質問主意書

第116回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

大韓航空〇〇七便によるソ連領空侵犯・撃墜事件の真相究明に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成元年十二月十二日

田 英夫   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   大韓航空〇〇七便によるソ連領空侵犯・撃墜事件の真相究明に関する質問主意書

 千九百八十三年(昭和五十八年)九月一日、大韓航空〇〇七便がソ連領空を侵犯し、撃墜されたとされる事件について、本院は同年同月十三日、政府に対し「あらゆる方途により、事件の真相究明に努め、大韓航空機が領空侵犯をするに至った原因を含めて可及的速やかに全貌を明らかにすること」を要求する決議を、全会一致で行っている。
 しかし、事件後六年を経過した今日、政府は事件の真相解明に必要な調査及び調査結果の公表を十分行ったとは到底評価し難い。
 日本国の主権者である国民に対し、正確な情報が公開されてこそ、この国の世論も民主国のそれにふさわしい公正なものに形成されるとの観点に立って、以下の質問をしたい。

一 大韓航空〇〇七便は、九月一日午前三時三十八分に撃墜されたと政府は公表しているが、その時刻における同機の所在地点は北緯何度何分、東経何度何分だったのか。

二 航空自衛隊の奥尻島のレーダーが同日午前三時から同四時の間に、大韓航空〇〇七便又はその他の不明機をキャッチした事実はないのか。
 右事実が仮になかった場合、右時間帯に右レーダーは正常に作動していたのか。

三 事件の後、撃墜された大韓航空〇〇七便に関係する物件(遺体の一部等を含む)ではないかとして報道された後記1ないし26記載の物件について、政府は調査結果に基づき、これらは何であったと認識しているのか。これらは大韓航空〇〇七便のものであったか否か。また現在、これらの物件はどこに保管されているのか。以上の点を、1ないし26の各物件ごとに明らかにされたい。

     記

1 九月五日午前六時十分ごろ、巡視船「そらち」がモネロン島(海馬島)の北百十キロで発見した黄色の発泡スチロール製の断熱材(縦二十五センチ、横十二センチ、厚さ七センチで片面のほとんどが焼けて黒く炭化したもの)。
2 九月五日午前八時四十分ごろ、「そらち」が発見した茶色の断熱材(縦二十七センチ、横十一センチ、厚さ三センチで中央に軽合金製のL字型金具が埋め込まれ、両端はリベットで止めてあるもの)。
3 九月五日午後二時ごろ、巡視船「れぶん」がモネロン島の北百四十五キロで発見した白色のポリウレタン(縦十九・五センチ、横二十センチ、厚さ十センチのもの)。
4 九月八日午後四時四十五分ごろ、巡視船「てしお」が発見した人毛のついた浮遊物(長さ二十・五センチ、幅二十センチ、厚さ三・三センチの方形のもの)。
5 九月八日午後三時五十分ごろ、地元の漁民が北海道斜里町の知床岬の通称「分吉湾」の海岸で、マス漁の仕掛け網に引っかかっているのを発見した子供の裸の上半身の遺体。
6 九月八日から九日にかけて北海道猿払村と浜頓別町の海岸で発見された、金属片合計十四点及びクッション片、断熱材片、酸素マスクなど合計約三十点の物件。
7 九月十日午前七時十分ごろ、巡視船「つがる」が、北海道枝幸町の南東にある音標灯台の東北東十二キロで回収したシートクッション(全体はこげ茶色の合成皮革で覆われており、縦三十五センチ、横三十五センチ、厚さ七センチのものを二つつなぎ合わせたH字型のもの)。
8 九月十日午前、巡視船「てしお」が稚内灯台の北東十八キロの宗谷海峡で回収したアルミ製の三角形の漂流物(表面は上部が赤、下部が白色、裏面が薄い黄色とグリーンで底辺三十八センチ、一辺が六十七センチの二等辺三角形、厚さ二・五センチのもの)。
9 九月十日午前八時半ごろ、紋別警察署員が紋別市川向の海岸で発見した座席二脚(茶色のレザー張り、一人掛けでひじ掛けがなく、高さ約七十センチ、幅約六十センチのもの)。
10 九月十日午後、巡視船「りしり」がモネロン島の北四十七キロで発見したフラップの一部とみられる軽金属製破片(両面にN3と黒で記入され、片面に7111032の数字が刻印されているもの)。
11 九月十一日午前六時十分ごろ、魚釣りに来た人が網走市能取の能取湖湖口から約百五十メートル北東寄りのオホーツク沿岸で発見した外国の女性の、両腕とも肘から先が脱落した上半身だけの遺体。
12 九月十一日午前十時四十五分ごろ、興部警察署員が、北海道雄武町幌内の海岸で発見した外国人の身分証明書カード(メリー・ジェーン・ヘンドリーのネームのあるもの)。
13 九月十一日午前十時過ぎ、地元の建設作業員が能取湖湖口から北西へ百三十五キロの通称「元沢木浜」で発見した遺体の一部(縦、横が三十センチ、厚さ五センチのもの)。
14 九月十一日午後、地元町民が北海道枝幸町山白の海岸で発見した写真一枚(東洋人らしい三十歳ぐらいの女性と五、六歳の子供の二人が写っているもの)。
15 九月十二日午前六時ごろ、紋別市の沿岸沖合のサケ定置網の引き揚げ漁船が、同沿岸の沖合一・九キロに仕掛けた定置網に引っかかっているのを収容した、人体の背中のものと見られる表皮。
16 九月十二日午前十時四十五分ごろ、網走市の海岸で収容した人骨。
17 九月十二日午後二時二十分ごろ、興部警察署員が興部町の海岸で発見した成人女性のものと見られる遺体の一部(首のつけ根部分から頭部がなく、両手の上腕部が脱落しているもの)。
18 九月十三日午前五時ごろ、地元の漁民が青森県下北半島の下北郡佐井村の中磯谷海岸の岩場の上で発見した航空機の機体の一部と見られる金属片(直径三十センチのだ円形で両面がアルミ、中はハニカム構造のもの)。
19 九月十四日午前九時半ごろ、地元消防団員が北海道網走管内小清水町浜小清水の原生花園海岸で発見した女性の胸部とみられる遺体の一部。
20 九月十四日正午ごろ、海上保安庁のYS11型機が網走市の能取岬の北北東約四十一キロで発見、巡視船「つがる」が収容した遺体の一部(後頭部から背中にかけての一部の肉片がついた表皮)。
21 九月十五日午後二時十五分ごろ、捜索機が網走沖北東約九十キロの海域にある大和堆の近くで発見、「つがる」が収容した遺体の一部。
22 九月十六日午前九時半ごろ、北海道豊浦町大岸など内浦湾(噴火湾)沿岸で発見された航空機のものとみられるアルミ片やハニカム構造の金属片など合計五点の物件。
23 九月十六日夕方、日本海北部の北海道焼尻島豊崎の海岸で発見されたアルミ合金片一個。
24 九月十七日、焼尻島の対岸の羽幌町汐見の海岸で一個、同町港町六丁目の海岸で一個発見されたアルミ合金片。
25 九月二十日午前十時半ごろ、網走警察署員が網走市海岸町のバイラギ川より約百五十メートル市街地寄りの海岸で発見した遺体の一部(縦六十センチ、横三十センチ、厚さ二センチ、重さ四キロのもの)。
26 九月二日から同月二十日の間にモネロン島の北の公海で回収した旨の説明付きで九月二十六日ソ連側から日本政府に引き渡された機体の破片、衣類など合計七十六点の物件。

四 政府は本事件の全容に関する調査報告を一体、いつ本院に対して行う方針であるのか、具体的手順を含め、明らかにされたい。

  右質問する。