質問主意書

第144回国会(臨時会)

答弁書


第百四十四回国会答弁書第四号

内閣参質一四四第四号

  平成十一年一月二十九日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員荒木清寛君提出労働者の健康障害防止に向けた化学物質の規制の強化等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員荒木清寛君提出労働者の健康障害防止に向けた化学物質の規制の強化等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 化学物質による業務上疾病の発生状況については、事業者から提出された休業四日以上の労働災害に関する労働者死傷病報告を集計したものによると、別紙一のとおりである。これらの主な発生原因は、当該化学物質の有害性等の情報が事業者間で十分に伝達されていないこと、労働衛生教育が不十分であること、呼吸用保護具が着用されていないこと、換気が不十分であること等が多いと考えられる。
 また、化学物質が労働者の健康に与えている影響であって業務上疾病に至らないものについての調査は行っていない。

一の2について

 労働者に重度の健康障害を生ずる一定の化学物質については、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号。以下「法」という。)第五十五条に基づき、製造、輸入等が禁止されている。また、労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある一定の化学物質については、法第五十六条に基づき、製造が許可制とされている。その他有害性の高い物質については、上記製造が許可制とされている化学物質と併せて、法第二十二条、特定化学物質等障害予防規則(昭和四十七年労働省令第三十九号)等により当該物質の製造設備の密閉化、特定化学物質等作業主任者の選任等一定の管理が義務付けられている。一方、新規化学物質については、法第五十七条の二に基づき、事業者があらかじめ当該新規化学物質について一定の有害性の調査を行い、その結果を労働大臣に届け出るとともに、その結果に基づいて、当該新規化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならないこととされている。
 化学物質による労働者の健康障害防止のための今後の対応としては、化学物質の有害性等の情報提供の在り方、事業者が講ずる労働者の健康障害防止措置を促進するための方策等について検討していく必要があると考えている。

一の3の(1)について

 最近十年間の各年における法第五十七条の二に基づく新規化学物質に係る製造、輸入届出状況については、別紙二のとおりである。
 また、これらの新規化学物質のうち、各年における有害性が確認された新規化学物質の数及び名称については別紙三のとおりである。

一の3の(2)について

 既存化学物質については、法第五十七条の四に基づき、昭和五十四年から、国が学識経験者の意見を聴取して調査対象物質を選定し、有害性の調査を実施しているが、最近十年間に実施した既存化学物質の有害性の調査化学物質数、当該調査によって有害性が確認された化学物質数及び名称については別紙四のとおりである。
 また、未調査の既存化学物質の数は、約五万種と推定されるが、労働現場における使用実態等を考慮し、今後とも学識経験者による総合的な検討を行い、優先度の高いものから有害性の調査を進めることとしている。
 なお、既存の化学物質の調査については、国際協力に基づき、生産量の多い化学物質について各国で分担して有害性の調査を行う枠組みもあり、国際機関及び関係省庁との連携の下に調査を進めているところである。今後とも関係省庁等との連携を密にして、当該作業の迅速化に努めてまいりたい。

一の4について

 化学物質のもつ有害性のうち、がん原性は、特に重篤で不可逆な健康障害を労働者に生じるおそれの強いものであることから、新規化学物質について、事業者にがん原性に係る有害性の調査を義務付けている。なお、法第五十八条に基づき、事業者は労働者の健康障害を生ずるおそれのある化学物質等について、あらかじめがん原性に限定せず広く有害性等に関する調査をし、その結果に基づき必要な措置を講ずるよう努めることとされている。

一の5について

 労働省においては、労働基準局長の私的検討会として平成七年七月に設置した「化学物質の有害性調査のあり方に関する検討会」が平成九年三月に行った提言を、専門家の意見として真摯に受け止め、社会情勢等を勘案しつつ、順次対応していくこととしており、その中でも、がん原性以外の有害性に関してはエピクロロヒドリン等について今年度から生殖毒性等の調査を行っている。また、有害性情報のデータベース化に関しては、平成十一年度を目途に安全衛生情報センター(仮称)を設置して化学物質の情報をデータベース化し、関係者に提供することとしている。

一の6について

 特定化学物質等障害予防規則に基づき一定の管理が義務付けられている特定化学物質等のうち、ジクロルベンジジン及びその塩、アルファ‐ナフチルアミン及びその塩、オルト‐トリジン及びその塩、ジアニシジン及びその塩、ベリリウム及びその化合物、ベンゾトリクロリド、石綿(アモサイト及びクロシドライトを除く。)、エチレンイミン、塩化ビニル、オーラミン、クロム酸及びその塩、クロロメチルメチルエーテル、コールタール、三酸化砒素、三・三′-ジクロロ-四・四′-ジアミノジフェニルメタン、重クロム酸及びその塩、ニッケルカルボニル、パラ-ジメチルアミノアゾベンゼン、ベータ-プロピオラクトン、ベンゼン並びにマゼンタは、人体に対するがん原性が疫学調査の結果明らかとなった物、動物実験の結果発がんの認められたことが学会等で報告された物等であり、人体に遅発性効果の健康障害を与え、又は治癒が著しく困難であるという有害性に着目し、特別管理物質として規制している。特別管理物質以外の特定化学物質等については、急性毒性等の有害性に着目し、総合的に判断した上で、規制している。
 また、塩化ビニルについて、モノマーを対象に規制しているのは、塩化ビニルモノマーにより肝血管肉腫が発生するためであり、塩化ビニルポリマーは通常の状態においては有害性は無いので規制の対象としていない。
 なお、塩化ビニルポリマーを加熱した場合に発生するガスや微粒子の中には塩化ビニルモノマーが含まれることはほとんどないと承知しているが、労働者の健康に与える影響については今後検討してまいりたい。

一の7について

 労働省においては、平成七年度から、中小企業における安全衛生活動を促進するための補助事業として中小企業安全衛生活動促進事業を実施しており、この中で作業環境測定、作業環境改善機器の整備等に要する経費の助成を行っている。また、昭和四十七年度から、中小企業等における職場環境を改善することを目的とする労働安全衛生融資制度を設け、その活用促進に努めている。
 今後とも、中小企業の作業環境の状況を踏まえつつ、その改善のための適切な施策を講じてまいりたい。

二の1について

 経済協力開発機構(以下「OECD」という。)では、加盟国において、製造、輸入量が一定以上の化学物質を対象に、各加盟国が分担して人の健康や環境へのリスク評価を行う高生産量化学物質安全性点検プログラムが実施されており、我が国も、OECD加盟各国の分担により、当該化学物質の毒性の試験等に基づき初期的なリスク評価を行い、OECDに対し評価結果を提出している。

二の2について

 御指摘の千九百八十七年に国連環境計画(UNEP)において採択されたロンドンガイドラインの事前通報承認制度の対象としては、現在、農薬二十二物質及び工業用化学物質五物質が示されているが、農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)、毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十二号)及び化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号)のいずれにおいても特段の規制を行っていない物質は、ポリ臭化ビフェニルである。特段の規制を行っていない主な理由は、現在、国内の製造、輸入実績がないこと等である。
 政府としては、今後とも、当該物質の有害性、国内における製造、輸入、使用状況を踏まえながら、必要に応じて対策を講じてまいりたい。

二の3について

 御指摘の条約は、有害化学物質についての情報交換を促進すること、輸出入に関する手続を規定すること等により、人の健康及び環境を保護し、並びに当該物質の環境に与える影響に配慮した適正な使用に寄与するため、締約国間の努力を促進することを目的としており、我が国としても有意義であると認識している。
 この条約が昨年九月に採択されたことを受け、この条約を締結する場合に必要となる国内の適切な実施体制の構築及び国内法令等の整備につき、関係省庁の間で検討を進めているところである。

別紙一 1/2

別紙一 2/2

別紙二

別紙三 1/10

別紙三 2/10

別紙三 3/10

別紙三 4/10

別紙三 5/10

別紙三 6/10

別紙三 7/10

別紙三 8/10

別紙三 9/10

別紙三 10/10

別紙四 1/4

別紙四 2/4

別紙四 3/4

別紙四 4/4