第151回国会(常会)
答弁書第二五号
内閣参質一五一第二五号 平成十三年六月八日 内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議員櫻井充君提出地方債発行に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員櫻井充君提出地方債発行に関する質問に対する答弁書 一及び二について お尋ねの地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第八十七号。以下「地方分権一括法」という。)により地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)及び地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部が改正され、地方債を起こすことについて許可制度を廃止し、事前協議制度に移行することとされた。ただし、平成十七年度までは許可制度を維持することとされている。この改正はお尋ねの地方分権一括法自体で規定されているものであり、改正後の制度が地方分権一括法の精神に反するとの御指摘は当たらない。
三について お尋ねの「地方公共団体の財政権」の「確保」の意味が必ずしも明らかではないが、地方債を起こすことについて許可制度を廃止し、地方公共団体が総務大臣又は都道府県知事との協議を行う制度に移行することとしたのは、地方債の円滑な発行、償還財源の確保等を図りつつ、地方公共団体の自主性をより高めるという観点に立ったものであり、現行の許可制度においては総務大臣又は都道府県知事の許可がなければ地方公共団体は地方債を起こすことができないのに対し、平成十八年度以降の事前協議制度においては、地方公共団体は総務大臣又は都道府県知事と協議を経ればその同意がなくても議会に報告の上地方債を起こし得ることとしている。 四について お尋ねの「地方公共団体の行政権ひいては財政権を明確に認めた」の意味が必ずしも明らかではないが、平成八年十二月六日の衆議院予算委員会における大森内閣法制局長官(当時)の「地方公共団体に属する地方行政執行権を除いた意味における行政の主体は、最高行政機関としての内閣である」という答弁は、憲法第六十五条は行政権が国の機関である内閣に属するということを規定したものであるということを踏まえつつ、現に地方公共団体が執行することとされている事務自体は、内閣又はその下にある国の行政機関が執行するものではなく、そういう意味で地方公共団体が執行することとされている事務については内閣が行政の主体となるものではないということを述べたものであり、内閣が、地方公共団体が執行することとされている事務について一切責任を負わず、あるいはかかわり合いをもたないということを述べたものではない。 五について 地方公共団体は、水道・下水道等の地方公営企業の事業について、自らの判断と責任に基づいて事業量、事業期間等を定め、事業を推進しているところである。これらの事業は、一般に、多額の事業費を要するとともに、投下資本の回収に長期間を要するため、多額の長期の資金を必要とし、かつ、住民生活に特に密接にかかわるサービスを提供するものであり、公共料金の抑制等を図りつつ社会資本の整備に寄与するものとして円滑に進めることが強く求められているため、低利の資金を必要とするものである。このため、公営企業金融公庫は、民間市場から資金を調達して、地方公共団体の需要に応じ、個別の地方公共団体が市場公募地方債の発行や民間金融機関からの借入れでは調達することができない長期かつ特に低利の資金を安定的に供給し、地方公共団体のための地方債の共同発行機関としての役割を果たしているところであり、引き続き公営企業金融公庫の貸付けは必要であると認識している。 六について 政府としては、地方分権の進展に伴い、地方公共団体の財政面における自己決定権と自己責任をより拡充することが重要であると考えており、今後、地方公共団体が事務及び事業を自主的かつ自立的に執行できるよう、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保の方途について、経済情勢の推移等を勘案しつつ検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとしたい。 |