請願

 

第180回国会 請願の要旨

新件番号 1334 件名 てんかんのある人とその家族の生活を支えることに関する請願
要旨  てんかんは脳の病気で、全国に百万人の患者がいる。早期診断・早期治療によりおよそ七〇%の人が、発作に悩まされない生活を送ることができるようになったが、誰もが適切な医療を受けているとは限らない。現代の医療では発作の止まらない人はもちろんのこと、発作の止まっている人でさえ、不安・鬱や行動障害などの併発症、医療費や生活の問題、学校や仕事の問題など、様々な悩みをもたらすことがある。その上、世間の誤解や無理解も根強く残っており、てんかんのある人は、人生の多くの場面で、てんかんが障壁となる。昨年は、東日本大震災もあり、日常生活を送る上での一層の不安や課題が明らかになった。政府は、障害者を支援するための新しい制度の検討を行っているが、これまでの制度は、必ずしもてんかんの障害の特徴に合ったものではなく、てんかんのある人にとって使いやすいものではなかった。新たな制度で、同じ国民として安全で安心できる生活が保障されることを求める。二〇〇八年の第百六十九回通常国会で、提出した請願五項目全てが採択されたにもかかわらず、一つとして施策として実現したものがない。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、啓発に関しては、てんかんについて、国民の理解を深めるための広報を行うこと。
   てんかんのある人と家族が、社会生活の中で接する機会の多い人々、特に、福祉施設、行政担当、交通機関や病院の職員、教職員、警察官、救急隊、消防官などに対して、てんかんの正しい知識と観察・介助法を、組織的・計画的に周知徹底すること。また、てんかんのあることを知ってもらうための、当事者が所持する緊急カードなどの活用と周知を、全国に広めること。
二、福祉に関しては、障害格差のない選択可能なサービス提供をすること。
   「障害者権利条約」の精神を重視し、また「障害者基本法」の改正による法の目的にもあるように、「障害者総合福祉法(仮称)」の制定に当たっては、てんかんの障害特性を反映し、必要なサービスが受けられるようにすること。また、てんかんの発作があっても、地域で安心して生活でき、日中活動ができるように支援体制を整備すること。
三、労働に関しては、働く場の機会拡充を図ること。
   てんかんのある人にも、障害者法定雇用率の完全適用(雇用の義務化)を実現すること。また、全国の市区町村において、てんかんのある人の就労支援の在り方について、十分に検討すること。さらに、てんかんを理由とした、職場や職種の制限が生じないよう、事業所への指導を行うこと。
四、交通に関しては、介助者を含めた交通運賃減免制度を適用すること。
   知的障害者の「療育手帳」、身体障害者の「身体障害者手帳」ではJR、私鉄、バス、航空機、高速道路料金など、交通運賃の減免制度が適用され、さらに、家族の送迎、同伴に対する交通運賃の減免制度、タクシーチケットの配布などの制度がある。てんかんのある人が利用できる「障害者手帳」も、これらの交通運賃減免制度の対象とすること。
五、医療に関しては、
 1 てんかん医療ネットワークを充実すること。
    てんかんは、日常診療と専門医療の連携が重要な疾患である。非専門医に対するてんかん診療の教育、研修の機会を設けるとともに、専門医の数を増やすこと。また、合併障害や併発症に対応するための診察時間が確保できる制度を作ること。さらに、てんかんの高度な医療、研究を実践するてんかんセンターを充実すること。
 2 災害時に抗てんかん薬が不足しないようにすること。
    東日本大震災に際して、被災地で抗てんかん薬が不足する危機があった。緊急医薬品の指定がされない、災害時持ち出し医薬品一覧に記載がないなどから、被災地への至急に必要な搬送が滞った。災害時に、抗てんかん薬の供給が滞ることのないシステムを構築すること。

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