請願

 

第183回国会 請願の要旨

新件番号 833 件名 建設産業の再生に関する請願
要旨  東日本大震災から一年十か月が経過したが、避難生活者が約三十二万人、がれき処理は岩手県で二四%、宮城県三一%、福島県一二%と復興に向けた取組は遅れている。また、現場では手抜き除染や原発作業員に危険手当が支給されないなど様々な問題が発生している。大切なのは、被災住民を主体とした復興事業を実践することであり、その担い手である労働者が正当な報酬を受け取り、人間らしい労働条件で働くことである。地域の建設産業は、その存続自体が危ぶまれるほど危機的な状況にある。その原因は、ダンピングなど激しい価格競争による仕事確保の困難さや受注しても利益の上がらない公共工事の実態、重層下請構造の下で十分な利益を確保できないことなどから倒産や廃業に追い込まれているためである。さらに、低賃金・劣悪な労働条件によって、労働者の離職が相次いでいること、次代を担う若い労働者が建設産業に入ってこないことにある。追い打ちをかけるように国土交通省が主導する「社会保険未加入対策」によって、一層の淘汰(とうた)が行われようとしている。必要なのは、地域建設業の再生と将来に向けて発展していくための施策を実施することである。そのために、国土交通省の出先機関を始めとした発注官庁の役割は大きなものがあり、公共事業を維持・補修、老朽化対策などに抜本的に転換することも求められている。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、建設産業の再生に関連して
 1 社会保険未加入企業の保険加入を促進するために、法定福利費・労務経費の別枠支給を実施すること。
 2 公共工事の契約に当たり建設労働者の賃金、労働条件が持続的に改善できるようにすること。
  (一)低入札工事において労働者・下請業者に対して、不当な低単価を押し付ける受注者に、建設業法第十九条の三を活用するなど改善指導を行うこと。また、不払問題解決に向けて建設業法第四十一条第二項及び第三項に基づく立替払の勧告を実施すること。
  (二)多発しているダンピング受注を防ぐために、受注企業の労働者に対する支払賃金水準を失格基準とすることや最低制限価格設定などの入札契約制度改善を行うこと。
  (三)二省協定の設計労務単価は、市場調査と標準生計費を考慮の上、建設労働者が「健康で文化的な」暮らしができるような価格とすること。
 3 土木工事の施工に当たり、設計図書に含まれる「ダンプ規制法第十二条団体等」の使用促進を全ての請負者に徹底すること。
 4 国土交通省の地方整備局・事務所・出張所、独立行政法人の組織を拡充し、災害時でも迅速に対応できる体制にすること。独立行政法人・国土交通省の職員を現在よりも削減しないこと。
 5 地方への補助金も含めた公共事業の予算配分を生活関連や防災中心に切り替えると同時に、中央道笹子トンネル天井板崩落事故のような悲惨な事故を繰り返さないために新設から橋梁(きょうりょう)などの公共構造物の点検補修・老朽化対策を含めた維持管理に転換を図り、中小建設・建設関連業が優先的に受注できる施策を実施すること。

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