質問主意書

第2回国会(常会)

質問主意書


質問第五十七号

家庭燃料の配給機構の合理的整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年四月八日

鈴木 直人      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   家庭燃料の配給機構の合理的整備に関する質問主意書

 都道府県の薪炭の集荷配給代行機関と煉炭の集荷配給機関とを別個にし之を一元的機構にすることがよいと思うが、政府は、如何なる方針であるか。若し従来通り一元的にしておく方針である場合は、その理由。

   理 由

 従来、薪炭及び煉炭の集荷配給機関は、之を一元的にし、各都道府県毎に燃料林産組合をして一手に取扱わしめていた。
 その結果として、
一、切角、政府が燃料のそう合配給の計画を樹てても、現物が計画通りに集荷、配給されない傾向にあつた。
 何故かというと、それは左の如く生産及集荷事情を異にする薪炭と煉炭とを同一の機関に取扱わしめていたことが一つの原因ともなつている。
(イ) 薪炭は、生産場所は山間僻地であり、且つ、多数の生産者が散在し、原始的生産形態である。之に加うるに、消費県と生産県とが一致しないため、政府の代行機関である燃料林産組合は、常に、薪炭の県内移入、山元よりの集荷等に、主力を注がなければならない。その苦労は大したものである。
(ロ) 一方、煉炭は、少数の工場において、常時、生産されている工業生産品である上に、その生産工場は、すべて消費県内に在るから、その集荷配給には、余り手がかからない。
 両者には以上のような相異点がある結果として、薪炭と煉炭とを一つの機関をして集荷配給させることになると、必然、薪炭集荷重点主義となつて、その方面に手一パイで、煉炭は、殆んど顧みられなくなる。恰も、病弱の子供と健康な子供とを持つ親は、病弱の子供の方に、注意と金とを傾けるのと同じことで、これは、止むを得ざる理である。その結果は、
(イ) 煉炭工場には、煉炭が山と積まれていながら、他方、消費者は、煉炭の配給がなくて、いつも、困つているという現象が起つている。
(ロ) 煉炭工場側は、常に滞荷に悩まされ、之がため金融がつかず、労働不安を起し経営難となつて、切角の生産意欲に支障を来している。
(ハ) 林産組合は、片手間の仕事として、煉炭を取扱うため、煉炭を工場週辺のみに配給して、切角の政府の消費通帳制があつても、工場から遠い地域には、殆んど現物が配給されていない。
(ニ) 林産組合は、性質の異なる二つのものを抱え込んでいるため、双方に気をとられて、どつちつかずになり、肝心の薪炭の集荷配給が充分の成績を挙げられず、又、煉炭の配給もおろかになる。
二、以上の不合理を是正して、薪炭及煉炭の現物の集荷配給を政府の計画通りに、確実化せしむるためには、従来の林産組合一元的機構を分離して、二元的にし、二つの機関が夫々、専業として、自己の分野を、まつしぐらに、精進せしめることが緊急肝要である。之が又、独占禁止の精神にも合致する。斯くすれば、
(イ) 林産組合は、自己の本来の使命である薪炭の県外移入、山もとよりの集荷、消費者への配給に、没頭することが出来るから、必らず従来よりも、好成績を挙げることが出来る。
(ロ) 煉炭配給機関は、常に、工場生産と、にらみ合しながら、政府の配給計画に従い、常時、家庭への配給を専門に実施するから、家庭燃料の三・四割に相当する煉炭をば、消費者が、間違いなく確保出来、燃料不安の解消に役立つことが出来る。
三、燃料は、そう合計画の下に行われるのだから、配給も、そう合配給機関の方がよい。という者があるが、
(イ) それは、そう合配給計画とそう合配給機構とを混同する誤謬である。
 消費者に対しては、別に、市町村長から、薪何把、木炭何俵、煉炭何箇というように、そう合配給計画にもとづく通帳又は切符を渡してあるのだから、問題は、如何にして、その通帳の通りに、正確に現物を配給するかにある。何もかも一緒に、そう合して取扱う方法が、必ずしも、最も確実に現物の配給が出来る手段であるということにはならない。そう合配給計画とそう合配給機構とは、全然切り離して考えるべきである。
(ロ) 勿論、本案に於ても、末端の配給小売店は、薪炭及煉を同一店が取扱うことが出来ることになつている。
 問題にしているのは、小売店舗ではなく、その上にあつて、問屋機能を担当する機関である。之を、薪炭と煉炭とを分離した方がよいというのである。由来、問屋は、単一な商品を多量に取扱うのを原則としている。問屋が小売店の如く、そう合物品を取扱うことは、変則であつて、労多くして効少ない。
 以上の理由により、薪炭と煉炭とは、別個の機関となし、之を二元的に取扱わしめることが、燃料の集荷配給機構を合理的ならしめ、且つ、実数を挙げる方法であると確信する。