請願

 

第180回国会 請願の要旨

新件番号 2035 件名 給付制奨学金の実現と教育無償化に関する請願
要旨  学費の高騰と雇用の悪化が、若者の未来を暗くしている。大学の初年度納付金は国立で八十二万円、私立は平均百三十一万円(文部科学省「教育指標の国際比較二〇一一年版」)となり、学生は親からの経済援助が少なくなる中で、アルバイトと奨学金への依存を強めている。大学生の三五%が利用する日本学生支援機構の奨学金制度は全て貸与制で、一兆千二百六十三億円の事業予算(二〇一二年度)の七五%を占める有利子奨学金の場合、月額十二万円を四年間借りると返還総額は七百七十五万円(金利三%で計算)になる。そのことから経済力のない家庭の生徒や学生が「奨学金を借りたいが将来の返還が不安」と制度を利用できずに進学を諦める事態が起きている。一方、二〇一一年春に卒業した学生の就職内定率は過去最低となり、二割が進路未定のまま卒業している。雇用全体では青年や女性の過半数が非正規労働者で、年収三百万円以下の労働者は四割(国税庁「平成二十二年分民間給与実態統計調査」)を超えている。貸与奨学金制度は卒業後の安定した収入が前提であり、低賃金・不安定な雇用が拡大する中で、その制度自体が限界に来ている。文部科学省は二〇一二年度予算の概算要求に高校・大学等の給付制奨学金創設を掲げたものの、予算案で見送られた。OECD(経済協力開発機構)に加盟する三十一か国では、家計等への教育費の公的補助のうち給付制奨学金の割合は平均六割であるが、日本はゼロであり、大学授業料が有料で給付制奨学金がない国は日本だけである。
 ついては、教育を受ける権利(憲法第二十六条)、教育の機会均等(教育基本法第四条)が保障される社会をつくるため、教育予算を拡充し、次の事項について実現を図られたい。

一、高校・大学等に対する返済不要の給付制奨学金を実現すること。
二、公私とも高校は実質無償化に、大学等も無償化が実現するまでの間、学費減免制度の拡充を行うとともに、奨学金の有利子貸与比率を縮小し、無利子貸与、給付制に移行していくこと。
三、個人信用情報機関の活用中止、返還猶予の上限撤廃等、安心して返還できる制度にすること。
四、国際人権A規約第十三条第二項(b)(c)「中等・高等教育無償化条項」の留保を撤回すること。

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