質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

高浜ならびに玄海原子力発電所における事故に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十四年十二月二十一日

吉田 正雄   


       参議院議長 安井 謙 殿


   高浜ならびに玄海原子力発電所における事故に関する質問主意書

 本年三月二十八日、アメリカのスリーマイル島原子力発電所二号炉の大事故は、従来の「安全神話」が崩壊したことを示すとともに、これまでの安全審査がきわめておざなりであり、原子力行政、とりわけ安全行政の不十分さを実証したものである。
 しかし、この事故からの教訓が生かされず、わが国においては、三月三十日の原子力安全委員会の「安全宣言」にもかかわらず、その後深刻な事故が続発しており、今後大事故を未然に防止するためにも、一連の事故の原因を徹底的に究明し対策を構ずることが必要である。
 よつて以下の諸点について質問する。

一 高浜二号炉の事故について

1 事故時における一次系の温度、圧力の時間変化、格納容器内における圧力変化のデータを明らかにされたい。
2 漏洩冷却水中の放射能濃度の測定及び核種分析を行つたと思われるがその内容を明らかにされたい。また、漏洩冷却水はその後どのように処理されたか。
3 資源エネルギー庁の報告によれば、工事における品質保障と工事監督に問題があつたとされているが、どのような命令、監督系統のもとに工事が行われたか、下請会社に至る系統及び責任の所在を明らかにされたい。
4 事故の原因は「めくら栓」に、銅金製のものが使われたことによるが、他に銅金製のものが使われていた所は一つもないとされている。一般に銅金製のものが予備座として使われている事実があるのか。もしそうだとすれば、その理由は何か、また、その黄銅製の予備座は誰の指示によつて、誰が作製し、何の目的で利用されているのか。

二 玄海の事故について

1 逃し弁が開いた原因について、「一次系ポンプ軸シール部の水もれが激しくなつたので、一次系(炉内の)の圧力を上げた」と新聞報道されているが、この説明だけでは多くの点が不明である。

(イ) 水もれが激しくなつたのに、何故圧力をあげたのか、詳しい因果関係を明らかにされたい。
(ロ) 圧力上昇はどのような操作によつて行つたのか。

2 設定圧の一六四・二kg/cm2Gより下の一六〇気圧(kg/cm2G)で逃し弁が開いたことについて、「一分間に〇・九気圧以上の変化率だと弁が開くように設計されている」と新聞報道されているが、この点について以下答えられたい。

(イ) 事実はこの報道の通りであるか、事実とすれば、そのように設計されている理由。
(ロ) 「一分間に〇・九気圧」は、緩慢な圧力変化と思われる。これが事実とすれば、日常的に多くのケースで逃し弁が開き得るがどうか。また、二つの逃し弁がともに開いたかどうか。
(ハ) 各加圧水型炉の再開時の安全解析において、給水系喪失時に「一時系圧力は一六三・五kg/cm2Gまで上るが、原子炉が三六秒(二ループプラント)~三七秒(三ループプラント)でスクラムするため、逃し弁は開かない」とされた。この変化率の方がよほど厳しいのに、「逃し弁は開かない」とする理由は何か。

3 前記との関連で、これまでわが国の原子力発電施設の運転記録において、逃し弁が開いた事例とその時の圧力を明らかにされたい。
4 逃し弁が開固着になつた原因について、「異物がかんだ」とされているが、どのような確認に基づくのか。また、「異物」とは何か、また、それに対してどのような対策を指示したか。
5 事故時の時間経過に伴う諸パラメーター及び、操作のシーケンスを明らかにされたい。
6 電力会社からの報告が遅れたことについて、どのような釈明がなされ、また、それに対してどのような措置をとつたか。

  右質問する。