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会に事業を譲渡して解散した後は、五十二法人となっている。
 会員法人のうち平成十二年度の決算において正味財産が増加しているものは、五十三法人中四十五法人である。正味財産増加の主な要因は、会員法人において人件費、物件費等の支出経費の厳しい見直しを行っていること、繰上償還に伴う手数料収入が多額に上っていること等である。

六について

 各会員法人の住宅融資事業開始年度及び平成十二年度の決算における正味財産額は、別表のとおりである。

七について

 森仁美氏が環境事務次官を退官した後に就任した法人の役員のうち有給のものは、財団法人船員保険会(以下「財団」という。)の会長、旧年金福祉事業団の理事長及び基金の理事長であると承知している。財団の給与規程等に基づき、同氏が財団の会長を退職した時点での年間給与及び退職慰労金を試算すると、年間給与は二千五百一万円、退職慰労金は五百五十万円となる。基金の現行の給与規程等に基づき、同氏の基金の理事長の任期が満了する平成十七年一月三十一日時点での年間給与及び退職金を試算すると、年間給与は二千五百六十八万円、退職金は旧年金福祉事業団の理事長の在職期間を通算して四千六百二十八万円となる。

別表 各会員法人の正味財産の状況