質問主意書

第150回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二三号

内閣参質一五〇第二三号

  平成十二年十二月二十二日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員櫻井充君提出遺伝子組換え飼料スターリンク混入問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員櫻井充君提出遺伝子組換え飼料スターリンク混入問題に関する質問に対する答弁書

一について

 遺伝子組換え食品であるとうもろこしの一品種であるスターリンク(以下「スターリンク」という。)の種子の開発業者によれば、本年の米国におけるスターリンクの作付け面積は約十四万ヘクタールで、米国のとうもろこしの作付け面積全体の約〇・四パーセントに相当するとのことであるが、スターリンクがいつから他のとうもろこし等に混入して我が国に輸入されていたのか及びこれまでどの程度の量が混入したかについては、不明である。
 国立医薬品食品衛生研究所においては、本年十一月に消費者団体から提供を受けたとうもろこし加工品であるコーンミール(以下「本件二次加工品」という。)について、スターリンクの混入を確認している。本件二次加工品は、本年五月十九日に加工されたものであり、その原材料として同年三月九日に国内でとうもろこしを加工した商品(以下「本件一次加工品」という。)が使用されていたことから、本件一次加工品の流通状況等を調査したところ、ビール、菓子、パン等の原材料として使用されていたことが判明した。
 農林水産省肥飼料検査所においては、本年四月から六月までの間に米国産飼料用とうもろこし十五検体を採取し、検査したところ、十検体について平均〇・五パーセントのスターリンクの混入を確認した。この検査によってスターリンクの混入が確認されたとうもろこしは、家畜用配合飼料の製造に使用されていたことが判明した。

二について

 本件二次加工品以外に、国立医薬品食品衛生研究所がスターリンクの混入を確認したとうもろこし七検体についても、本年十一月六日、輸入業者に対して当該とうもろこしの国内市場における流通状況等の調査を行うよう指示したところであり、同月二十二日までの調査の結果、当該とうもろこしは、輸入業者六社から加工業者八社に渡ったが、当該加工業者に在庫はないとの報告を受けている。当該加工業者から他の製造業者、販売業者等(以下「製造業者等」という。)への流通状況等については、引き続き、輸入業者等が調査を進めているところである。
 今後とも、本件一次加工品を原材料とする等スターリンクの混入が強く疑われる食品が市場に流通していることが判明した場合には、その製造業者等に対して自主的な検査等によりスターリンクの混入の有無を確認するよう指導することとしている。

三について

 遺伝子組換え食品については、平成十三年四月から食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)に基づき安全性審査が義務付けられ、安全性審査の手続を経ていない遺伝子組換え食品の輸入、販売等が禁止される。これに伴い、輸入時に検疫所において遺伝子組換え食品のモニタリング検査を実施することとし、現在、検体採取の方法、検査の方法等について検討を進めているところであり、適切な検査体制の確立に努めてまいりたい。

四について

 仮にスターリンクが混入した加工食品により健康被害が生じた場合は、一般に、当該食品の製造業者の損害賠償責任が問題になると考えられる。また、仮にスターリンクが混入した飼料により家畜等に被害が生じた場合は、一般に、当該飼料の製造業者の損害賠償責任が問題になると考えられる。
 さらに、当該食品又は当該飼料の製造業者は、必要に応じ、とうもろこしの輸入業者等に対して損害賠償請求をすることとなる。

五について

 お尋ねの「本件に係る損害」とは何を指すか必ずしも明らかではないが、仮にスターリンクの混入により事業者等に何らかの損害が生じた場合は、民事事件として解決されるべきものと考えられ、我が国政府は米国政府に対して賠償を請求する立場にない。
 なお、米国政府は、スターリンクを家畜の飼料用としてのみ承認するとともに、スターリンクが食品として流通しないようにするための措置を講じていたと承知している。

六について

 御指摘のような事例は承知していない。

七について

 米国からスターリンクが食品向けとして我が国に輸出されないようにするため、先般、日米両国政府間で検査体制等に関して合意したが、米国における検査費用の負担はこの中で取り決めておらず、米国の輸出業者と我が国の輸入業者との間で決定されるべきものである。

八について

 我が国から食糧を米国に輸出する場合は、一般に、当該食糧の生産者等が米国において安全性の観点から求められる要件に合致するか否かを確認すべきものであり、これに要する費用も当該食糧の生産者等が負担すべきであると考えられるが、具体的には個々の契約により取り決められることとなる。

九について

 三についてで述べたように、遺伝子組換え食品の安全性審査の義務化に伴い、輸入時に検疫所において遺伝子組換え食品のモニタリング検査を実施することとし、現在、検体採取の方法、検査の方法等について検討を進めているところであり、適切な検査体制の確立に努めてまいりたい。
 また、それ以前においても、米国からスターリンクが食品向けとして我が国に輸出されないよう、日米両国政府間の合意に基づき、米国において検体が採取され、スターリンクの混入の有無に関する検査が行われるとともに、我が国においても、米国からの出港前に、米国から送付された検体を基に確認のための検査を行うこととしており、いずれの検査結果も陰性であったもののみ輸出を認めることとしている。

十について

 国民に対する食料の安定供給については、食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)に基づき、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行うこととしている。
 また、同法に基づき策定された食料・農業・農村基本計画(平成十二年三月二十四日閣議決定)においては、平成二十二年度における食料自給率の目標を四十五パーセント(供給熱量ベース)としたところであり、今後、この目標の達成に向けて、必要な施策を展開していくこととしている。

十一について

 世界貿易機関における貿易ルールの検討に当たって、我が国としては、食品の安全性の確保を第一義とすることとしている。
 遺伝子組換え食品については、平成十三年四月からの安全性審査の義務化に向けて、関係国に対し我が国において安全性審査の手続を経ていないものについて審査の申請を行うよう要請するとともに、輸入時の検査体制の確立に努めることとしており、我が国において安全性審査の手続を経ていない遺伝子組換え食品が輸入されることのないよう万全を期してまいりたい。