請願

 

第169回国会 請願の要旨

新件番号 3151 件名 体外受精等不妊治療の保険適用に関する請願
要旨  不妊症は戦後すぐの統計では一〇組に一組、一割の夫婦が不妊に悩んでいると言われてきたが、最近はプライバシーの問題もあり、正確な統計は取られていない。欧米では六組に一組、一六~一七%と高くなってきており、日本においても欧米並みに確実に増加していると推察される。年間の体外受精による出生児数は、日本産婦人科学会の報告(平成一五年一〇月)では、平成一三年度一三、一五八人、年間出生児数の約一%になる。また体外受精の治療数は七六、〇七三回、治療回数当たりの挙児率は一七・三%(正常夫婦の排卵一回当たりの妊娠率は一八~三〇%、これに比べるとこれ以上妊娠率の上昇はないと思われる。)、累積出生児数は八四、九六六人である。生殖補助医療(体外受精、顕微授精及び高度生殖医療)=ARTによる出生数が年間一万人を超えているということは、ARTでない不妊治療での出生数は更にその三~五倍以上、全出生数の五%以上が不妊治療によると推定される。不妊はこれほど高い率で蔓延(まんえん)している疾患と言えるが、その実態が分かりにくい。また、患者は他の疾患に比べ、私費診療が多いことにより、経済的にも苦労している。全出生児の一%を占めるほど一般的になった体外受精が保険適用されていないのは、他の疾患と比較すれば、健康な生活を送る国民の権利において不公平と言える。体外受精は特殊医療だから保険適用されないという意見がある。不妊医療はクローンや代理母、提供卵、提供精子などマスコミでは派手に取り上げられるが、不妊夫婦であってもそれらの特殊治療を受けてまで子供が欲しいとは思っていない実体がある。この倫理的な問題は、心臓病で脳死移植と一般的な心臓手術が平行しているように、ARTでも分離して考えなければならないし、これを不妊治療の保険適用にしない理由にすべきではない。また、ARTが特殊医療と言っても既に毎年一万人以上の赤ちゃんが誕生しているほど一般的になった。妊娠率が低いので治療とは認めないという意見に対しては、正常夫婦の一回の排卵での妊娠率と、体外受精の妊娠率と差はなく、妊娠率は低いとは言えない。体外受精のための排卵誘発剤(一日三、〇〇〇~六、〇〇〇円×一〇~二〇日=三〇、〇〇〇~一二〇、〇〇〇円)などは、すべて私費となる。さらに採卵、授精、培養、移植などに掛かる費用すべてが私費で賄わなければならない。一回の体外受精は排卵誘発剤を除いて三〇万円~五〇万円が相場であり、中には不妊治療を続けるために借金をしたり、体外受精をボーナスの出るときだけに限定したり、不幸な例は離婚まで起きていることも珍しくない。昨今、不妊治療に対して公的補助が受けられるようになったが、その金額は、不妊患者が安心して治療を行えるほど、満足のいく金額となっていない。社会の発展に連れて結婚年齢が上昇し、そのために中年女性特有の疾患(子宮筋腫(きんしゅ)や子宮内膜症)が不妊の原因になり、男性も環境悪化やストレス、食生活の変化などのため、精子の質が悪くなり、不妊は確実に増加する。不妊医療に対する保険適用を中心とした補助をしなければならない。その結果、高齢出産や多胎妊娠などのハイリスクが増えるため、周産期センターなどのハードの整備、充実が必要である。さらに新生児医療に対するソフト面での計画、新生児科医の養成、保険診療面での新生児科の優遇などが必要となる。今、不妊夫婦が赤ちゃんを授かったら年間三〇万人の新生児が生まれることになり、少産・少子問題の解決にもなる。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、人工授精を保険適用範囲に含めること。
二、体外受精を行うときに使用する排卵誘発剤を保険適用範囲に含めること。
三、体外受精を保険適用範囲に含めること。

一覧に戻る