質問主意書

第145回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七号

内閣参質一四五第一七号

  平成十一年五月二十一日

内閣総理大臣 小渕 恵三   

       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員照屋寛徳君提出在留特別許可に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員照屋寛徳君提出在留特別許可に関する質問に対する答弁書

一について

 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第五十条に規定する法務大臣の裁決の特例による在留の許可(以下「在留特別許可」という。)は、入管法第二十四条第一項各号の一に該当する外国人について、法務大臣が入管法第四十九条に規定する異議の申出に理由がないと認める場合でも、当該外国人が

ア 永住許可を受けているとき
イ かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき
ウ その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき

に、その者の在留を特別に許可することができる制度である。
 在留特別許可に関する通達としては、平成十一年四月十六日付け法務省入国管理局長通達「出入国管理及び難民認定法に基づく上陸又は在留に関する異議の申出に対する法務大臣の裁決の特例による許可の一部を地方入国管理官署の長に専決させることについて」が存在するところ、当該通達は、在留特別許可を希望して法務大臣に対し異議の申出がなされる案件の取扱いについて検討した結果、政治、外交、治安等に影響を及ぼすおそれがあるなど重要な案件以外のもので、日本人等と婚姻しており、その婚姻の信ぴょう性及び安定性が認められるものなどについて、行政の簡素化を図るため地方入国管理官署の長が在留特別許可について専決できることとしたものである。
 なお、在留特別許可の許否は、在留を希望する理由、経歴、家族関係、生活状況、素行その他諸般の事情を総合的に考慮した上で個別的に決定されるものであり、これらの事情は個々の案件ごとに異なるため、在留特別許可に関する一般的基準というようなものは存在しないが、右通達からも明らかなように、日本人等との婚姻、家族関係にある者などについては、その事情を十分考慮しているところである。

二について

 在留特別許可に関する法務大臣の裁決について改めて検討した結果、例えば、日本人との婚姻を理由として在留を希望する案件については、婚姻の信ぴょう性及び安定性を判断する際の例示として、具体的に、実子を現に監護、養育していること、送還忌避の手段として婚姻したものでないことなどを挙げ、これが認められるときは地方入国管理官署の長が在留特別許可について専決できることとするなどの整備をした上、一についてでお答えしたとおり、平成十一年四月十六日、地方入国管理官署の長に通達した。

三について

 平成十年中に法務大臣が受理したお尋ねの異議の申出の件数は二千九百七十九件であり、また、同年中に法務大臣が在留特別許可を行わずに異議の申出が理由がないと裁決した件数は百四十一件である。

四について

 中村前法務大臣が異議の申出のなされた全事件について直接裁決をすることとした平成十年十一月二十八日から同法務大臣が辞職した平成十一年三月八日までの間に、同法務大臣が在留特別許可を行わずに異議の申出に理由がないとした件数は五十二件である。その裁決の理由は、日本人との婚姻の信ぴょう性に疑義があること、本国に妻子がいるなど本邦に生活基盤がないことなどであるが、個別事案の理由は、プライバシーにかかわる事項であり、答弁を差し控えたい。

五について

 入管法上の処分に係る行政事件訴訟(執行停止申立事件を除く。)で、平成十一年四月二十二日現在において係属しているものの件数は四十八件であり、そのうち、中村前法務大臣在任中の平成十年七月三十一日から平成十一年三月八日までの間になされた処分に係るものは二十件である。

六について

 中村前法務大臣においては、関係資料に目を通し、事務当局に説明を求めるなどして在留特別許可の許否を決定していたものであり、事務処理には問題がなかったと考えている。

七について

 入管法第五十四条に基づく仮放免については、収容されている外国人等からの請求により又は職権で、その者の情状及び請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮して総合的に判断の上、その許否が決定される。
 また、入管法第五十二条第六項に基づく放免(特別放免)は、送還することができないことが明らかになった被退去強制者に対してなされる措置である。
 なお、退去強制令書発付処分に係る行政事件訴訟(執行停止申立事件を除く。)で、平成十一年四月二十二日現在において係属しているものの件数は十一件であるが、そのうち、仮放免を許可している案件は四件であり、特別放免をしている案件はない。

八について

 法務大臣が在留特別許可を行わずに異議の申出は理由がないと裁決する処分及びこれに続く主任審査官の退去強制令書を発付する処分は、入管法の規定に基づき適正を期して行っているものであり、これらに対して退去強制令書発付等取消請求訴訟が提起されても、原則として裁決を再度行うことはない。しかし、事案によっては、判決によって法務大臣の裁決等が違法であると判断された場合はもちろん、審理の過程において、新たな事情が判明するなどした場合には、当該裁決等を見直し、在留特別許可の可否について再検討することもある。