請願

 

第192回国会 請願の要旨

新件番号 652 件名 筋痛性脳脊髄炎の診療体制確立と治験の研究促進に関する請願
要旨  筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、中枢神経に影響を及ぼす多系統にわたる複雑な慢性疾患であり、機能障害は全身に及び、がんや心臓病、エイズのような他の極めて重症な疾患と同様に患者のQOLを著しく低下させる重篤な病気である。その主な病態は、中枢神経系の機能異常や自律神経系の調節障害であり、通常ウィルス感染後に発症するというのが欧米諸国における共通認識である。国際的に認められた診断基準が存在し、疾病概念が確立している病気で、国内の患者は二十四~三十万人と推定されている。平成二十六年度の厚生労働省の患者の実態調査において、寝たきりに近い重症患者が三〇・二%もいることが明らかになった。国際ME/CFS学会は、患者の約二五%は重症患者であると発表しており、日本でも同様の状況であることが裏付けられた。このように深刻な実態が明らかになったにもかかわらず、ME/CFSは指定難病にも障害者総合支援法の対象にもならなかった。また、ME/CFSは専門医がほとんどいないために、診断すら受けられない人が日本中に数多くいるのが現状である。二〇一五年十月に米国国立衛生研究所(NIH)は、ME/CFSの研究を前進させるため国立神経疾患・脳卒中研究所主導で多施設研究を行うと発表した。世界保健機関の国際疾病分類(ICD―10)において神経系疾患(G93・3)と分類されている本疾患の研究を神経疾患のセクション主導で行うことは非常に画期的なことである。また、研究の主目的は、この疾患の原因と症状の進行の理解を高めるために、感染後に発症することがほぼ確実なME/CFSの臨床的・生物学的特長を解明することとし、急性感染症を示唆する症状の後に急激に発症した患者のみを研究対象としており、免疫の観点からの研究の重要性を明確にしている。さらに、NIHと日本の医療研究開発機構は覚書を結び、難病や感染症の治療法の研究協力を深め、研究データの共有等を進めると発表されており、日本においても同様に神経系疾患として研究が促進されるべきである。そのような中、日本でも国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所において、本格的な研究が開始された。この病気は原因も解明されておらず、治療法が確立されていないが、少しでも症状が緩和されることを患者は強く願っている。また、若くして発症する患者がとても多く、その経済的損失は計り知れない。海外では長年にわたってリツキシマブやアンプリジェン等の治験が行われているが、日本では一度もそのような研究が行われてきていない。日々苦しんでいる患者を救済し、実際に患者の生活の質の向上に結び付く研究が遂行されることを願い、この病気の患者の置かれた深刻な状況に最大限の配慮を求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、ME/CFSの診療体制の確立
 1 国立精神・神経医療研究センター等の神経内科の専門家が参画して、客観的な指標を含む診断基準作成と治療法開発の研究を促進し、全国の神経内科及び神経内科に連携する診療科が診療に当たる体制を早期に整えること。
二、ME/CFSに対する治験の研究促進
 1 国内外における治療法の研究の状況を踏まえつつ、リツキシマブやアンプリジェン等の治験を含む治療法開発の研究を早急に促進すること。

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