請願

 

第185回国会 請願の要旨

新件番号 920 件名 学費負担軽減と私大助成の大幅増額に関する請願
要旨  私立大学・短大(以下「私立大学」という。)には、日本の大学生・大学院生全体の約七五%に当たる約二百二十五万人が学んでいる。私立大学は我が国の大学等進学率の向上を支え、全国各地で多様な教育・研究を担い、日本の高等教育において大きな役割を果たしている。しかし政府は、三十年以上にわたり私立大学への補助(以下「私大助成」という。)を削減し、非常に低い水準に抑え込んできた。国の大学への予算を学生一人当たりに換算した額は、二〇一二年度で国立大学が百八十五万円であるのに対して私立大学は僅か十四万円、国立大学の十三分の一でしかない。私大助成が余りに低いために、私立大学の学費は国立大学の一・六倍と高額で、初年度納付金は百三十一万円以上にも上る。その上、公的な奨学金制度が貧困なために、私立大学生と保護者の学費負担は非常に重く、学生の多くが生活費を捻出するためにアルバイトに追われている。また、私立大学の教員一人当たりの学生数は、国立大学の三倍近くに上るなど教育環境の整備も遅れている。加えて、この間の不況の長期化や、世帯年収の減少、都市と地方の格差の拡大、十八歳人口の減少などによって、地方・中小規模の私立大学を中心に経営状況の悪化が広がっており、教育・研究を支える基盤そのものが揺らぎ始めている。政府が高等教育費負担を私立大学生と家庭に押し付け、国立大学予算も削減してきたために、政府の高等教育費支出は国際的に見ても極端に低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最低水準である。また、日本の奨学金制度は国際的に見れば単なるローンでしかない。OECD加盟三十四か国のうち三十二か国が給付型奨学金制度を有しており、十七か国は大学授業料が無償である。一方、日本は給付型奨学金制度がなく、かつ学費負担が非常に重い唯一の国となっている。その結果、憲法に保障された「教育を受ける権利」「教育の機会均等」が根底から脅かされる状況となっている。日本政府は二〇一二年九月、国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項に対する留保を撤回した。今後、政府は無償化に向けた具体的な施策を計画的に実施する責務を果たさなければならない。私立大学の過重な学費負担が一刻も早く軽減されること、私大助成の増額により私立大学の教育・研究条件が改善・充実されることを求める。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、私立高校生と同様に、私立大学生の学費負担を大幅に軽減する助成制度を新設すること。
二、給付型奨学金制度を創設し、あわせて無利子奨学金を希望者全員が受給できるよう拡大すること。
三、卒業後、一定所得に達するまで奨学金返済を猶予する制度を拡充すること。
四、全ての私立大学で経済的に苦しい学生に対する授業料減免や奨学金支給を実施できるよう補助を行うこと。
五、私立大学の経常費に対する補助を、私立学校振興助成法制定時の参議院附帯決議どおり、速やかに二分の一とするよう増額すること。

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