請願

 

第176回国会 請願の要旨

新件番号 160 件名 じん肺とアスベスト被害根絶に関する請願
要旨  じん肺は、最古にして今なお最大の職業病である。いまだに二万人近くのじん肺有所見者がおり、毎年一、○○○名前後が最重症患者として新たに認定されている。また、毎年一、○○○名近くが死亡していると言われている。石炭じん肺やトンネルじん肺について、国の加害責任は判決によって明確になっている。ILO(国際労働機関)・WHO(世界保健機関)は、二〇一五年には世界中からじん肺を根絶するべきである、そのために各国政府はじん肺根絶計画を策定すべきであると提唱している。日本も、遅くとも二〇一五年までにじん肺を根絶するための抜本的な制度改革に取り組むことが求められている。アスベストは、じん肺の原因物質であるとともに、強い発がん性を有していることは明らかとなっているが、国が十分な対策を採ってこなかったため、多数のアスベスト被害が発生し、五月一九日には、大阪地方裁判所において国の責任を認める判決が言い渡されている。労働安全衛生法施行令の改正により二〇〇六年九月一日から石綿の使用等が原則的に禁止されたが、今後もアスベストを使用した建物の改修、解体工事等による大量の被害発生が危惧(きぐ)される。二〇〇六年三月、「石綿による健康被害の救済に関する法律」が施行され、七月一日から救済の対象となる指定疾病が拡大されたが、いまだ中皮腫(しゅ)と肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺及び著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚の四つに限定するとともに、救済給付金も労災法や公健法に比して低額に抑える等極めて不十分な内容となっている。じん肺やアスベスト被害の根絶とともに、被害者を救済するためには、基金制度の創設が必要であり、取り分け被害者が多発しているトンネルじん肺、石炭じん肺、建設アスベスト被害に関しては急務である。また、トンネルや炭鉱、金属鉱山などじん肺を多く出してきた職場では、じん肺のほかに振動病が多発しており、その根絶と被害救済も課題となっている。厚生労働省は、振動障害の医学的検査、労災認定基準に関して一九七七年に発出した通達を改定しようとしているが、その内容は医学界等の合意もないまま、振動障害に苦しむ患者を切り捨てるものと言わざるを得ない。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、じん肺法施行後五〇年を経過した今なお、トンネル建設工事、造船、各種製造業、建設業を始め多くの粉じん職場でじん肺が発生し続けていることを踏まえて、じん肺根絶に向けたじん肺法や関連法令の改正を行うこと。
二、トンネル建設労働者の就労などを一元的に管理し、じん肺被災者の早期救済を図る「トンネルじん肺基金」を創設すること。
三、建設アスベスト被害者補償基金を早急に創設すること。
四、石炭じん肺被害救済制度を早急に創設すること。
五、振動障害の労災被災者に対する補償給付の充実を図ること。

一覧に戻る