質問主意書

第71回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質七一第一一号
  昭和四十八年七月二十七日

内閣総理大臣 田中 角榮      


       参議院議長 河野 謙三 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出さとうきび生産者価格等及びハンセン氏病対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員喜屋武眞榮君提出さとうきび生産者価格等及びハンセン氏病対策に関する質問に対する答弁書

一について

1 我が国のさとうきび作については、労働力の流出、ここ数年来の台風、干ばつの影響等により収穫面積が漸減する傾向にある。
 さとうきび作の振興は、国の甘味資源対策及び地域振興の見地から重要な課題であるので、今後とも、従来に増して、土地基盤整備、省力化のための機械化作業体系の開発等諸般の施策の拡充に努めるとともに、適正な価格形成にも配慮してまいりたいと考えている。

2 沖縄におけるさとうきびの重要性にかんがみ、従来からさとうきびの生産性の向上を図り、さとうきび作農家の経営の安定に資するため、土地基盤の整備、原採苗ほの設置及び栽培の省力化の促進のための栽培用機械の開発等生産振興対策の推進に努めてきたところである。
 しかしながら、特に最近の農業労働力の著しい流出等により、さとうきび作のうちで最も労力を要する収穫作業に影響が生じているので、海洋博の計画の中にさとうきびの保護策を位置づけるかどうかは別としても、最近における沖縄の農業事情にかんがみ、従来から講じてきた施策を更に強化するとともに、収穫機械の導入を一層推進し、さとうきび作の生産性の向上を図つてまいる所存であり、更に必要労働力の確保についても、関係機関で協議してまいりたい。

3ア 今日、沖縄では、物価、労賃の上昇、労働力の流出等、経済事情に変動が生じていることは承知しているが、今日の沖縄の事態は、砂糖の価格安定等に関する法律第二十一条第三項に定める「著しい変動」に該当するとは考えていない。

イ 同条第三項に定める物価その他の「経済事情に著しい変動」が生ずる場合とは、同条第一項の価格決定後さとうきびの収穫終了までの間における物価の急激な上昇その他の経済事情の激変の事態であつて、それによつて、さとうきび生産地域全般を通じてみた場合に、明らかにさとうきびの再生産の確保に著しい支障をもたらすとみられるような場合を指すものと理解している。

4 さとうきびの最低生産者価格は、農業パリテイ指数に基づき算出される価格を基準とし、生産費、物価その他の経済事情を参酌し、さとうきびの再生産を確保することを旨として定めている。
 この最低生産者価格の算定方式を米価なみの生産費及び所得補償方式に改めることについては、次の理由により必ずしも適切でないと考える。

ア 砂糖は、自給率が二十%程度であり、その価格水準は、国際水準と調和のとれた水準であることが必要である。
 現在、国内産甘蔗糖の価格水準は国際水準からみてかなり割高の水準にあるため、国内産糖合理化のための各般にわたる措置を講じているところであり、これらの事情を度外視して価格を算定することは、国際価格水準とのかい離及び物価の上昇を招来する虞れがある。

イ さとうきびのように今後なお生産性の向上が必要であり、かつ、期待される作物については、生産性向上のための諸施策とあいまつて、その合理化のメリツトを当該生産者に還元する現行パリテイ方式が適当と考える。

5 昭和四十八年産さとうきびの最低生産者価格は、砂糖の価格安定等に関する法律に基づき、農業パリテイ指数に基づき算定される価格を基準とし、さとうきびの生産費、物価その他の経済事情を参酌し、さとうきびの再生産を確保することを旨として、本年十一月二十日までに定めることとなつており、現在その資料を収集中である。

6 さとうきびは沖縄県農業における基幹作物として重要であることにかんがみ、本土復帰後甘味資源特別措置法に基づき生産振興地域に指定するとともに、農家経営の安定的向上に資するため、基盤整備を進めつつ栽培の省力化を中心とした諸施策を講じてきている。特にさとうきび栽培のうち多くの労力を要する収穫作業の省力化を図るため、昭和四十七年度から現地に適した機械開発を積極的に進めるとともに、その導入を図つてきたところである。
 今後とも、農業労働力の不足に対処してさとうきび作経営の改善を図つて行くため、より積極的な収穫機械の導入を図つてまいる所存であるが、さらにこれらの効率的な機械利用体制を推進するためには、県、農業者団体等が中心となり、これらの生産組織体制を整備することが不可欠であるものと考えられるので、これら関係団体とも協議し、さとうきび作の安定的な生産の確保に努めてまいりたい。

7 てん菜及びさとうきびの最低生産者価格の決定については、地元生産者代表、地元道県知事等が委員となつている甘味資源審議会の席で十分地元の意向を聴取するとともに、地元関係者とは常に接触を密にして、各般にわたる地元の意向の把握とその反映に努めているところであり、さとうきびの最低生産者価格を決めるために特に新たな審議会を設けることは考えていない。

二について

1 沖縄の国立らい療養所については、現在まで三十八人の職員の増員を図つてきたところであり、医師、看護婦その他一般職員の増員について、今後も努力をしてまいりたい。
 なお、医師については、診療援助のため、本土から医師を派遣し、医療に支障のないよう配慮しているところである。

2 国立らい療養所の整備については、老朽化した不自由者棟、病棟等を中心に整備を進める予定であり、沖縄の二園についても本土との均衡をみながら適切な措置を講じてまいりたい。

3 入所者の作業賞与金は、入所者のうち軽症者を対象として予算措置がなされているものである。
 四十七年度作業賞与金の予算についても、沖縄は、本土に合せて算出されたものであり、格差はない。

4 沖縄分室は、九州地方医務局の分室として、復帰時の特殊事情から沖縄の各国立療養所間の連絡調整及び業務指導の面を担当させるため当分の間設置されたものであり、実情に即した運営を図つているところである。